左:『学級崩壊立て直し請負人 大人と子どもで取り組む「言葉」教育革命』菊池省三、吉崎エイジーニョ【著】/ 13年6月刊/新潮 社/ 1,155円 Amazonで購入
右:『世界地図の下書き』朝井リョウ【著】/ 13年7月刊/集英社/ 1,470円 Amazonで購入

親の庇護が受けられない子どもは、どんな現実に直面するのでしょうか。朝井リョウの『世界地図の下書き』は、児童養護施設で暮らす少年少女を描いています。朝井さんの直木賞受賞後第一作です。主人公は、小学3年生の太輔。突然の事故で両親を亡くし、伯父の家でも虐待されて、「青葉おひさまの家」に引き取られます。

無邪気な麻利、麻利の兄で太輔と同学年の淳也、おませな美保子、みんなのお姉さん役をつとめる佐緒里。施設で大切な仲間に出会い、太輔は心を開いていきます。ところが、自分の力だけではどうにもならない問題が、彼らを容赦なく傷つける。たとえば、麻利に対するいじめ。ただ友だちが大好きという想いを素直に伝えただけなのに、麻利はクラスの中で孤立していく。太輔は自分たちが何をしても変わらないこともあると思い知ります。途中で読むのがつらくなるかもしれません。でも、閉塞感から抜け出す考え方が提示されるラストまでたどりつくと、これは希望の物語だとわかります。

朝井さんは「どうして今の世の中には精神的なセーフティーネットがないのか」という疑問を抱き、この小説を書いたのだそうです。現実の世界において、どのようにふるまえば大人が子どものセーフティーネットになれるのか。菊池省三・吉崎エイジーニョの『学級崩壊立て直し請負人』が参考になるでしょう。北九州で荒れた学級を次々と再建し、「日本一忙しい小学校教師」と呼ばれる菊池先生の教育法を26年前の教え子である吉崎さんが取材したノンフィクションです

菊池先生は、日直の子をクラス全員でほめる「ほめ言葉のシャワー」、教師が与えたテーマに子どもが返事を書く「成長ノート」など、言葉を使った取り組みで子どもたちのコミュニケーション能力を高めます。自分の意思を言葉にして伝えることを積み重ねていくうちに、子どもたちにとってクラスは安心できる集団になっていくのです。

本書から伝わってくる菊池先生のイメージは、いわゆる熱血教師ではありません。どちらかというと冷静で理知的。常に子どもと社会をつなげることを意識しているから厳しいけれど、状況を改善するための手を打ったら、結果を急がずに待つ。子どもが危機に陥ったとき、大人が落ち着いて対応することの大切さを教えてくれます。




『東海道でしょう!』
杉江松恋、藤田香織【著】
13年7月刊/幻冬舎/ 760円
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本の虫でほとんど外出しない書評家コンビが、なぜか東海道五十三次を歩くことに! うんちく満載、東海道ブックガイドとしても使える道中記。著者たちと一緒に東海道を制覇したような達成感が味わえます。




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