第16回

『理系の子 高校生科学オリンピックの青春』

ジュディ・ダットン【著】
横山啓明【訳】
12年3月刊/文藝春秋/ 1,785円
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『算法少女』

遠藤寛子【著】
06年刊/筑摩書房/945円
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父から算法の手ほどきを受けた町娘が、観音さまの奉納金に誤りを見つけて…。1775年に刊行された和算書『算法少女』をめぐる史実をもとにした、爽快な歴史小説。

『大人もハマる週末面白実験』

左巻健男、滝川洋二、こうのにしき【著】
05年刊/講談社/788円
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読売新聞で連載された科学実験34本を収録。「海底火山のように大噴火するドレッシング」「自宅でつくれるにゅるにゅるスライム」など、ユニークなテーマが満載だ。


科学を愛し科学に愛された少年少女、彼らをサポートする大人たちに、心から畏敬の念をおぼえました。ジュディ・ダットンの『理系の子』。アメリカで盛んな学生科学コンテスト、通称サイエンス・フェアを取材したノンフィクションです。

予選を勝ち抜いた高校生が集まり、自由研究で競い合う。上位者には名誉と奨学金が与えられる。サイエンス・フェアは理系の子たちにとってのオリンピック。その舞台裏ではさまざまなドラマが繰り広げられます。核融合炉を製作しようとする男の子、ハンセン病に感染した恐怖を、らい菌を研究することで克服する女の子、「第二のビル・ゲイツ」と呼ばれるサイエンス・フェアの王者。一人ひとりの子どもが能動的に研究テーマを発見し、深めていく。その過程に興奮しすぎて、途中で本を閉じることができません。

最後にエッセイを寄稿している日本の女子高生まで、登場する子どもたちはみんな魅力的ですが、わたしが特に好きになってしまったのは、「デュポン社に挑戦した少女」ケリードラです。ケリードラは幼稚園のときからサイエンス・フェアに出ている理科オタク。亡くなった祖母のようにハチドリが喜んで指に止まってくれる人になりたいと願う、生き物にやさしい女の子でもあります。そんなケリードラがなぜFBIの捜査官に調べられ、町の住人がほぼ全員働いている大企業を敵にまわしてしまうのか。構成がミステリーのようにスリリングです。圧力をかけられても研究をやめない。でも周囲の人々を大切に思っているケリードラ。〈わたしのとって科学とは、研究をし、それをほんとうに必要としている人に届けることです〉という言葉に感銘を受けました。

ケリードラの品の良さは、遠藤寛子の『算法少女』の主人公にも通じるところがあります。江戸時代に実在した数学書を素材にした小説ですが、天才算法少女が権力争いに巻き込まれたときのふるまいがとても爽やか。理系の学問はビジネスに直結するだけに、大人の思惑に利用されかねない部分がありますが、未来を大きく切り拓く可能性もある。こういう本を読んで自分ももっと勉強すればよかったと思ったら『大人もハマる週末面白実験』がおすすめ。親子でチャレンジして、『理系の子』気分を味わいましょう。

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