中学、高校を通じて少林寺拳法の部活動に励んだ関東学院高校3 年の河野里沙さん。部長を務め、神奈川県高校総体で優勝の栄冠にも輝きました。学園生活で育んだ自主性と思いやりで、次なるステップを目指します。


女子の先輩の演武に憧れて厳しい修練の日々へ

1 全国大会に出場したときのゼッケン。里沙さんの一番の宝物。
2 県大会で優勝をしたときの賞状。決まった瞬間は実感がなく、後からじわじわとうれしさが込み上げてきたとか。
3 練習は月曜~土曜日。月曜日は毎回、少林寺拳法の先生から、講話を聞く。
4 顧問の藤田英彦先生は「修練を通じて、自分に負けない心と他人を思いやる心を身につけてほしい」と願っているそう。

道衣に身を包み、板の間の練習場にひとり立つ女子高校生。凛とした空気が場に張りつめます。構えの姿勢に入った彼女は裂帛(れっぱく)の気合いで静寂を破り、演武を開始。力強く切れのある動きで、次々と繰り出される突き、蹴り、受け。気迫が熱とともに身体から放射されているようにさえ見えてきます。最後に手を合わせて、彼女は静かに演武を終えました。

昨年5月に開かれた、神奈川県高校総合体育大会の少林寺拳法女子単独演武で優勝した河野里沙さん。決して体格でほかに抜きん出たタイプではありません。それでも彼女の演武は、観る者を瞬時に圧倒して引き込むほどの迫力に満ちています。「凛々しい」という言葉がぴったりです。男女共学、中高一貫教育の関東学院に進学した里沙さんは、入学後まもなくの体験入部で少林寺拳法の魅力を発見したそう。「部活動は中高合同です。体験入部で、高校生の女子の先輩が行われた演武を見たときに、力強くてすごくかっこいいと感じました。私もああいう風になれたら……。そう考えて、入部を決めました」

先輩の演武への憧れから中学一年で少林寺拳法を始めたものの、練習の厳しさは里沙さんの予想をはるかに上回るものでした。裸足でのランニング、手のひらを握った状態の拳で行う拳立て伏せ、防具をつけた状態での組み手。同じところに繰り返し相手の突きを受けるうちに、防具をつけていてもあざができることもあるのだとか。

里沙さんが感じたのは、身体的な厳しさばかりではありませんでした。少林寺拳法部では、先生による技の指導以外は、上級生が下級生を指導する決まりがあります。部活動における礼儀や態度はもちろん、学内での行動や学業成績に対しても、先輩が指導の目を光らせます。

「試験の成績が悪くて補習授業を受けることになると、先輩から注意されるため、部活も勉強も手を抜けません。入ったばかりの頃は、何が何だかわからず、目まぐるしく毎日が過ぎていく状態でした。それに、理不尽なことで叱られたという気持ちにもよくなっていました。けれど、自分の学年が進むにつれて、後輩のためを思ってあえて厳しい言葉を口にする先輩方の気持ちが、わかるようになりました」

先輩からのありがたい恩恵を後輩への思いやりに変えて

里沙さんは高校2年次に部長に選ばれて、後輩をよりよく導く責任の重さをさらに実感したそうです。

「中学生のうちは大会に入賞したり、できなかった技を習得できたときに喜びを感じていました。高校に進み、特に部長になってからは、後輩の上達にもうれしさを感じ、自分ももっと努力したいという気力を後輩からもらっているような気持ちになりました」

その言葉を穏やかな笑顔で聞いていた少林寺拳法部顧問の藤田英彦先生が、次のように語ってくれました。

「自分のことよりも相手を優先させて考えられるだけの思いやりの精神を養うのが、少林寺拳法で修練を積む目的のひとつでもあります。そのためには、深く考えることが大事。たとえば、夏合宿の練習メニューに関して、部長以下、最上級生たちが私のもとへ相談に来ます。そのメニューの内容がどうであれ、もっとよく考えてみなさいと言って、差し戻しては持って来させることを繰り返します。腑に落ちるまで考え抜いてこそ、他者への思いやりも生まれるのではないでしょうか」

