左:『言葉と歩く日記』多和田葉子【著】/ 13年12月刊/岩波書店/ 760円+税 Amazonで購入
右:『男性論 ECCE HOMO』ヤマザキマリ【著】/ 13年12月刊/文藝春秋/ 760円+税Amazonで購入

ヴィオラ奏者の母をはじめとして、子どもの頃からまわりは自由人ばかり。絵の勉強のため17歳でイタリアに渡り、ずっと生活の基盤を海外に置いていて、日本的な結婚観や家族観とは無縁に生きてきたという漫画家のヤマザキマリ。映画にもなって大ヒットした『テルマエ・ロマエ』を親子で楽しんだという方もいるのでは? 『男性論 ECCE HOMO』は初めての新書です。皇帝ハドリアヌスからアップル創業者のスティーブ・ジョブズまで、ヤマザキさんが理想とする「古代ローマ的な魅力」を持った男性について語ります。

古代ローマ的な美点とは、たとえば他者に対する寛容性、文系と理系を横断するボーダレスな感性。異文化と比較することで、日本の問題点が浮かび上がります。といっても、西洋を盲目的に崇拝する本ではありません。イタリア人の夫とはわかりあえない部分にも触れているのです。水木しげるや安部公房など、かっこいい日本人男性も紹介されています。同調圧力が強いと言われる日本の社会に息苦しさを感じたら、ぜひ手にとっていただきたい。きっと元気がわいてくるでしょう。

境界を越えることで見えるものを書いた本といえば『言葉と歩く日記』もおすすめです。著者は30年以上ドイツで暮らし、日本語でもドイツ語でも小説を書く多和田葉子。〈何をするのにもわたしは言語を羅針盤にして進む方向を決める。言語の中には、わたし個人の脳味噌の中よりもたくさんの知恵が保存されている〉という多和田さんが、自分を観察した日記です。二つの言語を行き来する作家がどんなことを考えているのか。頭の中を覗きこんだようなおもしろさがあります。

温泉に行ったときのことを書いていてたまたま出てきた〈冷たい湯〉という日本語から、脳をマッサージする言葉遊びを思いついたり、移民が多く住む地区で使われるキーツ・ドイツ語を通して、生きて変化する言葉の柔軟性に気づいたり、懐かしいけれど名前がわからない道具について『アレ何?大事典』で調べてみたり。外国語に親しみがわくだけではなく、知っているつもりの母国語の未知の一面も発見することができます。海外に行くことだけが、越境の手段ではありません。普段の会話や読み書きしている言葉のちょっとした差異に目を向けるだけで、世界は一気に広がるのです。




『ジェノサイド』(上・下巻)
高野和明【著】
13年12月刊/角川書店/ 600円+税
※写真、値段は上巻のもの
Amazonで購入

父が遺した一通のメールによって巨大な陰謀に巻き込まれる大学院生と、息子を救うために極秘任務を請け負った傭兵の人生が思わぬところで交錯する。人はなぜ殺し合うのかというテーマに挑んだベストセラー小説。




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