「人工衛星の可能性を広げて社会の進歩に貢献する」

中村友哉氏 (株式会社アクセルスペース 代表取締役CEO)夢をかなえるために大事なこと3つ

ミニ四駆でものづくりの楽しさにはまる

中村友哉
1979年三重県生まれ。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。在学中に人工衛星の開発に携わる。2008年に日本初の超小型人工衛星開発会社「アクセルスペース」を設立する。2013年、世界初の商用超小型人工衛星の打ち上げに成功。

生まれ育ったところは、比較的、自然に恵まれた土地でした。身の回りにいろいろな生き物がいて、メダカやおたまじゃくし、カブトムシを捕ってきては、家で飼っていたのを覚えています。

私が小学生の頃は、ファミコンとミニ四駆が流行っていました。ファミコンで遊ぶのも楽しかったけれど、どちらかと言うとミニ四駆の方にはまっていましたね。自分で車体を削って形を変え、少しでも速く走るようにいろいろと工夫するのがおもしろくて。あの当時の体験が私の原点であり、今取り組んでいる人工衛星の開発につながったように思います。

勉強はずっと好きでしたが、中学に入ってからは陸上部の活動にとにかく一い生懸命でした。私が通っていた中学校は部活動の種類が少なく、何となく陸上部を選んだのですが、いざ始めてみるとすぐに夢中になりました。100メートル走、200メートル走の選手として、短距離競技の練習に励み、リレーのメンバーとして大会に出場する機会もありました。私の場合、なぜか個人種目で走るよりリレーの方がタイムが良くなるんです。リレーだと「ほかのメンバーに迷惑をかけられない」という責任感が、知らないうちに心の中で湧いてくるからではないかと思います。

高校も地元の公立に進学し、そこでは合唱部の活動に打ち込みました。3年生のときには部長として演奏会に向けて部員をまとめる役割を経験。ときには指揮者を務めることもありました。皆で力を合わせて同じ目標を目指す中で、連帯感や充実感を味わえたのが印象深いです。

人工衛星の開発も、決して一人でできることではなく、チームワークがとても重要になります。そういった意味では、中学・高校時代を通じた部活動の経験が、今の仕事に就く上での基礎づくりと言えるでしょう。

3個の人工衛星を開発した大学時代

外で遊ぶことが多かった小学生時代。生き物とふれ合うことが楽しみの一つだった。

高校の頃は化学が好きでした。それで、「化学者になれたらいいな」という思いを抱き、東京大学へ進学。ところが、いざ大学に入ってみると、化学よりも興味をかきたてられる分野に出会うことになりました。それが、超小型人工衛星の開発です。

大学2年生のときに人工衛星をつくる研究室が東大にあることを知って驚くと同時に、「自分の手で人工衛星をつくってみたい」と強く思いました。それまで宇宙の道を志していたわけではないのですが、大きな目標に刺激を受け、その研究室に入りました。

それからは人工衛星の開発に没頭し、大学院の修士課程に進んでからも研究に明け暮れました。修士課程が終わってからもさらに研究を続けたくて、結局、博士課程も含めて6年間を費やすことに。その間、3個の人工衛星を開発することができました。

当時の人工衛星は大型のものしかなく、アメリカのNASAや、日本のJAXAがたくさんのお金をかけて開発するのがあたりまえでした。学生だけで人工衛星をつくる試みは世界でも類を見ない取り組みでしたから、挑戦したことに大きな意義があったと言えます。

最終的には、一辺10センチ程度の立方体の人工衛星を完成させ、地球上にある30メートル程度の大きさの物を宇宙から確認できる機能を取りつけることができました。この成果に自信を持ち、「この技術はきっと世の中の役に立てられるはずだ。超小型人工衛星の開発をもっと続けたい!」と考えるようになりました。

しかし、基本的に学問の場である大学では、社会に役立つ製品をつくり出す環境として限界があります。かと言って、人工衛星を製造する企業は大型のものしか扱っていません。となると、私に残された道はただ一つ。自ら新しい会社を立ち上げるしかなかったのです。

