我が子へのまなざしを変えてみよう

すべての子どもにほめるところがある

 「私もほめ言葉をかけたいと思うんですが、うちの子にはあまりほめるところがないんです……」
 そんな悩みを抱える親は多いですが、今回話を聞いた3人の識者は「ほめるところがないのではなく、見つけていないだけ。どの子にも必ずほめるところがある!」と口を揃えます。「子どもの自立」をテーマに全国で講演活動を行っている高取しづか氏は、「今のお母さんは子どもをしっかり育てなくてはいけないという気負いがとても強い」と話します。「だから、子育てにすごく一生懸命。それは良いことなのですが、子どもに高いハードルを課しているようにも見えます。たとえば〝この年齢の子どもならできて当たり前のことだから、とりたててほめる必要はない”と考えていませんか? また、〝うちの子はできているところもあるが、それ以上にできないところが多過ぎるからほめられない”と考えている親も多いでしょう」(高取氏)
 その結果、ほめるよりも注意する方が圧倒的に多くなります。また、他人の子と自分の子を比べたり、他人の子育てと自分の子育てに優劣をつけてしまったり……。「親が抱く不安はよくわかりますが、子どもは何もできない状態で生まれてきて、食べる、立つ、歩く、話す、考える……と、たくさんのことが次々とできるようになったはずです。そして、今では親も解けないような難しい問題を解こうとがんばっています。そのすごさを再認識することで、子どもをほめる視点が持てるようになるのではないでしょうか」(高取氏)

医者が薬を出すようにほめ言葉をかける

 一方、筑波大学附属小学校の細水保宏先生は、ほめることの大切さについて、次のように語ります。「子どもが自分の力で社会のルールや勉強のポイントなどを理解することが理想です。でも、いきなり子どもにすべてを任せるのは荷が重過ぎます。まずは、親や教師が子どもの言動に注目し、良い行いをしたらほめる。そうすることで、子どもは〝これが正しい行いなんだ”と理解できます。ほめるという行為には、子どもの意欲をアップさせる意味もありますが、さまざまな言動を価値づけて、子どもを正しい方向へ導くという役割もあると思います」(細水先生)
 その考えの下、筑波大学附属小学校の授業や学校生活では、さまざまな工夫を行っています。「〝すごい”〝がんばったね”などの抽象的な言葉はあまり使いません。子どもが一時的に喜んだとしても、その後にどうしていいのかわからなくなる恐れがあるからです」(細水先生)
 細水先生は授業中、生徒一人ひとりの言動に気を配りながら、「なるほど、ここで図を描くなんて思いもよらなかった」など、具体的なほめ言葉をかけています。「そうすると周りの子どもたちも刺激を受けて図を描くようになります。〝図を描いた方がいい”というメッセージを具体的に伝えているから、子どもたちもすぐに行動に移せるのです」(細水先生)
 親に対しては、「医者になったつもりで、子どもをサポートしてほしい」とアドバイスします。「医者は患者の症状をに合った薬を出します。それと同じです。子どもに合う薬(ほめ言葉)をいろいろ与えてみましょう。もちろん親が出した薬がすぐに効くとは限らないし、効果が薄いかもしれない。そうしたら、別の薬を試せばいいのです」(細水先生)
 たとえば親が「夕方5時になったらノートを広げて勉強しよう」と声をかけ、子どもがその通りに勉強を始めたら「約束通りにできてえらい」とほめ言葉をかけます。「反対にできなかったときは〝残念だったね。じゃあ、10分後には勉強をスタートできるかな”など別の言葉をかけてみましょう。それでもだめなら、また違う『薬』を与えてください」(細水先生)
 子どもにほめ言葉をかけたのに言動に変化が見られないと、多くの親はイライラが募ります。「でも、それは子どもが悪いのではなく、親に問題があるわけでもありません。子どもとほめ言葉の相性が悪かっただけなんです。そのように考え、一歩引いたところから子どもを見るようになると冷静さを失わず、小さな変化に気づくこともできます。その結果、ほめるポイントがどんどん見つかることでしょう」(細水先生)
 しかし、中学受験では高学年になるほど模試やテストが多くなり、点数や偏差値などの結果が突きつけられる場面も増えてきます。テストの結果が悪いと親もほめる心境にはなりにくいものです。
 子どもに中学受験を経験させた高取氏、文化放送プロデューサーで中学受験をした多くの家庭に取材してきた清水克彦氏は「親が結果にこだわる気持ちはよくわかる」とした上で、やはり結果ではなくプロセスに目を向けてほしいと言います。「成績が悪くても、テストに向けて努力した過程をほめることはできるはず。それにより、子どもはやる気を取り戻すことでしょう」(高取氏)「多くの子どもにとって、中学受プレッシャーです。その緊張状態から、子どもの心をふっと軽くできるのは何よりも親のほめ言葉なのです」(清水氏)
 親は我が子の学力を最大限まで引き上げなくてはという思いから、叱咤激励の言葉をかけてしまいがちです。「でも、それでは子どもがさらにプレッシャーを感じてしまいます。〝いつも漢字練習をがんばっているね”〝その調子なら大丈夫だよ”といった、子どもが一息つけるような言葉を意識してみましょう」(清水氏)
 清水氏はこれまで難関中学に挑む多くの家庭を取材してきました。その中で、印象的なケースに出会ったことがあるそうです。「開成や桜蔭などのトップ校を目指して努力を続け、好成績をキープしていた子どもが、6年生の夏の終わり頃に突然、受験勉強をやめてしまうケースを何度か目にしてきました。おそらく彼・彼女は努力に努力を重ねてきたところで、さらにがんばらなくてはいけないという大きな不安がのし掛かり、緊張の糸がプッツリと切れてしまったのではないでしょうか。どの子も気が強く、しっかりしたタイプでしたが、心の中に不安を抱えていたのだと思います。そのことにいち早く気づき、励ましの言葉をかけてあげられるのは、やはり親しかいないでしょう」(清水氏)
 そして、塾のテストなどで思い通りの結果が得られなくても、「それまでのがんばりを具体的に評価してほしい」と続けます。「親の口から努力の先に成功があることを伝えてほしいですね。〝がんばっていれば神様はちゃんと見ている”〝勝利の女神は最後までがんばった人に微笑んでくれるものだよ”などと励ますのもいいと思います。そして、〝どんな結果が出ても、私たちはあなたの味方だよ”という言葉で安心感を与えることにより、受験生の学習意欲は高まることでしょう」(清水氏)

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