チャンス×発見

日常生活で生まれるアイデアは個人の感覚的なものによると考えられがちです。しかし大澤幸生先生は、人間がアイデアを考え出すプロセスをITや数学の専門知識を駆使して、目に見える形にしています。そして、誰でも利用できるシステムを構築し、人々の生活に役立てる研究に取り組んでいます。

「研究の成果のひとつとして、私が考案した『イノベーションゲーム』が挙げられます。このゲームを活用して、たとえば新しい商品の開発に挑戦するとします。その場合はまず、私たち研究スタッフが、『スマートフォン』『二足歩行ロボット』といった、既存の技術や商品に関するキーワードを20個ほど挙げます。これらのキーワードをビジネスワーカーたちに提示して、自分の仕事に関連が深いと考えられるものをいくつか選んでもらうのです。その結果をパソコンでデータ化して分析を行い、キーワードの関連図を作ります」(右の写真を参照)

図の中に書かれたキーワードは、互いの関連性が深いもの同士が近くなり、関連性が薄い場合は遠くなります。

「そして、ある特殊なプログラムを組むことにより、関係性が深いキーワードの間に赤いマークがつきます。ここが、新しい商品が生まれそうなポイントです。たとえば、『小型発電機』と『スマートフォン』の間に赤いマークがつけば、自ら発電して長い時間バッテリーが持続するスマートフォンの開発を考えつく可能性が生まれるわけです。図にして、ひと目でわかるような形になっていると、簡単な作業に感じるかもしれません。しかし、同じようなアイデアを、何もない状態から生み出すのは、かなり苦しいことです」

その苦しみを乗り越える創造のおもしろさを引き出す方法が、大澤先生が考案した「イノベーションゲーム」です。

「ゲームの参加者は、3人程度の『発明家』役と、6、7人の『消費者』役に分かれます。『発明家』は思いついた商品をカードに記入して、図に貼りつけます。『消費者』は気に入った商品があれば、それを購入し、架空のお金を『発明家』に支払います。また、『消費者』のほうから『こんな商品がほしい』とリクエストを書いたカードを図に貼ることも可能です」

1回のゲームは2時間ほどで終了し、最終的に一番お金持ちになった「発明家」が勝者となります。一方「消費者」は、商品を購入したことにより、自分の生活がどれだけ豊かになるのかをプレゼンします。

「この一連のゲームが終わる頃には、新商品のアイデアが、図の中にたくさん書き込まれています。さらに、『消費者』のプレゼンからは、人々の暮らしを豊かにする社会的価値について考えるヒントが得られます」

イノベーションゲームはすでに、さまざまな分野で実践されています。

「ある企業と『名古屋市をより効率的に機能する【スマートシティ】にするにはどうしたらよいか?』という共同研究を進めています。そこで、名古屋市の起業家を招いて、イノベーションゲーム.を行いました。その時は、『次世代自動車』『インターネット家電』などがイノベーションの素材となるキーテクノロジーに選ばれましたね」

このほかに、大澤先生は「アナロジーゲーム」も開発しました。

「これは、パソコンの画面上に羅列された20個くらいの言葉を、自分なりに5つの属性に分類するゲームです。その過程で、ひらめきが得られるのです。過去には、眼科医に眼の病気を分類してもらい、治療の新しいアプローチを発見したことがあります」

大澤先生は、「既存のものを活用して、世の中で役に立つものを考えることが重要」だと語ります。

「日本の技術力は、今でも世界トップクラスです。だから私は、既存の技術を活用することで、すばらしいアイデアは生まれるはずだと考えています。学生にも普段から、心を休めず基礎を積む姿勢が本当の楽しさを産むと教えています。そうすることで土台が固まり、さまざまな知識を活用して研究の幅を広げることができるのです」

取材・文/二本木昭 写真/石井和広

東京大学大学院
工学系研究科
大澤幸生教授
大澤幸生教授

東京大学工学系研究科にて工学博士を取得。
大阪大学基礎工学部助手、筑波大学助教授などを経て現職。
『未来の売れ筋発掘学』など著書多数。
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