人生の指標について学べる『論語物語』

「良書に、大人も子どもも関係ありません」
読書は、自らの経験や価値観の変化とともに心に響く部分が変わってくもの、と戸崎幸子先生は話します。
「たとえ今、読んで共感できない部分があっても、大人になって改めて読み返したときに理解できると、自らの成長や変化を感じ、自分を見つめ直すきっかけともなるでしょう。それが読書のおもしろさの一つであり、本が自分の人生に寄り添ってくれる存在である証拠だと思います。また、小学生の間に難しい本にチャレンジすると、自らの視野を広げるきっかけになるかもしれません。大人の視点で書かれた小説や思想書などを読んでみることで自らの知らない世界に触れることができ、知的好奇心も強まるでしょう」
豊島岡女子学園では、戦後から『論語』を使った教育を行ってきました。めまぐるしい速さで環境が変わる現代社会においても、生きる指標として時代を超えて読み継がれる『論語』を学ぶのは、人としての核をつくる上で意義のあることだと考えています。
「論語の魅力は、何と言ってもその心地良いリズムです。たとえあまり意味がわからなくとも、声に出して読むだけで楽しくなり、身体も活性化されるように感じます。私がおすすめする『論語物語』は、そうした楽しさはさることながら、論語を思想書ではなく、物語として書いたものです。本書に登場する孔子と弟子たちは、どこにでもいる普通の人間として描かれ、ときに迷い、悲しみ、慟哭します。その人間味こそが本書の魅力であり、親しみやすさにもつながっていると感じます」『論語物語』には、人生で大切なことがいくつも描かれていますが、「富める子貢」や「志をいう」という章では特に、物事を学ぶ姿勢について重要なことが示唆されていると言います。
「これらの章で描かれているのは『物事にあたるとき、○○をしなければならない、と我慢して行うのではなく、ただ真心を込めて一心に打ち込むことが大切である』ということです。『論語』でも〈之を知る者は、之を好む者に如かず。之を好む者は、之を楽しむ者に如かず〉(雍也第六)という一節がありますが、これは『何かを理解することは、それを好きなことには及ばず、それを実践して楽しむことにはもっと及ばない』という意味です。これらはまさに、学びの本質を突いています。『頭で理解するよりも、真心を込めて一心に打ち込み、それを楽しむことが大切なのだ』ということを、感じ取ってもらえたらと思います」

社会について知り考える機会を持つ

息子の一人が25歳で脳死状態になり、回復の見込みがないと告げられた著者とその家族。『犠牲(サクリファイス)』は、その息子の臓器提供を決断するまでの心の葛藤をつづった手記です。著者は家族の過去の記憶を辿り、息子の
日記を読み返し、無反応の息子に語りかけ、その苦しみを理解しようとします。戸崎先生は次のように言います。
「脳死状態の人から臓器移植を行うことの裏には、ドナーや家族、そして臓器移植を受ける人がいます。個人的には、家族の長男である賢一郎さんの〈ただ弟の臓器を利用するというのでなく、病気で苦しむ人を助ける医療に弟が参加するのを、医師は専門家として手伝うのだ、というふうに考えてほしい〉という言葉が強く印象に残りました。それが移植医療の在り方の核心ではないかと思うのです。扱っている内容はデリケートで、ときにショッキングなこともあります。お子さんにこの本をすすめるかどうかはその子の精神年齢を考慮した上で判断してほしいのですが、本書には家族の絆や命の尊さなど、生きていくのに大切な要素がたくさん込められています」
さらに戸崎先生は続けます。
「この本にあるような、正解のない問題は世の中にあふれています。それらが壁として現れたとき、目を背けず自分なりに、偏りのない視点で対応しなければなりません。そのために、小学生のうちから社会に関心を持ち、考えることは重要です。こうして大人の視点に触れる読書もまた必要ではないかという思いから、あえて選びました。生きるとは何か、死ぬとはどういうことなのかを学び取ってほしいです」
また、難しい本に挑戦する好奇心を育むためには、「受験に出るかもしれない」という理由で子どもに読書を強制しない方がいいと言います。
「難しい本から何かを感じ取ってもらうには、まず親が本を楽しんでいる姿を見せるといいと思います。その結果、子どもが興味を持てば、自然にどんどん本を読むようになるはずです。また、たとえば我が子が友だちとの関係で悩んでいたなら、『私にもそんな経験があるけれど、この本がヒントになったよ』などと、子どもの心の状態に合わせた本をすすめるのも大切です」

サイトマップ
人気記事ランキング
01 特集
そのひと言が子どもを変える! 学力を伸ばすほめ方・励まし方
02 スペシャルウィーク
9歳までに身につけたい国語力
03 子育てに効く脳科学のお話
頭をよくする方法はある?

サイト内検索
 

RSS登録
これまでの特集記事



気になる記事ピックアップ
これまでに公開された記事の中から気になる記事をランダムでピックアップし、表示しています。