指導の名のもとに上級生が下級生を無闇に叱ったり、力づくで押さえつけて威張るだけの集団なら、里沙さんはずっと以前に部活動をやめていたかもしれません。後輩を指導する立場になるまで導いてくれた先輩たちからの恩恵が、彼女の心身の強さと思いやりを育んでいるようです。

「県大会で優勝してうれしかった以上に、その後に出場した全国大会は忘れられないものになりました。大会は香川県で行われたのですが、大学生になられた先輩お二人がわざわざ応援に来てくださったんです。私と同じ単独演武をやっていらっしゃった憧れの存在でしたから、本当にうれしくてありがたい気持ちでいっぱいでした」

1 河野さん一家が集合。お母さんの礼子さんは、初めて里沙さんの大会を見に行ったときのことを「娘の声が、耳にぽーんと入ってきて。すごい気合いを感じました」と語ってくれた。
2 お父さんの英浩さんも、中学時代に柔道をしており、里沙さんにも武道を勧めたそう。
3 高校2年生のときに取得した、漢字検定準1級の賞状。半年以上、毎日漢字の勉強をしていたとか。
4 全国大会が行われる、香川県の金剛禅総本山少林寺にて。先輩が応援に駆けつけてくれて、うれしかったそう。
5 中学時代から仲のよい友だちと。クラスでは、部活動の話などで盛り上がる。
6 高校1年生のときに家族旅行で訪れた沖縄での1枚。

また、少林寺拳法の上達以外の面でも、里沙さんは先輩からありがたい刺激を受けています。高校一年のときにひとつ上の先輩が漢字能力検定で準一級を取得したと聞き、自らも同級合格を目指して勉強を始めたのです。

「部活でも勉強でも目標としている先輩なので、私も挑戦してみようという気持ちになったんです。先輩は高一のときに一回目の受験で合格されたそうですが、私は何度も不合格になってしまいました。それでも、先輩に合格の報告をしたいと思い、準一級取得までがんばりました」

自ら目標を立てて、ゴールに向かって邁進するまでに成長した里沙さんについて、父親の英浩さんは中学受験時を振り返りながら話してくれました。「小学生で中学受験の勉強を始めたときは、親に言われて渋々だったと思います。私自身が中高一貫校に通った経験があるので、六年間かけて、勉強や部活動にじっくり取り組み、切磋琢磨しあえる真の友人関係を築いてほしくて、受験を勧めました。武道を勧めたのも私の経験によるものです。自主性や、自らの行動に責任を持てるようになったのは、学校と部活動のおかげだと感謝しています」

ひとりっ子の里沙さんの一番の相談相手であり、ときにはけんか相手ともなってきた母親の礼子さんも、里沙さんの予想以上の成長を喜びます。

「中学一年のときに玄関の履き物をきちんとそろえているのを見たときに、心の成長を感じました。あとから聞いたのですが、少林寺拳法には、自分の足元を顧みて礼節を学ぶ『脚下照顧』という教えがあるそうです。部活を始めたばかりの頃は、体にあざを作って帰宅するので心配しましたが、そういうことがあって以来、本人の成長の跡だと考えるようにしています」

米国での同時多発テロをきっかけに国際情勢に関心を持ったという里沙さん。大学では、発展途上国における教育の普及や学校設立など、国際協力の分野を学びたいとのことです。

「具体的な進路については、大学進学後に勉強をして、見きわめていくつもりです。少林寺拳法は、大学でも絶対に続けます」

きっぱりと「少林寺拳法に出会わなかったら、今の私はない」と言い切る里沙さん。中高を通じて打ち込んだ部活動によって鍛えた精神力は、彼女を待ち受ける幾多の人生の困難を乗り越えるのにきっと役立つことでしょう。

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