第14回
「脳トレ」すれば頭はよくなる?
  

「脳トレ」は効果なし!?本能と心が脳を育てる

先日、電車で携帯ゲーム機に熱中している熟年の男性が私の前に立ちました。

何とはなしに画面が目に入ってきたのですが、どうやらそれは、いわゆる「脳トレ」ゲームのようでした。わき目もふらず画面を見つめている男性の集中力は高く、脳の活性化は、高齢者にとって関心の高い事柄なんだなということを、あらためて感じました。

「脳を鍛える」と聞いた時、みなさんは何を思い浮かべますか?計算やクイズなどをこなすような、「脳トレ」をイメージする人は、多いのではないでしょうか。

「脳トレ」がブームとなって久しいですが、このベースとなっている考え方は、「脳を使って頭を活性化させれば、脳の機能も高まる」というものです。頭を使ったときに脳の血流が増える、という実験結果も確かにあります。

しかし、この考え方は、実は誤りです。

計算をしたりクイズを解いたりを繰り返したところで、脳の機能は高まりません。脳の血流は、体のどこかをつねるだけで増えることもあり、血流が増えたからと言って、脳が優れた働きをしているというわけではないのです。

では、我が子の「脳を鍛える」ためには、いったいどうすればいいのでしょうか。

医学的な観点から結論を言うならば、脳の機能だけを単独で鍛えることは不可能です。なぜなら、思考し、理解し、記憶するというような脳の活動は、人の〝本能.や〝心.と不可分だからです。

好奇心や探究心の強さが頭のよさにつながる

記憶力や理解力など脳の機能を育て、高いパフォーマンスを引き出すためには、本能を磨き、よい心を育むことが必要となってきます。

ひとつ例を挙げましょう。

みなさんが今まで出会った、優秀な人を思い浮かべてみてください。その誰しもが、好奇心旺盛ではなかったでしょうか? 常に新しい情報を取り入れ、実践しているような方が多かったのではないかと思います。

好奇心が強い人には頭がいい人が多い、ということは、脳科学的に説明できることです。

脳にはいくつかの本能がありますが、中でも基本的なものに、「生きたい」「知りたい」という本能があります。これは脳神経細胞由来のものであり、探究心や好奇心という心の働きを生み出すもととなります。

好奇心が強いと、脳は入ってくるさまざまな情報に対して、「好きだ」「興味がある」というポジティブなレッテルを貼ります。ポジティブなレッテルが貼られた情報を、脳はしっかり理解し、深く考え、覚えようとします。逆に、興味がないのにやらされているというような場合にはネガティブなレッテルを貼り、その情報に対する理解力も思考力は落ちてしまいます。

つまり、「生きたい」「知りたい」という本能に沿い、何事にも好奇心や探究心を持って取り組めれば、脳の機能は自然と高まり、頭がよくなるというわけです。

将来まで視野に入れて脳を育てる意識を

かわいいわが子の才能を伸ばしてやりたいのはどの親も同じ。そのために脳科学が貢献できるところは多いと、私は確信しています。

ただし、私がアドバイスする「脳の鍛え方」の目的は、「勉強ができる子にする」だけではありません。

いくら幼いうちから難しい計算ができたり、英語が話せたりするからといって、それは頭のよさとイコールではありませんね。受験や勉強だけではなく、もっと先を見据えて脳を鍛え、育むこと。これが、子どもの人生を考える上で必要です。

そして前述の通り、脳を育てるにはよい心をも、併せて育てる必要があります。好奇心に加え、友情や愛情、感動すること、貢献心など、ポジティブな心の大切さを常に伝えてあげることで、頭もどんどんよくなっていきます。そして何より、社会に出た時に、自分の才能を十分に発揮し、人間関係を上手く築ける、人間としての魅力ある存在になることができるでしょう。

子どもの脳を育む目的は、あくまで将来の幸せを掴む力をつけるため。それを忘れてはいけません。

林 成之
1939年富山県生まれ。日本大学医学部卒。マイアミ大学の脳神経外科などに留学し、93年に日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター部長に。2006年に日本大学の教授へ就任。 脳低温療法など世界的な発見で知られる脳科学の第一人者。 著書に『勝負脳の鍛え方』(講談社)などがある。
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