幸いなことに、学生が新たに立ち上げるビジネスを資金面で支援する制度があり、そのおかげで何とか起業する目処がつきました。

存続が危ぶまれたとき運命の出会が訪ずれる

中学は地元の公立に進学。陸上部に入り、短距離走やリレーの選手として活躍した。

しかし、そこから先が大変でした。人工衛星をつくるだけではビジネスとして不十分で、取引先を見つけ、商品として売り込んでいかないと会社の経営が成り立ちません。それなのに、企業で働いた経験がない私は、具体的にどのようにすれば良いのかわからない。本当に困り果てました。

とりあえず本やインターネットで調べたり、いろいろな人に話を聞きました。営業活動も始めたのですが、うまくいきません。たくさんの会社を回りましたが、結果はいつも同じ。超小型人工衛星の内容を聞くと興味を持ってくれるものの、その会社にとってどう役立つかという部分を具体的に提案できないので、そこで話が終わってしまうのです。

そんな苦難が続き、会社の存続をあきらめかけました。しかし、ウェザーニューズという会社に出会ったことで転機が訪れます。

ウェザーニューズは世界最大の気象情報会社で、北極海を航路として利用する船舶に海を覆う氷の分布情報を提供するサービスを行っていました。海氷は刻々と形を変えるため、短い間隔で状態を把握できると航路を決める際に役立ちます。ところが、当時の人工衛星から送られる画像では撮影から情報提供までに時間がかかり、お金も高かったのです。

その問題を超小型の人工衛星であれば解決できる可能性があり、それで声をかけてもらえました。結果的に、ウェザーニューズは私たちの最初の取引先となり、アクセルスペースという会社を正式にスタートさせることができました。

人工衛星で世の中をもっと便利にする!

アクセルスペースが開発した超小型人工衛星。質量は約10kg。北極海の海氷の状態を観測する。

従来の大型人工衛星は、打ち上げるのに莫大な費用が必要でした。それに比べて小さなロケットにも載せられる超小型人工衛星は、打ち上げの費用も含めた開発費が大型人工衛星の100分の1程度で済みます。つまり、大型のものよりたくさん打ち上げることができ、地球に大量の衛星画像を送れるのです。

常に最新の情報が求められる気気象情報や渋滞情報は、超小型人工衛星を使えば以前よりも正確に伝えられることができます。技術開発と打ち上げの取り組みがさらに進めば、世界のあらゆる場所で何が起きているのかをリアルタイムで知ることも可能になるでしょう。

私は人工衛星を「第二のインターネット」だと考えています。もっと広く活用すれば、世界中のあらゆる情報をだれでも簡単に手にすることができる。宇宙の存在も、もっと身近になるでしょう。

人工衛星をこれまで以上に社会に役立てるために、全力を注いでいくつもりです。

親から「勉強しなさい」と言われたことは一度もありませんでした。自分の部屋で学校の勉強とはあまり関係ない本を読んでいるときも、叱られることはなかったです。「子どもが夢中になっているものは、もしかしたら将来につながる可能性があるかもしれない」と考え、見守ってくれたのではないでしょうか。私が社会人経験もなしに起業しようとしたときも反対せず、「人生は一度きり。自分のやりたいようにするのがいい」と、背中を押してくれました。
気になる部活調査隊
ヨット帆走から自然の偉大さと命の大切さを学ぶ
逗子湾に面した逗子開成中学校・高等学校は、その環境を生かした「海洋教育」を重視。すべての生徒が在学中...>>続きを読む
夢を追って
「地震学者の立場から情報を発信して犠牲者をなくした...
小さいうちから物怖じしない子どもだったようで、デパートで知らない子にいきなり話しかけたりしていたそう...>>続きを読む
サイトマップ
人気記事ランキング
01 特集
そのひと言が子どもを変える! 学力を伸ばすほめ方・励まし方
02 スペシャルウィーク
9歳までに身につけたい国語力
03 子育てに効く脳科学のお話
頭をよくする方法はある?

サイト内検索
 

RSS登録
これまでの特集記事



気になる記事ピックアップ
これまでに公開された記事の中から気になる記事をランダムでピックアップし、表示しています。