お話を伺った方々
国語力が低くて当然と認識するところから始まる
子どもがなかなか漢字を覚えない、うちの子どもは語彙が少ない、読書嫌いで読解力がない……。
こうした悩みを抱えている親は、子どもに対して、やみくもに漢字の書き取り練習を課したり、推薦図書の読書を強いたりしがちです。
しかし、低学年指導のプロである四谷大塚の講師陣は、口を揃えて「低学年の子どもの国語力は、机上の勉強だけでは簡単に上がりません」と断言します。
「大人は国語力と言うと、『文章を読み登場人物の心情をわかるようになること』『語彙を増やすこと』『漢字を書けるようになること』のようにとらえています。もちろんそれも国語力なのですが、子どもにとっては、そこに到達する前に越えなければいけない壁があるのです」(鈴木先生)
その壁とは何なのでしょうか?
「そもそも国語は、『言葉』を学ぶための教科なんです。そして、何のために言葉を学ぶかと言えば、自分の考えを言葉で他者に伝えたり、自分とは異なる考え方を言葉を通して理解したりするためです。つまり国語は、他者と"コミュニケーション"を図る力を身につけるための教科なんです。まずはその力を養わなければ、国語力の向上は期待できません」(土屋先生)
低学年の子どもは、親以外の大人と接する機会が少ないうえ、語彙も不十分です。そのため、たとえば知らない大人に自分の状況を説明する、といったことは苦手です。迷子になった子どもが泣くばかりで、自分の名前もうまく説明できないでいるシーンを見たことはないでしょうか?四谷大塚の講師陣も、「低学年のうちは、簡単な言葉のやり取りすらおぼつかない子どもも多いのです。子どもの国語力は、まだ低くて当然なんです」と話します。
もう小学生だからと言っても、まだまだコミュニケーション力が大人と比べて圧倒的に低いことを、親が認識できるかどうかが、国語力アップの最初の秘訣と言えるでしょう。

経験と結びつかない言葉は定着しない
低学年の子どもは、そもそも語彙が圧倒的に不足しているため、大人から見ると、「この程度の文章が読めないの?」と歯がゆさを覚えるような簡単な文章ですら、読むのに苦労します。
「たとえば、『こうてい(校庭)』という単語を知らない子どもは、ひとかたまりの言葉だと認識できず、「こう、てい」といったように、途中を区切って読んでしまうことが起こりがちです。また、単語と助詞の区別があやふやであることも多いでしょう。そのため、文章の流れを無視して音読し、1行飛ばして読んでいても、それに全く気づかないことも珍しくありません」(鈴木先生)
語彙が不足している場合、大人は「とにかく言葉を覚えさせよう」と安易に考えてしまいがちです。しかし、問題はそれほど単純ではありません。
「低学年の子どもは、単語を暗記しても、実体験に結びついていなければ、その適切な使い方がわかりません。その言葉と結びつくような経験をしていなければ、いくら言葉を反復練習によって覚えさせたところで、簡単には定着しないのです」(髙田先生)

自分と違う考えを子どもは理解できない
語彙の理解以上に、子どもにとって強敵なのが、物語文の読解です。登場人物の心情を理解したり、場面の変化を読み取ることは、子どもにとって大人の想像以上に難しいことなのです。
「子どもは幼ければ幼いほど、物事を主観でしか考えられません。たとえば、物語の中に"注射が嫌いな男の子"が出てきても、『僕は注射が平気だ』と思っていれば、主人公の気持ちや性格を理解することを拒絶してしまうんです」(鈴木先生)
なぜ主観でしか物事をとらえられないかと言うと、それは『自分とは異なる考え方や価値観を持った他者がいる』という認識がまだ薄いためです。そういった認識を育てるためには、親や兄弟姉妹などの家族とだけではなく、老若男女問わずにコミュニケーションの機会をつくることが大切です。環境的に、家族や友だちなど特定の相手としか接点を持っていない子どもは、なかなか"他者"という存在を理解したり、意識したりすることができない傾向が顕著だと言います。
「語彙を充実させるにしろ、文章の読解力を伸ばすにしろ、その基本となる他者とのコミュニケーションや実体験を増やさなければ、子どもの国語力は伸びません。低学年の子どもに限っては、将来の中学受験を意識するのではなく、まずはその土台となる力を育む意識で国語力アップに取り組むことが大切です」(土屋先生)

