新緑が美しさを増し、生きとし生けるものが「生」を謳歌する時期がやってきました。そうした季節だからこそ、今回は「生」の対極にある世界を取り上げたいと思います。 

ある日、家族や友人がこの世から消えてしまう││。その受け入れがたい気持ち、誰とも分かち合えない喪失感。ときにはこうした感情と向き合うことも、大切なことだと思うのです。

低学年向けには『てんごくのおとうちゃん』を。父親を亡くした〝ぼく?は、思い出をたどるうちに「ぼくより悲しいのはお父ちゃんではないか」と気づきます。誰かが亡くなったときの欠落感を優しく支えてくれる内容です。『なきすぎてはいけない』は、入院中のおじいさんと孫のお話。命が尽きる前に、おじいさんは孫にたくさんの温かい助言をします。二人の間に流れる愛情の循環を感じられる一冊。『だいじょうぶだよ、ゾウさん』は、年老いたゾウと、そんなゾウを見守るネズミのお話。死にゆく相手を見送るとはどういうことなのか。ネズミの言動からさまざまに感じられると思います。ほかに、ペットとの永遠の別れを描いた『さよならをいえるまで』(岩崎書店)もおすすめです。

高学年向けには『黒グルミのからのなかに』。病気の母親を守ろうと、ポールがクルミの中に死神を閉じ込めると、作物は実らず、魚や鳥の卵もかえらなくなってしまいます。生と死の関係をわかりやすく描いた物語です。『いつも だれかが…』では、おじいさんが孫に「自分はいつも誰かに守られてきた気がする」と自慢げに語ります。ナチスドイツの迫害や第二次世界大戦をくぐり抜けてきた、その理由とは……? 『デューク』は、飼い犬の死を受け入れられない私の前に、ある日突然少年が現れ、ひとときを共に過ごして去っていくというお話。さまざまな気持ちの余韻を味わってもらえたらと思います。ほかに、小さな男の子の死神くんと病気の女の子の交流を描いた『ちいさな死神くん』(講談社)もおすすめです。

今回ご紹介したような死を内包させている本には、作者も真剣にそれに向き合って書いているので、数多くの良書があります。ぜひ、これらの本を通じて、読解力、そして感受性を高めていってもらえたらと思います。

『てんごくのおとうちゃん』

長谷川義史【著】
08年刊/講談社/ 1,500円+税
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ぼくより悲しいのは
お父ちゃんかもしれない

亡くなった父との思い出をたどっていくうちに「自分よりお父ちゃんの方が悲しいのでは?」と気づいた“ぼく”は、自分の心の中に父親が生きていることを力強く認識します。温かいユーモアで包み込まれた父と子の交流が心に染みるお話です。

『なきすぎてはいけない』

内田麟太郎【著】、たかすかずみ【絵】
09年刊/岩崎書店/ 1,300円+税
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いつまでも見守り続けたい。孫に対する祖父の
愛情を美しい四季を通して描いた物語。

『だいじょうぶだよ、ゾウさん』

ローレンス・ブルギニョン【著】
ヴァレリー・ダール【絵】、柳田邦男【訳】
05年刊/文溪堂/ 1,500円+税
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年老いたゾウと幼いネズミを通し、死にゆく者に残された者は何ができるかを描いた絵本。

『黒グルミのからのなかに』

ミュリエル・マンゴー【著】
カルメン・セゴヴィア【絵】、ときありえ【訳】
07年刊/西村書店/ 1,500円+税
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「死」がない世界には
「生」も存在しなくなる

病気になった母親を守るため、黒グルミの中に死神を閉じ込めたポール。ところが、「死」が消えた世界では「生」もなくなり、さまざまな不都合が生じてしまいます。誰もがいつかは迎える生の終わり、そして生と死の密接なつながりを描いた一冊。

『いつも だれかが…』

ユッタ・バウアー【著】、上田真而子【訳】
02年刊/徳間書店/ 1,700円+税
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自分の人生を語る祖父と、それに耳をかたむける孫。そして二人を“見守る存在”がいて……。

『デューク』

江國香織【著】、山本容子【絵】
00年刊/講談社/ 1000円+税
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クリスマスの時期に、今は亡き愛犬・デュークからのメッセージを受け取る“私”の物語。

『子規、最後の八年』


関川夏央【著】
11年刊/講談社/ 2,300円+税
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近代日本を代表する
文学者の濃密な晩年

28歳で結核を発症し、35歳でこの世を去った正岡子規。日本を代表する俳人は、死と隣り合わせの人生を歩むことで、その生を極限まで輝かせた。

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