主な研究の対象はシカやクマなど野生動物

 野外でのデータの収集・分析を重視し、科学的に野生生物の生息状況を調査。それを取り巻く人間社会を正しく認識し、野生動物と人類とが共存できる方法を研究しているのが、東京農工大学の梶光一教授です。

 「シカやクマ、イノシシといった大型の動物について研究しています。私自身の研究テーマは、”エゾシカの生態”。30年程前に、北海道洞爺湖中島に放たれた、シカの個体数の変化を追跡したところ、5年で個体数が倍増して、300頭になり、森林が荒らされてしまいました。この結果から、北海道本土でも同様にシカが増え、農作物に被害が出るのではという予測を立てたところ、それが現実となったのです。野生動物の保全は、人間社会との関わりとともに考えるべきだと、痛感しました」

 研究室の学生たちは、カー・ナビゲーションシステムに用いられるGPS装置などを使って、野生動物の生態を調べていきます。

 「学生自らワナを仕掛けて、クマを捕まえます。吹き矢で麻酔を打って、GPSを取りつけ、2時間ごとにクマの移動の痕跡を記録。このデータが、研究のとっかかりとなります」

 その後、集めたデータを分析します。

 「やはり、野生動物の生態調査には、野外での地道なデータ収集は重要です。月に一回は栃木の山に出かける学生や、1か月もの間、北海道の洞爺湖で調査をしている学生もいますよ」

行政とチームを組んで環境保全を実践する

 行動範囲の広い野生動物の調査は、個人で行うには限界があり、また安全に実施するために、グループで行われます。

 「岐阜大学や酪農学園大学といった大学のほか、行政の担当部局とともに、チームを組んで研究を行います。宇都宮大学と栃木県とは、野生動物の管理システムについて、共同研究を実施し、イノシシによる農作物被害のメカニズムを分析しました。日光のシカが何を食べているのか、胃の解剖を行ったこともあります。ちなみに、研究科には”狩り部”があって、学生の多くが狩猟の免許を取得済みです」

 外部の人たちとコミュニケーションを図る能力も求められます。

 「地域住民の方々に、自分の研究内容をわかりやすく話し、かつ理解してもらわなければいけません。実際、苦労する学生もいますが、このような経験を通じて、”森林がどのように維持されているのか””人間の産業と野生動物がどう関わっているのか”といったテーマも見えてくるのです」

 野生動物というと保護ばかりに目が行きがちですが、人間のために駆除しなければならないときもあります。「そのバランスを考え、実践していくのが、うちの研究室のテーマ。比較的新しい学術分野なので、学生にはどんどん応用の幅を広げて、積極的に研究してほしいですね」

東京農工大学大学院
農学研究院
梶光一教授
梶光一教授

北海道大学農学研究科林学専攻博士課程修了。
北海道環境科学研究センター自然環境部野生動物科長、
同自然環境保全科長などを経て、現職。
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