夏にがんばっても偏差値が下がる場合も
「受験生として道具が揃った時期」と表現するのは、四谷大塚の宮下浩一先生です。「子どもたちは、中学入試で問われる全範囲を学び切るべく、これまでとにかく塾から与えられた課題をこなしてきました。そして夏休みで、もう一度全範囲をひととおり復習し、夏休み明けの9・10月になって初めて、受験生として中学入試に挑むことができる勉強を終えたと言えるのです」 夏休み明けにまず親に求められるのは、わが子のがんばりをほめること。「40日弱ある夏休み期間に、30日くらいは塾に通って勉強したわけですから、そこはちゃんとほめてあげましょう。それと同時に"わが子だけでなく、ほかの子たちもがんばった"という認識を親は持つべきです。受験生本人は夏休みにがんばったつもりなのだけれど、周りも同等、もしくはそれ以上にがんばっているものです。夏休み明けの模試で、相対的な結果として、偏差値が下がってしまうことも多いのです。すると"こんなにがんばっても結果が出ないのか"と、子どもがやる気をなくし、さらに成績が低下するという負のスパイラルに陥ります」 それを避ける意味でも、夏のがんばりをほめることが大切。ここで諦めない気持ちを持つことがカギなのです。「夏休み明けの成績は、横ばいで御の字。夏の学習の成果は10・11月に出てくることが多いので、焦らないように」 入試の全範囲を学び終えたということで、過去問にも取りかかります。「夏休みの授業から、塾では部分的に過去問を扱っています。過去問をやるにあたっては、四谷大塚の『過去問データベース』などを利用して、入試本番と同じサイズの解答用紙を使って行うのがおすすめです。解答欄が本番と同じ大きさになることで、求められる記述量のボリュームを確認できます」 また、過去問専用の復習ノートをつくることも大切です。「間違えた問題をコピーして貼り、どこで間違えたのかをまとめておくノートです。この時期からつくり始めれば、過去問をすべて終えて1月を迎える頃には自分専用の参考書が完成します。〝赤字で間違えた理由を記入する"など、復習しやすくなる書き方を親がアドバイスするといいでしょう」 家庭学習のスタイルが変わってくるのも、夏休み明けの9・10月から。「これまでは、塾から与えられた課題をひたすらこなせばよかったのですが、9・10月は、自分の苦手な分野や抜けている知識を自ら発見して克服する作業を家庭学習で行わねばなりません。受験生一人ひとりで重点的に学習すべき部分が異なるので、何をやったらいいのかわからない場合、早めに塾に相談してほしいですね」 10・11月の模試の結果を受けて、受験校についても塾と相談が始まります。この時期で重要なのは、「親の理想と現実のギャップを素直に塾に伝えること」だと宮下先生。「第一志望校を変える必要はないですが、親の中ではそろそろ第一志望校以外に、併願校の研究をきちんと行っておく時期です。ただそれは、親の心の中だけにとどめて、子どもに伝える必要はないでしょう。やる気を削いだり、気を緩めてしまう場合もありますから」

諸々が固まってきて家庭学習は過去問中心
入試の全出題範囲の復習を夏休みに終え、2か月が経過。「自分に何が足りないのか、どんな問題ができて、どんな問題が苦手なのか、どの辺の学校まで手が届きそうか、といったことが見えてきます。12月ほどではありませんが、焦りのようなものを感じ始める子もいますし、一方で〝まだまだ受験は先の話.とのんびりしている子も少なくありません」と宮下先生。 そんな時期は意図的に、親が子どもと逆の態度をとることが大事だそう。「子どもが焦っているようなら、親は少し肩の力を抜くように導いてやります。子どもの気が緩んでいるようなら、受験が目前に迫ってきていることを伝えます。感情的にならないように意識して、”今までやってきたことをムダにしないように、もう少しがんばってみよう!”などと、前向きな姿勢で子どもと接してください」 ただし、内心では焦りを感じているものの、それを表に出さない子どももいるので注意が必要です。