私たちが日常生活で耳にしている音が、空気の振動であることは多くの人が理科の授業で習ったことでしょう。 

人間は、音(空気の振動)を鼓膜で捉えて脳に伝えることにより、言葉や音楽などの情報として認識しています。これと同じような能力を持った機械やロボットを開発することを大きな研究テーマとしているのが、峯松信明先生です。 

まずは、「声はどのように生まれるのか」というところから解説してもらいました。「人間が"あ"と言うときと、"い"と言うときでは、口の形や舌の位置が異なります。人間は舌の位置を変えることで、口の中のすき間の形を変化させて、言葉を発音しているのです」 

これは、管楽器で音を出すことと物理的には同じ仕組みだそうです。「管楽器は唇から息を吹き、リードという部品を震わせて音を発生させます。その音を形や大きさが異なる管に通すことで、音色の異なる様々な音が生まれます。人間の声が一人ひとり異なるのも、喉から口に通じる管の形に個人差があるからです」 

峯松先生は、人が言葉を認識するメカニズムについても研究しています。「音の空気振動は、図式化すると波の形(音波)になります。その特徴を分析するのです。音を構成する要素は高さ、強さ、長さ、音色の4つ。強い音は波が大きく、弱い音だと波が小さくなるなど、高さ、強さ、長さについては音波の形を見れば一目瞭然です。しかし、音色については、そう簡単にはいきません」 

音色の違いは、声の個人差に大きく関係しており、機械やロボットだと声の個人差が原因となって、音声から言葉の情報を取り出すのが難しいとのこと。「たとえば、男性が"おはよう"と言うのと、女性が"おはよう"と言うのとでは、声の音色が違います。人間は、どちらも"おはよう"という意味の言葉として理解できますが、機械はそれが上手くできません。たとえば、男性の"おはよう"という声の音色データを機械に入力して、"おはよう"という言葉を理解させたとします。その場合、機械は女性が発する"おはよう"という言葉を、別の言葉と認識してしまうのです」 

この問題を解決するために、峯松先生は数学の専門的な知識を用いて、音色の特徴をデータ化しています。「音色の中には、声の個人差を形成する部分があります。それらをギリギリまで削ぎ落とせば、"おはよう"という声の最大公約数に当たる部分が見つかるはず。人間の脳は、こうしたデータ処理を瞬時に行なっています。その仕組みを突き詰めることが、言葉を理解するメカニズムを物理的に解明することにもつながると考えています」 

峯松先生の研究室では、研究の成果を社会で役立てることにも力を入れています。「海外からの留学生向けに、ネット上からアクセスできる日本語のアクセント辞書を作りました。日本語は"赤""鉛筆"のように、それぞれ別の単語として発音する場合と、"赤鉛筆"とつなげてひとつの単語とするときでは、アクセントが異なります。ところが、そこまでカバーしている日本語学習者用の参考書はほとんどありません。そこで、日本語の文章を入力すると、どのような抑揚をつけて読んだらよいかが示されるソフトを開発したというわけです」 

そのほかに、TOEICのスコアを予測するシステムや、英語の発音をよくするシステムなども開発。「我々は、音を物理的に解明するプロです。一方で、声楽家や語学の教員のように物理的なことには詳しくないけれど、音や言語の世界で活躍するプロが世の中には大勢います。彼らが現場でどのような問題を抱えているかを知るために、学生には異分野との交流を大切にしてほしい。そして、そこで気づいた問題を解決するために、私たちの物理的アプローチがどのように役立てられるかを考えることが重要なのです」

東京大学大学院 工学系研究科
電気系工学専攻
峯松信明教授
峯松信明 教授

東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修了。
豊橋科学技術大学、
スウェーデン王立工科大学などを経て現職。

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