勉強以外の日常を充実させよう
国語力を高めるためには、多くの人と接する機会を設け、さまざまな体験をさせることが理想ですが、なかなか難しい場合も多いでしょう。そこをカバーする方法に、親子間の会話の量と質を高めるという方法があると言います。
「親子で同じ本を読んで、子どもだけに感想を求めるのではなく、親もその本の感想を率直に話すとよいでしょう。たとえば、お母さんが『登場人物のあの子が好き』と言えば、子どもはその登場人物のパーソナリティに興味を持ちます。また『どうしてお母さんはあの子が好きなんだろう?』と、他者の考えを意識するきっかけになります」(髙田先生)
感想を伝えるときには、表現に工夫を凝らすとさらに効果的なようです。「たとえば、『好き』という言葉は感情表現のひとつですが、『親しみを覚える』『慕う』『愛する』『気に入る』『魅力を感じる』など、それを言い換える言葉が、日本語にはたくさんあります。親が気持ちをできるだけ具体的に表現してあげることで、子どもの語彙が増えていきます。また同時に、言葉に対する子どもの興味を喚起することもでき、さらに情緒を育てることにもつながるはずです」(中﨑先生)
こうした方法以外にも、国語力をアップさせる方法は、さまざまに考えられますが、いずれにせよ、低学年の子どもの場合、"勉強以外の日常生活をどれだけ充実させられるか"が、国語力アップの大きなカギを握っていることは間違いなさそうです。

あらすじがつかめれば小1は合格点
国語力は一朝一夕には身につかないため、日々の生活の中で、地道に積み重ねていくことが求められます。
「低学年のうちから、子どもに多くを望むのは禁物。たとえば、音読に関しては、小1の段階では、句読点を意識しながらメリハリをつけて文章を読めれば合格点です。また、知らない言葉に興味を持てるかも重要です。初めて出会った言葉に、全く興味を示さない場合は、親から何らかの働きかけが必要でしょう」(中﨑先生)
物語文の読解についても、同じように少しずつステップアップしていくことが必要です。「小1のうちは、『あらすじをつかむこと』ができれば、それで十分です。小2では、『わかりやすく書かれている心情を読み取ること』が目標。たとえば『うれしかった』とか『涙を流している(悲しんでいる/喜んでいる)』など、直接的に表されている心情を理解できていればいいでしょう。小3になったら、登場人物の背景を理解したり、過去に起きた出来事と登場人物の気持ちのつながりを理解できるようになることが理想です」(中﨑先生)

国語力は考える力でもある
言葉は、コミュニケーションの手段のひとつであると同時に、"考える"ための手段でもあります。大人でも子どもでも、何かを考えるときには、必ず頭の中で言葉を使っています。四谷大塚の講師陣は、「語彙が豊かであればあるほど、思考の幅は広がります。逆に語彙が乏しければ、いつまで経っても思考は貧しいままです」と、国語力アップの重要性を説きます。
最近の中学受験では、算数や理科、社会など、国語以外の科目でも、長文読解を要する問題や、思考力の高さを問う問題が出題されるため、国語力が低いままだと、他教科にも支障が生じることが十分に考えられます。
「国語力は勉強面に大きく影響するのはもちろん、コミュニケーション能力をはじめとした、子どもの『生きる力』にも直結する重要な力になります」(土屋先生)
一般的に、言葉を習得する能力は、年齢が若いほど優れていると言われています。低学年のうちから国語力の向上に取り組むことは、子どもの未来の可能性を広げるという観点からも、大きな意味を持っていることは間違いありません。
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