男女の差は学習面にも大きな影響を及ぼしているようです。では、具体的にどのような差が生まれるのか、そしてその差を生かしたサポート方法とはどのようなものなのか。四谷大塚の講師陣に、現場の声をお聞きしました。

■お話をお聞きした先生:
四谷大塚巣鴨校舎専任講師 辻 庸光先生(算数)、四谷大塚巣鴨校舎専任講師 野口 啓輔先生(国語)、四谷大塚市ヶ谷校舎専任講師 谷口 進師先生(理科)、四谷大塚市ヶ谷校舎専任講師 高根澤 祐司先生(社会)


男の子は短期集中型
女の子はコツコツ型


四谷大塚の講師陣は、長年生徒と接してきた経験から「男女では、勉強に対する取り組み方や姿勢が大きく異なる」と口を揃えて話します。

「ひと言で言えば、男の子は“短期集中型”で、女の子は“コツコツ型”です。おしなべて無邪気でのんびり屋な男の子は、自発的に勉強したり、計画的に学習を進めたりすることが苦手。受験が間近に迫って来ないと、勉強に身が入らないことがほとんどです。一方、精神発達が早い女の子は、志望校も含めて自分で目標を定め、早い段階から自主的かつ計画的に勉強に取り組むケースが目立ちます」(高根澤先生) 

こうした違いが、学力の伸び方や成績に顕著に現れると言います。

「個人差はありますが、男の子の成績はある時期を境に急カーブを描いて上昇し、女の子の成績は右肩上がりの緩やかな直線を描いて上昇していきます」(谷口先生)

子どもの学力ややる気を高めるためには、この性差を踏まえた上で、適切なサポートを心がける必要があります。


基礎力がなければ
瞬発力は発揮できない

「短期集中型」の男の子の場合、4.5年生くらいまでは勉強にあまり積極的でないせいか、成績が伸び悩むケースが多いようです。

「ただ、男の子は6年生の夏くらいまで一定の学力を維持し続けることができれば、残りの数か月間で一気に成績を引き上げることが可能。持ち前の瞬発力と集中力の高さで、受験間際の追い込みがききます」(辻先生)

とは言え、追い込みをかけるためには、基礎的な学力と、いざというときに長時間集中して勉強に取り組む忍耐力を身につけておくことが必要です。

「いくら瞬発力があっても、土台となる基礎ができていなければ、その力は発揮できません。追い込みで引き上げられるレベルには、やはり限界があります。特に追い込みがききにくい分野については、多少は無理をさせてでも、4.5年生の時期から計画的かつ継続的に、学習に取り組んでいく必要があるでしょう」(野口先生) 

追い込みがきかない分野、すなわち短期間で力を高めることが難しい分野とは、たとえば算数なら計算力、国語なら漢字の知識などです。

「漢字の知識などの基礎的分野は、積み上げが大事。面倒くさがりな男の子は、暗記などの地道な作業を敬遠する傾向が強く、放っておくといつまで経っても手をつけようとしません。それでは土壇場で間に合わないので、基礎的分野の学習については、親が厳しく管理していくべき。子どもや塾の講師と話し合いながら、綿密な学習計画を立て、それをきちんと子どもに実践させることが大切です」(野口先生)

自主性と計画性が乏しい男の子は、家庭での学習・生活管理によって学習習慣と基礎力を養うことが不可欠。それが受験の成否を握ると言っても過言ではありません。


娘を一人前と認め
パートナーに徹する

 一方、「コツコツ型」の女の子は、男の子とは違ったアプローチを心がける必要があります。

「女の子は精神年齢が高く、自分の考えをしっかり持っています。そのため、意にそぐわないことを言われたり、強要されたりすると親にも反発します。本人が置かれている状況を考慮せず、頭ごなしに何かを強制すると、やる気を損ねたりペースを乱してしまったりするので要注意です」(谷口先生)

自分で学習計画を立て、その計画に沿って堅実に勉強に取り組める女の子の場合は、低学年の頃と同じように親が勉強を教えようとすると、かえって成績が下がることがあると言います。 勉強に関してはなるべく本人の自主性に任せ、親はよきパートナーとして温かい目で見守る方が、いい結果につながることが多いようです。