「そうした子に、”まだのんびりしているのかな”と考えて、ハッパをかけたりすると逆効果。焦りを表に出さない子どもは、親から声をかけられても反応が薄い傾向にあるので、その辺りから察してあげるといいでしょう。また、11月は子どものストレスがピークに達し、精神的に不安定になることもありますが、その場合も同様に、周囲の言葉に対する反応が弱くなります。いずれにしても、”大丈夫?”程度の言葉でかまわないので、定期的に声をかけ、子どもをきちんと見ているということを伝えるといいでしょう」 家庭学習でたくさんの量の過去問に取り組むのもこの時期大切なことです。「ただ漫然とこなすのではなく、”単純に覚えていないからできなかったのか、解法がわからなかったのか”といったことまで突き詰めて、同じ失敗を繰り返さないように心がけて解く時期です。親は、過去問のスケジュールの管理をサポートするといいでしょう。まとまった時間がとれないということもあって、必ずしも過去問は、受験当日さながらに1年ぶん4教科を一気に解くものと考えなくて結構です。ですから、”○月○日に△△中学の算数を解いて□点だった”といったことがひと目でわかる表をつくるなど、過去問に手をつけた状況がわかるようにして、手助けをします」 出願する学校を具体的に絞っていくのもこの時期です。「この時期、第一志望校は決まっていることがほとんどです。ただ、9~11月の模試で合格可能性が20%以下だった場合、諦めない気持ちを大切にして欲しいところではありますが、受験開始当初に決めた第一志望校を11月に変更するご家庭もなくはないです」 併願校もほとんどの家庭が決定していることが多いそうです。「ただ、親の理想併願パターンが、子どもの実力に沿っていないことがあります。たとえば、合格可能性50%未満の学校を3校併願するのは危険。ひとつは80%程度の学校に変更することをすすめます。合格可能性の高い学校を入れておくことで心に余裕ができますし、過去問で高得点を取ることでやる気も上がります。11月は併願校を見直すこともできる時期だと言えます」

すべての受験校が確定 現実が見え、焦る時期
12月はすべての受験校を確定させる時期、と松尾浩司先生。「受験全体のスケジュールを確定させるのは当然として、”2月1日校が残念な結果だった場合、大事をとって3日にダブル出願。2日校に合格したら3日はこちらを受験する"といったレベルまで、細かいシミュレーションをしておきましょう。すべての出願校に対してあらかじめ志望順位を家庭内で決定しておいてください。毎年締め切り直前まで手続きを迷うご家庭がありますが、入試が始まってからバタバタするのはよくありません」 その後は「出願」→「受験」→「発表」→「手続き」の段取りを確認しておきましょう。そのためには、受験校の願書を取り寄せて、合格発表日や手続きの締め切り日を確認しなければなりません。「学校によっては出願時に小学校の調査書などの提出を求められることもあります。”入試当日は上履き持参”といった持ち物に注意すべき学校もありますから、そういったところもチェックしておくべきです。合格発表の日程などは募集要項に載っていますから、それをもとに日程表をつくりましょう」 このように、いよいよ準備が具体的になってきて、子どもが焦りを感じ始める時期でもあると言います。「この時期、過去問の結果が合格点に達しない子も少なくないですからね。特に、親の意向の強い第一志望校を受ける場合、”どうせ合格は無理でしょ”といった諦めに近い状態になってしまう子も見受けられます。しっかりと信念を持ってお子さんの精神面を支えて欲しいですね」 反対に、親が勝手に諦めてしまうケースもあると言います。「子どもが挑戦したがっていても、模試の結果で、”どうせ受からないから第一志望校を変えよう"などと判断してしまうのです。2月1日受験校について、”可能性がほとんどないA校に出願するぐらいなら、合格できそうなB校を受けさせたい"といった、損得勘定のような気持ちが生じてしまうのです。合格可能性が低くても、諦めなければ、まだまだ入試本番まで子どもの学力は伸びますし、そもそも目標を失って子どもの心が折れてしまうこともあります。