坂本静男先生は、運動が人間の健康に対してどのような効果をもたらすかを研究しています。「今は、どのように運動すれば効率よく脂質を酸化させてエネルギーに変え、脂肪を燃焼させることができるか、ということが主なテーマです」

研究室では、ランニングマシーンのような装置の上で、実際に人が歩いたり走ったりして実験を行います。何本ものコードなどで実験を受ける人(被験者)の身体とコンピュータをつなぎ、心電図や血圧、酸素摂取量、脂質酸化量などを測定し、運動することで身体に起きる変化を見ます。同様のことを被験者を替えて10人、20人と繰り返し、実験の結果が客観的に正しい事実であることを証明していきます。

「激しい運動をするほどダイエット効果がある、というイメージを持っている人もいると思います。確かに、運動中の脂質酸化量は激しい運動をした方が多くなります。しかし、脂肪は運動後も酸化され続けるもので、その運動後の脂質酸化量は、全力で激しく運動したときと、40%強くらいの力で運動したときとでは同じぐらい。心身の疲労などを考えると、40%強ぐらいの強さの運動の方が、効率が良いと言えます。40%強の運動というのは、たとえば軽く息が弾むぐらいの早足のウォーキング程度です」

そのほか、朝と夕方ではどちらの時間帯に運動した方が脂肪は酸化するのか、食事の前と後ではどうか、など研究の切り口はさまざまです。

「脂質酸化量を増やすことだけを考えると空腹時に運動した方が効率的ですが、不整脈などの症状が出るリスクがあることを考えると、おすすめできません。このように総合的に考えて最適な運動を追い求めます。中高年の多くの人が悩まされている糖尿病などの生活習慣病についても、運動で徴候を改善したり、予防したりする効率の良い方法を考えたいですね」

 冒頭で取り上げた実験装置は、病院で使われる医療器具と同様のものです。「運動が人間の健康にどのように影響するかという研究は、古くからあったのですが、なかなか客観的なデータを揃えるのが難しいという課題がありました。近年になって科学技術が発達し、酸素摂取量や脂質酸化量などを瞬時にコンピュータで測定できるようになり、急速に研究が進むようになったのです。医学部でもないのにこれほど大きな医療器具があるのは本学術院ぐらいだと思います」

坂本研究室では〝運動・栄養(食事)・休養〞という3つの観点から、人間の健康にアプローチします。学生の研究テーマもさまざまです。

「レスリングの選手でもある大学院生は、自分も苦しめられている減量をテーマにしています。たとえば3㎏減量 しなければならないとして、7日かけて減らすのと、3日で減らすのと、1日とでは、競技能力や免疫機能、精神的な疲労などの面でどう違うのか、自分を実験材料にして研究していました」

 また、坂本研究室に所属する大学院生には、留学生も少なくありません。「ある中国人留学生は、中国の妊婦の健康について調査しています。中国では人口抑制政策の影響などもあり、妊婦が過保護に扱われることが多く、結果として妊娠後に20㎏ほども体重が増加してしまう傾向があります。一方で日本人は、増えたとしても数㎏程度で、妊娠後も健康的な体型を維持する女性が多いです。中国と日本の違いについて、食事や運動、日常生活などの観点から分析しています。中国では食事中の脂質の量が多いこや、日本では安定期に入った後は適度な運動を奨励する習慣があることなどが、カギとなっているようです」

そのほか、〝正しい水分補給とは?〞や〝睡眠時間と運動のパフォーマンスの関係〞といったテーマもあります。「学生には、教科書に書かれていることがすべて正しいわけではなく、それを鵜呑みにせずに疑いを持つことが研究の始まりだと伝えています。時代とともにどんどん新しいことがわかっていって、教科書の内容が変わることも珍しくないですから」



早稲田大学 スポーツ科学学術院
坂本静男研究室
坂本 静男教授
坂本 静男 教授

医学博士。弘前大学医学部卒業後、医師として関東逓信病院、順天堂大学浦安病院などに勤務。競技スポーツの帯同医としてオリンピックなどの国際大会の日本選手団にも随行。日本臨床スポーツ医学会理事も務める。

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