「いずれにせよ、女の子は“こうした方がいい”とアドバイスされても、自分で納得できなければ受け入れようとしません。ですから、何か指示したりアドバイスしたりするときは、押しつけるのではなく、本人が納得できるようなかたちで的確かつ論理的に説得していくこと。上から目線で子ども扱いするのではなく、一人前として接してあげることが大事ですね」(辻先生) 

このように精神的に自立している女の子は、本人の自主性を尊重するなど、あらゆる面で親が冷静にサポートしていくことが求められます。 もっとも、子どもの個性は千差万別。中には男の子のような考え方をする女の子や、その逆のパターンも考えられ、 「男の子・女の子だからこのやり方で、と安易に型にはめるのは危険」と高根澤先生は言います。
勉強をサポートする際には、子どもの個性を見極めた上で、それに応じた方法を実践していくことが大切になります。 また、冒頭のアンケートでは、男女で得意な教科・苦手な教科にはっきりと差が出ることがわかりました。次のページから、1教科ずつ見ていきます。

単元別 正答率の男女差

※「単元別 正答率の男女差」は、四谷大塚が実施する7月実施の合不合判定予備テスト6年分(2005~2010)の正答率から、男女で正答率に差が見られた問題をピックアップしています。

 算数  女の子の苦手意識の強さが差を生んでいる

男女で正答率に最も差がついたのは、左の3単元。特に「速さ」は難度が高く、女の子にとっては苦手となりやすい分野。しかし平面図形は勉強量と成績が比例するので、女の子も繰り返しの学習によって克服できるそう。苦手意識を払拭して取り組もう。

先生を信頼した女の子は苦手を克服しやすい

ページ上部のアンケートからもわかる通り、多くの女の子にとって鬼門とも言える教科が算数。強い苦手意識が、男女差を余計に生んでいるようです。しかし、素直な女の子は、ツボにはまればぐんぐん伸びる可能性もある、と辻先生は言います。

「女の子は頑固なところがあって、自分で納得しないと、講師の説明する解法を真似してくれないんです(笑)。しかし、逆に講師を全面的に信頼したら、講師の考え方をそのまま吸収してくれるので、伸びやすいんですよ。男の子以上に、講師との関係が重要になるかもしれません。自分のやり方を見つけて地道にがんばる女の子も多いのですが、“ノートをきれいにとる”ことにこだわったりと、ちょっと無駄の多い勉強の仕方をしている印象を受けます。ぜひ担当の先生を信頼して、真似をさせるよう導きたいですね」 

先生のやり方に従って成績が伸びてきたときに、少し注意が必要なのは、上を見過ぎてしまうこと。性格が真面目で努力を厭わない女の子は、向上心も強く、必要以上に算数の勉強をがんばってしまうケースがあるそうです。

「男の子にも言えますが、入試で満点を取ろうとしなくていい。応用の最難問題が解けずに落ち込むなんて時間の無駄です。実際には、女子校の入試には難解な問題はほとんど出てきません。女子校では最難関校でも基本的な問題の出題が中心ですから、男子の最高レベルと同じくらいまでできなければ、と気張る必要はなく、むしろそれは効率が悪いと言えます。もちろん簡単な問題ばかり解いていても力はつかないので、本人の成長度合いやその時点での学力に合わせて“少しがんばれば手が届く”範囲の問題に取り組むことは必要です。しかし、どちらかと言えば、入試実態に即した効果的な学習を心がけることのほうがより大切です」 

一方、女の子よりも算数が得意な傾向にある男の子にも、“速さと比”“条件整理の問題”“数の性質”など苦手にしやすい単元がいくつかあります。

「男子校では極めて難解な問題が出題されることがあり、中には複数の単元の内容を連動させた問題も登場します。そうした応用問題は、基本が理解できていなければ絶対に解けません。ですので、最初の理解をどこまでできるかが大切ですね。新しい単元を学習したときに不明点が出てきたら、そのまま放置せずに、すぐ塾の先生に質問させましょう。もし現時点で理解不足を感じている単元があるなら、まず“自分は何がわかっていないのか”をはっきりさせたうえで、徹底的におさらいするようにしてください」

