左:『花森安治伝 ──日本の暮しをかえた男』津野海太郎【著】/13年11月刊/新潮社/1,995円 Amazonで購入
右:『捨てる女』内澤旬子【著】/13年11月刊/本の雑誌社/1,680円 Amazonで購入

今回は子どもたちの暮らしを支えているお父さんとお母さんに、ぜひ手にとっていただきたい本があります。津野海太郎の『花森安治伝』。第二次大戦後『暮しの手帖』を創刊し、1970年代には発行部数百万部を突破する国民的雑誌にした稀代の編集者、花森安治の評伝です。花森はなぜ日本の暮らしを変えようとしたのか。彼が変えようとしたのはどんな暮らしだったのか。さまざまな資料と、一人娘の証言をもとに解き明かしていきます。

女装していたという伝説の検証や、『暮しの手帖』が大ヒットするきっかけになった商品テスト(トースターの性能を調べるために4万3088枚以上のパンを焼いたりする!)のエピソードもおもしろいのですが、何といっても大事なのは戦時中の話です。一兵卒として徴兵されるも結核を患ったために命拾いした花森は、大政翼賛会に入り、戦争の宣伝活動に従事しました。有名な「ぜいたくは敵だ!」という標語をつくったのも彼だと言われています。『暮しの手帖』を一緒に立ち上げた大橋鎭子に、彼は〈今度の戦争に、女の人は責任がない。それなのに、ひどい目にあった。ぼくには責任がある〉と語ったのだそうです。

懸命に生きていただけなのに、そう思わずにはいられなかったということが悲しい。後半の鬼気迫る仕事ぶりに、彼が背負った罪の意識の重さを感じずにはいられません。どうしたらあやまちを繰り返さないでいられるのか。津野さんが書いている通り〈反戦のスローガンだけではだめ。非常時的なヒロイズムもごめん。「日常の否定」には「日常への愛」で対抗する。どう迂遠に見えようとも、私たちはそこから出発するしかない〉のでしょう。

もう一冊のおすすめは、内澤旬子の『捨てる女』。乳がんを境に、身体が大量のモノを拒絶するようになり、捨てまくり主義に転向せざるをえなくなってしまった内澤さんが、いろんなものを処分していく過程を綴ったエッセイ集です。特に豚を育てる仕事のために移り住んだ千葉の廃屋を片づけたときの話がすさまじい。不要な家具から長年収集してきた本や自分のイラスト原画まで、おびただしい数のモノを手放した果てにたどりついた意外な心境とは? 捨ててスッキリという断捨離推奨本ではありません。モノと人間の関係にまつわる深い思索が新鮮。




『きみは白鳥の死体を踏んだことがあるか(下駄で)』
宮藤官九郎【著】
13年11月刊/文藝春秋/630円
Amazonで購入

大ヒットドラマ『あまちゃん』の脚本家による初の小説。大好きだったビートたけしのラジオ、バンカラな男子校で受けた洗礼……。東北の白鳥が飛来する町で育った“僕”の恥ずかしい青春を虚実ないまぜで描きます。




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