第31回
性格の明るさが頭のよさにつながる

性格が明るい人の方が暗い人より脳の回復が早い

――性格が明るいほど頭がよくなる――。 

こう言われると、驚くでしょうか? 何となくはうなづけても、どこまで本当かわからないなと思うのではないでしょうか。しかしこれは、脳科学的に説明できる事実です。今回は、性格と脳の関わりについてお話しましょう。 

私は、脳外科医として、数多くの患者さんと接する中でひとつのことに気づきました。脳の治療を受けている患者さんを比べた場合、性格が明るい人のほうが、暗い人より回復が早いのです。精神医学の分野では、明るい性格の人は脳の中のドーパミン系神経を、暗い性格の人はアドレナリン系やセロトニン系の神経を、よく使っていることが提唱されていましたから、私はドーパミン系の神経をよく使うほうが、病気が治りやすいのだろうと理解していました。 

脳でドーパミン系神経伝達物質を多く使うものに、危機感を生み出す扁桃核や、記憶を司る海馬回、それに、自分で考えた事を自分で成し遂げる事を自分へのご褒美とする自己報酬神経群があります。 

前向きに明るい性格を鍛えると、自分で考え、それを成し遂げる気持が強くなり、勝負強さが生まれてきます。前向きの明るい性格は、負けると悔しい、何事も自分で成し遂げる「内意識」を持つ事ができ、記憶の機能を司る海馬回の脳機能も高まるので、頭の回転も速くなるのです。

目標を自分の使命にするともっと才能を発揮できる

自分でやり遂げる気持ちは、自分の存在意義を認めて欲しいと言う「自我」と言う本能を基盤に生まれてきます。 

それが正しいのだと言う、物事の正否を判断する「統一・一貫性」や、生き残る為にこの気持ちが大切だと言う「生きたい」と言う別の本能を重ねると、モチベーションが高まり、向上心と言う「こころ」が生まれてきます。 

つまり、人間の気持ちは本能を基盤に生まれ、複数の本能が重なるとこころが発生します。 

その理論的な説明は別の機会に譲るとして、自分がやり遂げたいと言う気持ちを「使命にする」と、気持ちという脳機能、自分の存在意義を示す本能、向上心というこころが一体で機能させる事ができるので、すごい才能を発揮する事が可能になります。 

この現象を、モチベーションが上がったので成功したと言った表現をしています。 

学問や運動において、一流と言われる人は、みんな、何事も前向きの明るい性格、自分で成し遂げる自己報酬神経群の機能をベースに、目標を使命にする事によってモチベーションを高めているのです。 

逆に、この力が落ちてくるとモチベーションが上がらないので引退すると言う意見がでてくるのもこの為です。

親も使命感を持ちポジティブであろう

親は、とかく、自分のレベルを基準に子どもを育てようとします。しかし、判断・理解する、自分の気持ちを高める、考える、記憶すると言った、脳機能の仕組にそった子どもの育て方を心掛けると、子どもが、親のレベルを超える事はそれほど難しい事ではありません。 

親が「できない」「疲れた」など、いつもネガティブな言葉を使っている、「だいたい出来た」「まあ、いいか」「あとで」といった物事を最後までやり遂げないといった習慣を持っていると、脳の同期発火と言う現象によって、それが、子どもにもそれが伝染してしまいます。 

また、いつも怒ってばかりでは、子どもが明るい発想を持つことは難しくなります。 

日常では否定語は使わず、できるだけ自分からヤッテやると言う気持ちを起こす言葉をかけ、その環境を整え、それをやり遂げたら褒めてあげることが大切なのです。 

人間の思考プロセスは、興味を持つ事から始まるので、子どもがどんな事に興味を持っているかを見抜くことも親の力です。 

子どもが興味を持ったものには、親も、一緒に興味を持つことにしましょう。楽しい、おもしろい、好きだ、興味がある、感動した……。子どもと一緒になって、感動することです。 

その中から、ひとつでも、子どもが夢中になり、使命感を持つことができたら、それはすごいことだと思います。

林 成之
1939年富山県生まれ。日本大学医学部卒。マイアミ大学の脳神経外科などに留学し、93年に日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター部長に。2006年に日本大学の教授へ就任。 脳低温療法など世界的な発見で知られる脳科学の第一人者。『困難に打ち克つ脳とこころの法則』(祥伝社)など著書多数。

取材・文/國天俊治 写真/石井和広 イラスト/岸潤一

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