見えないけれどその本を読むことで、確かに何か伝わってくるものがある。読書の楽しさは、そうしたところにあるのではないかと思います。

それは「愛情」とも言えるし「心」とも言える。私たちの心の中にあるけれど、意外と見過ごしているような、繊細だけれど心の拠りどころとなるようなもの。今回は、そんな感受性の一瞬、一瞬を捉えた本を集めてみました。

まず、低学年用には『かさ』を。この本は字のない絵本で、しかも絵もほ とんど黒一色。唯一、主人公の女の子の傘だけ赤く描かれています。何も語られていないのに、女の子の気持ちが手に取るようにわかる。そんな世界を 体験してもらえたらと思います。

続いて『雨のにおい星の声』。視覚障がいがある子どもたちの、自然の風物に対する捉え方を詩のように美しい言葉で集めました。「星はネコの鳴き声みたいな気がする」など、素朴な言葉が心に強く残ります。

『ヨンイのビニールがさ』は韓国のお話。ある雨の日、ヨンイはずぶぬれのおじいさんに傘をさしかけます。学校の帰りにそこを通りかかると……。物語の最後の場面の余韻が残り、目には見えない何かを手渡された気がすると思います。

高学年向けには『マリアンは歌う』。黒人歌手・マリアン・アンダーソンは、差別や偏見の中、好きな歌を歌うことで、多くの協力を得て道を切り開いていきました。ぜひCDも聴いてほしい。『最後の一句』は、死罪を申し渡された父親を救うため、少女・いちが大きな賭けに出る様子を描いたもの。成長期の女の子が持っている一種の神がかり的な強さを感じられると思います。

『ももへの手紙』は、事故で父親を亡くし、生きる気力を失った女の子・ももの心の再生物語。最後にももの気持ちがジワッと満たされ、読者もそれを共有できるのではないでしょうか。

家族の愛の形や故人の姿が彷彿される『ヒロシマ-壁に残された伝言』(集英社)もおすすめです。

何不自由ない生活の中、なぜかやる気が出なかったり、物事に意味が見い 出せなかったり。そんな気持ちを柔らかくぬぐい去ってくれる、ある種のぬくもり。夏休み中の今だからこそ、子どもたちに感じてもらえたらと思って います。

『かさ』

太田大八【著・絵】
05年刊/文研出版/ 1,100円+税
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雨の中を歩く女の子の
気持ちを鮮明に描写

雨降りの日にお父さんをお迎え。小さな女の子にとっては、誇らしさやうれしさなど、さまざまな気持ちが交錯することでしょう。墨一色の絵の中に描かれた赤い傘が、その情景を鮮明に浮かび上がらせ、言葉はなくとも女の子の心が伝わってきます。

『雨のにおい星の声』

赤座 憲久【著】、 鈴木義治【絵】
88年刊/小峰書店/ 1,400円+税
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雨降りの土の匂い、星は猫の鳴き声など、盲目の子どもたちの心が美しく映し出されています。

『ヨンイのビニールがさ』

ユン・ドンジェ【著】、キム・ジェホン【絵】
ピョン・キジャ【訳】
06年刊/岩崎書店/ 1,300円+税
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貧しいけれど心優しい女の子・ヨンイとおじいさんの気持ちが雨の日に温かく交差した物語。

『マリアンは歌う』

パム・ムニョス・ライアン【著】
ブライアン・セルズニック【絵】
もりうちすみこ【訳】
13年刊/光村教育図書/ 1,600円+税
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闘うのではなく
しなやかに偏見を駆逐

差別を受けながらも、その歌声でその後に続く黒人音楽家たちの道を切り開いた歌手・マリアン・アンダーソンの生涯を描いた一冊。どんな困難があっても、必ず救いの手が差し伸べられ、それらが偏見を駆逐していく原動力となっていきます。

『最後の一句・山椒大夫ほか
(読んでおきたい日本の名作
 森鷗外Ⅰ)』

森鷗外【著】
03年刊/教育出版/ 800円+税
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死刑を言い渡された父親を救おうとするいちの姿から、成長期の女の子の聖性を描いた作品。

『ももへの手紙』

沖浦啓之【原案】、百瀬しのぶ【著】
12年刊/角川書店/ 438円+税
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事故で亡くなった父親からの「書かれなかった手紙」。その先にももが見たものとは……?

『北御門二郎 魂の自由を求めて
トルストイに魅せられた良心的
兵役拒否者』


ぶな葉一【著】
14年刊/銀の鈴社/ 1,200円+税
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本当の意味で
魂が自由な生き方とは

トルストイの信念に魅せられ、理想社会の実現を求めて徴兵を忌避し、熊本県の山中で農業を続けた翻訳家・北御門二郎の生涯を描いた一冊。

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