もう一歩、突き抜けられない

 同級生の中でも落ち着いていて、大人っぽいところがあるという祥吾くん。「話す内容も筋が通っていて、わがままを言ったりいたずらをして親を困らせたりということもないまじめな子ですね。受験に関しても、私と息子の意見が衝突することはあまりなかったです」と母の林志保さんは話します。
 しかし、林さんには一つ懸念がありました。それは塾の先生に言われた言葉です。成績が悪いときに、闘争心をむき出しにするタイプではないので、塾の先生からは「もう少しガッツがあるといいね」と言われることがあったと言います。6年生になって、「スランプというほどではないけれど、算数の点が取れないな」と思い、先生に相談したときです。「第一志望だった開成中学校のコースに入った頃でした。『開成受験者の知識レベルの差はほとんどない。超難関だから、最後は粘りとガッツで問題を解いた人が合格する』と。息子は決して悪い成績ではないし、やるべきこともきちんとやっているのを知っていたのですが、『あと一歩のところで突き抜けられない』という感じでした。もう少しがんばれたら……という期待もありましたが、『これも性格なのだから』とも思っていました」家庭学習も、本人が一週間の計画を立て、それをきちんとこなしていったと言います。「勉強する姿勢ができていたので、私はノータッチでした」
 そんな林さんが一番心配だったのは、祥吾くんの体調管理と勉強時間の確保でした。一週間ぎっしりと塾のスケジュールに合わせた生活で、「一日休むと取り返せないから」と、かなり気を遣ったと言います。「体が大きくて二次性徴の真っ只中だったせいかもしれませんが、よく『眠い、眠い』と言っていました。息子は睡眠が足りなかったり、疲れが溜まったりすると頭痛が起きるんです。寝れば治るので本当はもっと寝かせてあげたかったですね。かわいそうだけど『入試が終わればたくさん寝られるよ』と励ましました。塾からの帰宅も遅くて、寝るのが夜12時近くになることもあり、睡眠時間の確保は真剣に悩みました」

第一志望は不合格「でも悔いはない」

 6年生の6月の模試での開成の合格率は80%だったものの、7月には35%と大きくダウン。その結果もあって、夏休みは必死に勉強したそうです。「四教科とも悪く、弱点がわかりにくかったのですが、計算ミスや社会での漢字の間違いといったケアレスミスが発見できて、意識も変わったようです」
 二学期以降は、成績も伸びて開成の合格率も50~60%台と安定してきました。しかし、緊張しやすい本人の性格を考え、念のため、併願校は6校。受験校の手続きやスケジュール調整も大変だったので、間違いのないようにと林さんは11月に「受験ノート」を作成。1冊ですべてわかるように、学校別に受験校の住所や連絡先、手続きのスケジュールや、願書に使う写真のサイズ、願書の提出日や受験料の振込期日など、必要事項をすべて書き出しました。「写真も10月には撮り、願書も学校説明会で揃えるなど、できることは早くやり、後であわてないように準備しました。願書は不備がないか夫に最終確認してもらい、遠方の学校の願書は書留で郵送するなど細心の注意をしました」
 12月になると「いよいよだね」という緊張した空気が漂い始めた林家でしたが、極力、祥吾くんがリラックスできるような言葉がけを意識したと言います。「受験生だからといって、腫れ物に触るように扱われるのは嫌がるタイプだったので、あまり深刻になり過ぎないようにしました。テストで『できなかった~』と悔しそうにしているときは、明るい口調で『本当だ、これは落ちるね~』と言うと、本人も笑って『だよね~』みたいな(笑)。『こんな問題もできないの!』と言いたい気持ちもあったけど、息子はそれで奮い立つタイプではないですから」
 1月に受けた3校はすべて合格。自信もつき、最高のコンディションで迎えた、2月1日の開成の入試。しかし、本人の手応えは「五分五分」だったとか。「そんなどっちつかずの状態で、結果がわからないまま2日、3日と試験を受け続けるのは、息子にはかなり重荷だったようです。3日の海城中学校では『気がそぞろになって、あまりできなかった』と言っていました。そこへ開成が不合格だとわかり、本人も相当こたえていましたし、私もその日はあまり眠れませんでした」4日には海城の合格がわかり、ほっとしたという林さん。第一志望校は残念でしたが、祥吾くんは「やれることはやって全力でぶつかったので、悔いはない」と、晴れ晴れとした表情だったそうです。その表情を見て、人からは「ガッツが足りない」ように見えるのかもしれないけれど、息子なりに自分の壁を越えていたのだなと感じたと言います。
 現在、学校が楽しくてしょうがないという祥吾くんを見て、良い経験ができたとしみじみ実感しているそうです。

サイトマップ
人気記事ランキング
01 特集
そのひと言が子どもを変える! 学力を伸ばすほめ方・励まし方
02 スペシャルウィーク
9歳までに身につけたい国語力
03 子育てに効く脳科学のお話
頭をよくする方法はある?

サイト内検索
 

RSS登録
これまでの特集記事



気になる記事ピックアップ
これまでに公開された記事の中から気になる記事をランダムでピックアップし、表示しています。