――才能を開花させるには遺伝と共に努力も必要

親子で異なる特徴が表れることもある

両親の染色体を引き継ぎ、その組み合わせによって、子どもの形質が決まるため、親子は似る部分が出てきます。しかし、ひとつの遺伝子によって、子どもの才能や性格が、決まるわけではないようです。

「体の特徴には比較的、遺伝子の影響が出やすいので、まだわかりやすいと思います。たとえば、主に身長に影響を与える遺伝子は、約20個あると言われています。この組み合わせの結果が、子どもの身長に反映されます。しかし、このほかにも数百個の遺伝子が、何らかの関係を持っていると言われるため、それほど簡単な話ではありません。そして、特に性格や才能については、遺伝子の関連が特定しにくく、何がどの程度引き継がれるかを、簡単に論ずることはできないでしょう。また、母親が自分の両親から引き継いだものの、発現しなかった形質があった場合、それが父親の遺伝子の作用で引き出され、子どもに表れるケースもあります。いわゆる隔世遺伝は、こういったことの表れだと考えられています」

親子や兄弟であっても、異なる部分があるのは、遺伝が持つ多様性の証し。両親が、ふたりとも持っていないと「思っていた」才能が、子どもに表れる可能性もあります。

これらを考え合わせると、親の特徴や才能が、どの程度子どもに引き継がれるのかは、「神のみぞ知る」といったところでしょう。

「遺伝」のひと言で可能性を限定しない

子どもは、母親と父親のふたりからDNAを受け継ぎます。そのため、性格や才能などに、似た部分が出ることがあります。

しかし、「私に似て、国語が得意ね」「性格が大人しいのは、パートナーに似たのかしら?」のように、夫婦どちらかだけの影響で、子どもの個性を判断するのは、「避けるべき」と、滝澤先生は言います。

「顔や体つきはともかく、性格や才能については、親や周りの大人が『似ている』『似ていない』と子どもに当てはめて、影響を与えている部分が大きいのではないでしょうか。しかし、子どもの持っている可能性はとても大きく、それはときに、親の想像をはるかに凌駕します。ですから、子どもが小学生のうちは特に、子どもの性格や才能を『遺伝』のひと言で片づけないように心がけてほしいと思います」

親は、わが子の才能に関しても、遺伝を理由にして、限定してしまう場合があります。しかし、滝澤先生は、「遺伝的な才能は、生まれてからの努力や環境があってこそ、生きるもの」と語ります。

「人の性質や才能は、遺伝だけで語れるほど、単純ではありません。どんな環境で育ち、どんな人間関係を得て、どんな経験をするのかなど、さまざまな要素が関係してきます。そういう意味では、後天的な影響が、とても大きいと考えられます」

実際に、遺伝的な素質を努力や工夫で開花させ、栄光をつかんだ人も大勢います。

「たとえば、陸上のハードル走の選手として、世界で活躍している為末大さんは、他国の選手に比べて、身長の小さな選手です。子どもの頃から足は速かったですが、高校生のときから身長が伸びず、悩んだことがあったそうです。それでも、自分を鼓舞し、自分の身長に合った走り方を徹底的に研究しました。その努力があったからこそ、オリンピックに出場したり、世界陸上でメダルを取ることができたのです。才能とは、努力も含めた総合力であり、遺伝のみで語ることはできないでしょう」

遺伝の仕組みは地球の命の歴史

遺伝に関する研究は、近年急速に発展しており、さまざまな分野で、その技術が、活用されるようになってきています。

「遺伝の研究が進んだことで、遺伝子組換え食品や青いバラなどを作ることが、可能になりました。また、医療の分野でも応用が進んでおり、これから私たちが恩恵を受ける機会は、もっと増えるかもしれません」

ただ、その一方で、まだまだ未知の部分が多い分野でもあります。今後、遺伝の研究がさらに進む中、どのような姿勢で、遺伝に関する情報と向き合えばよいでしょうか。

滝澤先生は、「最先端の技術に対しては、リスクと恩恵の両方に目を向けておく必要がある」と、アドバイスします。

「最先端の科学から生まれた革新的な技術は、誰もが体験したことのない世界を私たちにもたらします。ただし、『体験したことがない』ということは、『どんなリスクがあるかわからない』ということでもあるのです。そのため、情報も考え方も、常に新しくしておくことが必要です。遺伝に関するニュースが、テレビや新聞で紹介されたときは、親子で話し合うような習慣をつけてみましょう」

遺伝に関するニュースの中で、「遺伝子組換え」や「クローン」などという言葉が出てくると、ネガティブなイメージを抱いてしまう人もいるかもしれません。しかし滝澤先生は、「遺伝は怖いものではない」と言います。

「私は、遺伝は愛おしいものだと考えています。遺伝の仕組みによって、私たちの体には、地球全体の命の歴史が、受け継がれているのですから。親子で似ているところ、似ていないところがあっても、否定的にはとらえず、『愛おしい絆の証し』と考えてほしいですね」

遺伝のパターンはバリエーション豊か

人間は、父親と母親それぞれから染色体を受け継ぎます。そして、配偶子を作るときに、どちらの染色体が引き継がれるかは、任意です。よって、組み合わせは、計算上、2の23乗となります。

祖父や祖母から受け継がれる形質もある!
上で紹介している男性の父と母にも当然、それぞれの両親が存在します。そして、父と母のときには、隠れていた形質が、ふたりの因子が重なることにより、子どもに表れるケースもあります。

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