第21回

『ゼラニウムの庭』

大島真寿美【著】
12年9月刊/ポプラ社/ 1,575円
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『赤朽葉家の伝説』

桜庭一樹【著】
10年9月刊/東京創元社/840円
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捨て子として引き取られて育ちながらも、旧家に嫁いだ祖母。漫画家の母、ニートの「わたし」。高度経済成長~現在に至る日本を背景に語られる、ある家族の歴史。

『平成大家族』

中島京子【著】
10年9月刊/集英社/550円
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東京の閑静な住宅街に一軒家を構える緋田家。そこに突如舞い戻ってきたのは、ワケありの娘たち! 四世代8人の大所帯となった一家は、一体どうなる……?


親戚との複雑な関係や過去のトラブルなど、子どもには言えない事情って、どこの家にもありますよね。でも、大島真寿美の『ゼラニウムの庭』で描かれる家族の秘密は、とても変わっています。小説家のるみ子が祖母に打ち明けられた話をきっかけに、一族の歴史をたどっていく長編小説です。 

祖母が語ったのは、たまに家に遊びにくる嘉栄さんのこと。何者なのかわからないし、写真も一枚もない。不思議なおばさんです。いつまでも若々しく美しい嘉栄さんの正体を知って、るみ子は衝撃を受けます。嘉栄さんの体には、ほかの人と異なる時間が流れているのです。そのために存在をひた隠しにされてきたということが、だんだん明らかになっていきます。 

突拍子もないような設定ですが、読んでいると荒唐無稽な感じはしません。この広い世界のどこかに、嘉栄さんのような人がいるかもしれないと思わせる。「いない人」扱いされながら飄々としている嘉栄さんの造形も魅力的です。戦争が起ころうが、家業が傾こうが、代々の当主は表に出られない彼女を守らざるを得ない。守ることで強くなったるみ子の祖母のような人もいるけれど、背負ったものの重さに押しつぶされてしまいそうになる人もいます。嘉栄さんと対峙すると否応なく、自分に与えられた時間の短さ、血のつながりの厄介さ、生きることの寂しさを意識させられてしまうから。 

そういう家族の誕生と死を見つめてきた嘉栄さんが、最後に至る境地がまたすばらしい。希望がないということを語っているのに、目の前が明るくなったような気がしました。 

桜庭一樹の『赤朽葉家の伝説』は、鳥取の旧家を舞台にした三代記。祖母が遭遇した謎が、孫娘の時代に解かれます。『ゼラニウムの庭』よりも幻想度は高めですが、世代ごとの時代背景はリアルです。 

もっと身近な話を読みたい人は、中島京子の『平成大家族』をどうぞ。引退した歯科医の夫婦と、ひきこもりの長男、九十歳の姑が暮らす家に、自己破産した長女の一家と離婚した次女が転がり込んでくる。四世代が同居することによって巻き起こる騒動が、コミカルに描かれます。それぞれの隠し事が諍いの原因になることもあれば、絆を深めることもある。家族って、本当におもしろいと思います。

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