言葉を話さない赤ちゃんが なぜ他者を理解できるのか

存在そのものが不思議に満ちている赤ちゃん。話しかけられても、言葉を返すことはできません。しかし、赤ちゃんは、大人が考えている以上の能力を持っています。たとえば、人間と人間でないものの違いを認識できたり、人間の視線や声に対して興味を持つなど、自分を取り巻く世界をちゃんと理解しているのです。京都大学大学院文学研究科心理学教室の板倉昭二先生は、そんな赤ちゃんの持つさまざまな能力を研究しています。

「子どもは他者の心を理解していますし、自分にも心があるのを理解しています。自分と他者との関係、そして他者と他者の関係を理解するようになり、いわゆる社会性が育っていくのです。私は、そのプロセスを調べているのですが、特に注目しているのは、赤ちゃんが、人やロボットといった動くものを、どのように理解しているのかということ。また、赤ちゃんがどのような振る舞いを見て、心を持つ存在だと認識するかを、研究しています」

実際の赤ちゃんが参加 実験を重視する研究方法

観察や面接、インタビューといった心理学の研究方法の中でも、板倉先生は実験的な研究方法を重視しています。

「常に科学的に思考する姿勢を持って、実証的な証明を行います。赤ちゃんは大人と違い、言葉を使うことができません。なので、実験では、赤ちゃんが何に注視しているのかを観察する”選好注視法”などを用いています。このような、言葉を使わない方法を考えるのも、研究プロセスのひとつです」 

実験は、保護者同伴の赤ちゃんに参加してもらいます。

「健康状態や機嫌によって、赤ちゃんが泣き出してしまうこともあるので、実験時間には限りがあります。その中で実験を組むのが、難しくもあり、おもしろい部分でもありますね」 

最新の研究成果である、行為と赤ちゃんの知覚問題に関する論文は、英国の権威ある科学雑誌に掲載されました。他者がおもちゃを掴む行為を、4~10か月の赤ちゃんに見せ、その視線の動きを測定。測定データから、他者の手がこれから「おもちゃを掴む」ということを予測できるかどうかを調べました。その結果、他者の行為を予測する能力は、赤ちゃんの運動発達と関係していると証明し、高く評価されました。 

同研究室では、ほかにも、赤ちゃんの持つ共感性や、指差しと言語発達の関連性を始め、顔の認知や嘘の発達に関する研究など、数多くのテーマに取り組んでいます。

「最終的には、赤ちゃんの社会性が発達する過程のメカニズムを発見し、理論化したいです。一般的なテーマでは、赤ちゃんにとって、行動を理解することと予測することには、どんな関係性があるかを解明したいですね。たとえば、ある条件のときには、こんな行動を取るといった法則を見つけ、赤ちゃんの発達について、よりよく説明できるモデルを作りたいと考えています」

京都大学大学院
文学研究科心理学教室
理学博士
板倉昭二教授
板倉昭二教授

横浜国立大学教育学部卒業。
1989年京都大学大学院理学研究科(霊長類学専攻)博士後期課程修了。
日本学術振興会特別研究員(PD)などを経て、現職。
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