現代の高層ビルや大型のマンション、橋などは主に鉄とコンクリートを材料につくられています。それにし、腰原幹雄先生の研究テーマは、鉄とコンクリート以外のものを用いて大きな建築物をつくることです。

「最近では、奈良県にある土でできた建物や、長崎県のレンガ造りの建物を視察しました。ただ、研究の中心は木材を材料とした建築物ですね」

もともと日本は法隆寺五重塔や東大寺大仏殿など、木造建築が伝統です。

「ところが近代になって、木は鉄やコンクリートに比べて丈夫さ・耐火性において劣るということで、木造建築に対する法律での規制が始まり、木造建築の技術が廃れてしまったのです」

今、腰原先生の目標は、たくさんの階がある木造建築物をつくること。実現すれば、木造の高層マンションなども建つようになります。

「現在の日本の技術では、木造の建物は4階建てまでつくることが可能です。これは木材の耐火性によるもので、現在は1時間耐火(火災時に1時間耐えられる)で4階建てなのですが、仮に2時間耐火の木材があれば13階建てまでつくることができます」

1時間、2時間と、耐火性で建築可能な高さが変わるのはなぜでしょうか。

「人が避難する時間をそのぐらいと設定しているからです。だからたとえば、13階建ての建物からの避難に本当に2時間かかるのかを検証し、国に対して法律改正を働きかけることなども研究テーマとなり得るでしょう。単純な技術だけを言えば、木材で100m級の塔を建てることは可能で、海外では実際に建築されています」

東日本大震災などの自然災害も、自然や環境問題との向き合い方を見直すきっかけとなりました。

とは言え木材の高層建築では、耐震のための土台づくりも懸案となります。

「土台となる木が腐るといけません。そのため、腐らない木材をつくる、木に加工を施して腐らないようにする、土台は鉄でつくって地上で木とつなぐなど、考え方によって研究する事柄には無限のバリエーションが生まれます」

一方で、昔の木造建築に学ぶことも。

「たとえば、法隆寺五重塔がこれまで地震などで倒れなかった理由は、これという一つの決定的な要素があるわけではなく、さまざまな要素が組み合わさっています。現代の技術を用いて、ある一つの要素を分析すると、建物の強度を上げるには効果的だが、建物の年月経過に対する耐久性は下げてしまう、といったことが見えてきます。そして、それが現代の建築のヒントになることもあるのです。このように、昔の木造建築を現代の工学の目で検証し直す作業も行っています。木材を古臭いダメなものと捉えず、新しい建築資材と考え、その可能性を探るわけです」

学生の研究テーマも多様な広がりを見せます。

「木造建築で柱となる太い木材を育てるために、その周囲で間引きされた細い木を間伐材と言いますが、その間伐材を柱にして建物をつくった学生がいます。当然、通常の建築物より柱が細いので、柱の間隔やつなぎ方などに工夫を凝らしていました。ほかに、築30〜40年の木造住宅における耐震補強の方法や、木材の色が経年劣化する様子、昔の木造長屋の密集地帯の防火など、学生の研究テーマはさまざまです」

学生の研究は、基本的には建物の設計をして、パソコンで建物の強度などを数値化した上で、計算して進めます。

「大きな建物になると、最後は大工さんに依頼して実際につくってもらいます。それまでに必要な資材を発注しておくなど、学生にも社会人と同じく、物事の段取りをつけることが求められるのです。木造住宅や5m程度の五重塔をつくって、耐震性実験を行う学生もめずらしくありません」

また、木材は、人間にとって親しみやすい素材と言われます。



東京大学 生産技術研究所
人間・社会系部門 木質構造学
腰原幹雄研究室
腰原 幹雄先生
腰原 幹雄 先生

東京大学大学院博士課程修了後、東京大学大学院助手、生産技術研究所准教授などを経て現職。ビルや橋などの構造設計も手がける。

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