 国語  男女の精神年齢の差は読解力の差にもなる

4教科で唯一、女の子の正答率の方が高くなるのが国語。特に差が開くのは物語文の読解で、「登場人物の気持ちの読み取り」を苦手とする男の子は多い。語句で差がつくのは、日常の会話量の差が大きく、おしゃべりな女の子の方が言葉が流暢と言える。

男の子は客観的視点、女の子は語彙の拡充が鍵

 国語は、精神年齢の差がそのまま学力差となって現れやすい教科です。その傾向が最も顕著なのが、物語文の読解だと、野口先生は話します。

「読解力の高低は精神年齢に大きく左右されるため、女の子に比べて精神的に幼い男の子は、登場人物の心情とその変化を読み取る能力がまだ身についていない子が多いのです」 

物語文の読解で大事なのは、文章を客観的に読んでいくことです。ただ、精神的に未熟な男の子は、考え方がどうしても自己中心的になってしまうため、他人の気持ちを推し量るのが難しく、それが心情の読み取りを苦手にしている原因のひとつになっています。

「心情の読み取りを得意にするためには、客観的な考え方や視点を身につけることが不可欠です。お勧めしたいのは、子どもを冠婚葬祭などのフォーマルな場に積極的に参加させること。家庭や学校、塾とは異なる場面をできるだけたくさん体験させることで、場面・場所の違いに応じた態度がとれるようになり、それが客観的視点の獲得と醸成につながることがあります。ぜひ実践してみてください」 

また、物語文・説明文の区別を問わず、男の子は“記述”も苦手にしがちだと言います。

「男の子が記述を苦手にしやすいのは、単に面倒くさがりだから。“書くのが面倒だから”という理由で記述の練習を怠り、それが成績の低下を招いているケースが散見されます」 

さらに、男の子は作文能力そのものも、女子に比べると低いようです。

「作文能力を高めるコツは、実は“会話”にあります。会話力と作文力は密接に関係していて、自分の考えを自分の言葉できちんと語れる子どもは、作文もうまいもの。なるべく親子間の会話を増やして、普段から子どもに自分の意見を述べる機会を、たくさん与えるようにしたいものですね。テレビのニュース番組などを見たときに、話題のニュースについて話し合ったり意見を聞いてみたりすると効果的です」 

一方、精神年齢が高い女の子は、おしなべて国語が得意ですが、説明的文章の読み取りについては、若干、苦手にする傾向があるようです。

「女の子が説明的文章を苦手にする原因は、語彙の不足にあります。特に説明的文章の場合は文章の抽象度が高まるため、語彙が少ないと、内容を正確に理解することが難しくなります。語彙を増やすには読書が最適ですが、その際には特定分野の本だけでなく、幅広い分野の本を手に取って語彙の拡充に努めることが大切。それが苦手克服のカギを握ります」

 理科  男の子は物理・化学、女の子は生物に強み

1教科の中でも、単元ごとに得意・不得意の男女差が見られたのが理科。左から3項目めまでは、男の子は興味を持って取り組むが、女の子は苦手にしやすい単元。右端の「植物」の問題では、女の子が男の子の正答率を上回る結果が見られた。

すべての単元を得意にしようと思わなくていい

 前出のアンケートで、女の子の苦手教科として算数と票を分け合った理科。

「5年生で内容が一段階難しくなると、女の子に苦手意識が生まれ始める」と、谷口先生は話します。
「精神的に自立していて、現実的な考え方をする女の子は、実体験を伴わなかったり、あるいは現象を目でとらえにくかったりするものにあまり興味が持てません。そのため、特に“電流のはたらき”や“力のつりあい”と言った、目視での観察だけでは原理の理解が難しい単元が苦手になりやすい傾向があります」

 また、理科では一定の算数力が求められることも、女の子の苦手意識を強める原因になっているようです。

「理科は、学習範囲が広いことをプラスに捉えられるかマイナスに捉えるかが、男女の苦手意識の差になっていると思います。男の子は得意な単元がひとつあれば“理科が得意”と思えますが、女の子は逆。ひとつ得意でも、苦手なものの方が多いから“苦手”と思ってしまうわけです。しかし、女の子が強みを持っている分野も少なからずあるんですよ。たとえば生物分野なら、昆虫を例外として、全体的に女の子の方が強い。“植物”や“ヒトのからだ”などは、男の子よりも女の子のほうが得意です」