ここは親の踏ん張りどころ。第一志望校を変えるのではなく、併願校を調整しましょう。その場合も、早い段階で本人とよく話し合って、直前になってもめるようなことのないように」 そのほか、親の大きな役割はやはり子どもの生活面の管理です。「直前ということで、睡眠時間を削ってまで勉強をさせるご家庭も少なくありません。しかし、少なくとも7.8時間の睡眠を確保すべきで、夜更かしはおすすめしません。また、インフルエンザの予防接種は遅くとも12月中に受けましょう。手洗い・うがいの徹底も忘れないこと。予防接種を受けても、罹患することがありますから」 勉強面においては、あれもこれもと手を出すのは避け、過去問をしっかりクリアしておきましょう。「過去問は、直近の年度は12月中までにはやっておきたいもの。1月に手をつけると、結果が悪かったとき、自信喪失につながってしまいますから」

変わったことをせず 親は何事にも動じない
 埼玉や千葉の受験が始まり、早い子であれば1月上旬に合格を手にしている時期。「12月の時点で、1月校を受けないことにしていたご家庭が、周りが合格を確保するのを見て、あわてて出願するといったケースもあります。もし1月にお試し受験するのであれば、受かってもそうでなくても、その結果に振り回されないこと。1月校ですべて残念な結果になると、その後の試験全体に悪影響を及ぼすほどショックを受ける子もいます。そうしたタイプの子どもの場合、合格可能性の高い1月校を受験させ、とにかく合格を勝ち取り、心を落ち着かせるべきです」と松尾先生は話します。親の動揺が子どもに伝わり焦りを生むことも。「私は、お母さんたちに”演技をしてでも動じていないフリをしてください”と伝えています。また、”○○くんは、△△中学に受かったそうだよ”といった、ほかの家庭と比較するような話もプレッシャーとなるので避けたほうがよいでしょう。入試倍率などもチェックするのはいいとして、倍率が高くなったとか、楽になったとか騒がないこと。難しいかもしれませんが、最終的に、試験の合否という結果だけでなく、受験を通してわが子を成長させたいという心境に達すれば、親の焦りもやわらぐはずです」 子どもの生活面では、起床時間に工夫を加えるといいでしょう。「2週間くらい前から、第一志望校の試験日と同じ起床時間にします。そこから逆算して就寝時間を決め、夜更かしはしないように。朝起きたら、簡単な計算問題を数題解くなど、脳を動かす儀式を設定するのもおすすめです」 それ以外は、あまり変わったことはしないほうがいいと、松尾先生は続けます。「たとえば、本番のために服を新調するご家庭などもありますが、着慣れたもののほうがいいでしょう」 子どもの不安を軽減するために声をかけることは継続したいものです。「”1人しか合格しないわけじゃないよ” ”みんな不安なんだよ”といったことでかまいません。また、風邪をひくなど体調を崩しがちな時期ですが、万が一体調を崩しても、最近は保健室受験などもできますから、絶望的に考えないことも重要です」 家庭での学習は、復習ノートなどを見直しする作業程度にとどめます。「すべてを解き直すことが重要なのではなく、何をやってきたのか、自分の足跡を確認することが目的です。そうすれば、入試本番で、”この問題は何となく解いた記憶はあるけどできない”といったことが軽減できます。行き詰まるほどの難しいものに挑戦させるのではなく、車のアイドリングのように、思考を止めないことが大切です」 小学校や塾での過ごし方のポイントもお聞きしました。「小学校を休んでまで受験勉強に専念させるご家庭は少ないです。変わったことをしないという意味でも、また子どもの気分転換という意味でも、普段どおり通わせたほうがいいでしょう。親は演技をしてでも動じないフリをするべきという話をしましたが、どうしても不安で仕方がないときは、我々塾の講師に遠慮なく話しに来てください」

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