理科は学習範囲が広いので、女の子は強みを伸ばすことを意識して勉強に取り組むといいでしょう。“植物のことなら誰にも負けない”といった得意分野ができれば、自信が芽生え、その自信が理科全般に対する苦手意識を払拭する原動力になることもあります。全部が完璧である必要はなく、一定のレベルを得点できることを目指して指導するのが、女の子にはベストと言えるでしょう。

一方の男の子については、「暗記を苦手にしているケースが目立つ」と、谷口先生は話します。
「理科では“気体の名前や性質”や“人体の器官の名称”、“岩石の種類”、“植物の種類”など、覚えなければならないことがたくさんあります。どれも表などに分類すると覚えやすくなりますが、男の子はその作業を面倒くさがってなかなか実行しようとしません。自発的に行動できないことが多い男の子の場合、暗記学習に関しては、ある程度は型にはめることも必要になります」たとえば分類の仕方など、勉強方法のノウハウも含めて、親がサポートしてあげることなどが効果的。入試までには自立させるべきですが、男の子はその時期が女の子より遅くても構わないと考えましょう。

 社会  女の子には歴史を「物語」だと捉えさせて

正答率の男女差が10%を超える問題が、一番多かった教科が社会。情報量が多い歴史分野を丸ごと苦手になると厳しい。特に室町時代は複雑なので、概要以外を飛ばして学習すると、なかなか定着しない傾向にあるそう。

男女で異なる興味の入口をうまく利用して

 社会は、ほかの3教科以上に、興味が持てるか・持てないかで成績に大きな差が現れる教科。歴史、地理、政治、国際の4分野の中で、特に男女差がつきやすいのは歴史だそうです。

「情報量が多くて複雑なので、苦手にする女の子は多いですね。しかし入試での出題は、全体の40%以上を占める学校が多いので、ぜひ得意にしておきたいところです」

 高根澤先生は、「歴史に対する興味を喚起できない場合は、アプローチの方法を変えるべき」と言います。
「たとえば、女の子は出来事やエピソードよりも人物に関心を示す傾向が強いものです。その傾向を考慮して、授業では“人物史”から歴史に入っていくことも。歴史上の人物の生き方や、周辺の人間関係が見えてくると物語性を感じ、歴史がぐっと身近になるようです。また、女の子は自分が関係している事柄や、感情を移入しやすい事柄に興味を持ちやすいので、女性史などを扱うと、目の色が変わります。そのような事柄を足がかりにして、知識の範囲を広げていくのも有効です」 

また、歴史は流れが見えないからおもしろくないと言うのなら、初めに年代を覚え込んでしまうのも手だとか。

「コツコツできる女の子には向いていると思いますよ。まず頭の中に地道にデータベースを作るんです。地理や政治のデータと違って、歴史の年代は応用が利きますからね。細切れに覚えていた出来事や人物にも、年代からどんどん関連性が見えてきます」 

一方、歴史が好きな男の子は多いですが、逆に政治や地理を敬遠する傾向があるそうです。

「男の子は、単なる暗記に見えるものを面倒くさがります。政治の仕組みや地理の農作物の生産率など、それ以上複雑にはならない情報ですね。そのため単元ごとの成績にバラつきが出やすく、何かのきっかけで興味を失うことがあるととたんに全体の成績が下がり始めることがあります」 

では、それぞれの単元に対する男の子の興味を喚起していくにはどうすればいいのでしょうか。

「ポイントは、家庭での働きかけにあります。たとえば食卓を囲んでいるときに“このレタスは何県で収穫されたものだろう?”と何気なく親がつぶやくだけでも、子どもの好奇心を刺激することがあるでしょう。政治分野なら、テレビのニュースで選挙や国会に関する話題が出たときに、意見や感想を述べてみるなどですね。男の子はささいなきっかけから興味を持つと、エンジンがかかりやすいので、あとはいかに覚える手間を惜しまないかが勝負です」

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