あなたが理系になったワケ
座談会
中学・高校が文理の分岐点になる!
――理系に進もうと思ったのはいつ頃ですか?
平木さん(以下、平木) 私は中学生の頃だったと思います。父が研究者で、仕事としてイメージしやすかったのかもしれないのですが、"将来は研究者になりたい"と思っていました。
得丸さん(以下、得丸) "理系"よりも、"研究者"が先だったの?
平木 そうなんです。小学生の頃から理科が好きでした。だから、研究するなら理科がいいかなと。でも、教科としては、理科だけではなく社会も好きだったので、その頃から理系に進もうと思っていたわけではないですね。
尾崎さん(以下、尾崎) 僕が理系に進もうと思ったのは、たぶん、高1の冬。たぶん……ってところがおかしいですよね(笑)。でも、はっきり覚えてなくて。僕は地方の公立高校に通っていたのですが、その学校では文理のコース分けがちょうどその時期なんです。そこで初めて、自分の将来について真剣に考えました。
後藤さん(以下、後藤) 僕も同じく地方の公立高校出身で、文理の選択時期も同じ頃でした。そのとき僕は理系を選んだのですが、うちの父も理系の研究者で、幼い頃から父を見てきましたし、その影響もあって、"進むなら理系かな"と物心ついた頃から思っていて。ただ、よくよく考えてみると、僕は国語が結構苦手で。何となく国語を避けたい……というのも正直ありました(笑)。
尾崎 僕は教科としては、特に得意不得意があったわけではなくて、文理を教科の好き嫌いとかで選んだという印象はないですね。ただ、将来を考えたとき、当時、僕は医者になろうと思っていたんです。僕の住んでいる地域は無医村で、医師になっていずれは地元に帰ろう……そんなことを考えていて、それで理系に進んだんです。
一同 おお! えらい!
得丸 私も中学生くらいから、何となく理系だろうなと意識していました。小学生の頃、毎週のように国立科学博物館に通っていたし、夏休みの自由研究も、いつも理科っぽいものをテーマにしたりして。
平木 自由研究はどんなことを?
得丸 川の上流、中流、下流の石を採取して、形や大きさを比べたり……。
後藤 それ、僕もやった(笑)!
得丸 今思うと、小学生の頃から理系に興味はあったのかもしれませんね。

高度かつ最先端の研究 目指したきっかけは?
――現在は、どんな分野を学んでいるのですか?
後藤 簡単に言うと、まず、地下深くに眠る石油や天然ガスを取り出す技術を研究しています。また、地球温暖化に影響があるとされる、二酸化炭素を地中に貯留する技術に関わる研究も行っています。つまり、地下環境の利用・開発に関する研究ですね。
得丸 私は、今は海底の堆積物を採取して、それ自体がどうやってできているかということを調べています。その堆積物には、レアメタルや白金など、産業に有用な金属が含まれていることがわかってきていて、それらが、いわゆる"海底資源"になる可能性があると言われているんです。最近よく報道されていることなので、皆さんも知っているかもしれません。それがどのようにできているのか、また、そうした海底資源の開発に必要となる、環境影響評価などに関わる研究を始めたところです。
尾崎 僕の研究内容は二本柱で、基本的には"モノづくり"です。ひとつの柱は磁性体、簡単に言えば磁石をつくること。もうひとつの柱は、物質の相転移について調べることです。相転移とは、モノそのものは変わらないけれど、条件によって状態が変わることを言います。一番わかりやすいのは水。液体である水は熱すれば水蒸気という気体になり、冷やせば氷という気体になりますよね。物質の固体においても状態が変わるものがあり、そういう材料をつくる研究をしています。その相転移する材料と、磁性材、つまり磁石を組み合わせ、湿度に応答する磁石だったり、光に応答する磁石だったり、そういうものをつくっています。
平木 私は、農学部で生物の研究をしています。生物のオスとメスの脳がどう違うのか、それが大きなテーマになっていますね。実験に使うのはメダカで、メダカのオスとメスの脳を取り出して比べ、どういうところが違うのかを研究しています。生物は、オスとメスでは行動が違うんです。その大元の要因は、やはり脳にあるのではないかと考えられていて、脳の違いを調べることで、生物の行動にどう影響をもたらしているかを調べています。
――その分野を学ぼうと思ったきっかけは何ですか?
平木 私の場合は、幼い頃から生き物にすごく興味があって。研究で何が一番やりたいかと言えば、生き物の体の仕組みについて調べることでした。それは理系に進みたいと思った中学の頃、大学に入って学部を選んだとき、そして今に至るまで、ずっと変わっていませんね。
得丸 私がこの分野に進むことを決めたのは、大学3年のときでした。最初は生物学に興味があって、本当は生物学科にいこうと思っていたんです。けれど、調べているうちに、地球自体に興味が出てきたというか(笑)。地球と生物は、互いに影響を与え合って進化してきたと言われています。その地球がどういう風に変化してきたのか、そういうことに興味が湧いて。
後藤 僕は、そもそも水不足問題に興味があったんです。近年、世界的に飲料水の不足が問題となっています。飲料水を地下水に依存していることは多いので、どこにどのくらいの地下水があるのかとか、どこにどのような井戸を掘ればいいのかとか、そういった内容に関わる研究をしたいと思っていました。学部の卒業論文も、そういったことをテーマにして書いたのですが、カンボジアなどの海外も含め、フィールドワークを続けるうちに、関連するほかの研究内容も学びたくなったんです。それが、今の研究につながっています。
尾崎 化学の分野に入ったのは、僕も大学3年のときです。化学は"モノづくり"そのもの。新しいモノを発見し、つくることで、それが世に出て、人々の生活を向上させるのが化学の本質であり、そのために日々努力を続けていますが、大学に入学して日々学ぶうちに、それがすごく楽しそうだなと思うようになりました。それが化学の道に入ったきっかけです。

理系はやっぱり大変? 研究生活とは
――大学、大学院の生活はどんなものですか?
後藤 研究室によって多少の違いはあると思いますが、大体は同じように過ごしているのではないでしょうか。
平木 私の研究室は、一応、午前10時からということになっているので、それに合わせて大学に行き、基本的には一日中、実験をしています。実験を重ねていいデータが取れるように、毎日コツコツがんばっていますね。帰りは、早くて19時くらい、遅いときは0時近くになることもあるかな。
尾崎 そういう点では、僕は結構長く研究室にいるタイプかもしれないですね。朝は同じく10時からですが、ほぼ毎日、帰るのは早くても23時30分頃。月曜から土曜までは、大体そんな生活です。
後藤 僕も外に出なければ、似たような毎日を過ごしています。ただ、僕の場合、平均するとですが、月に1~2回、国内外でのフィールドワークに出かけています。
得丸 それは私も同じ。私の場合、チームを組んで探査機を使って、海底の岩石などを採取しに行くので、私一人の都合というわけにはいかないのですが、年に1,2回は2~3週間ほどの調査に出かけます。帰ってきてからは、持ち帰ったデータの分析。これは大学以外の機関で分析機器を使わせてもらうことも多いので、その間、数か月とか半年くらいにわたって外の機関に通うこともあります。それが終わると、今度は大学でデスクワーク、という流れが多いですね。
後藤 細かく言えば一日の中にもルーティンはありますが、だいたいは1年とか、プロジェクトによっては、2~3年の期間を通して、そのプロジェクトの大きな流れに沿って、研究活動を進めるという感じですね。
――皆さん、忙しい研究生活を送っているようですが、研究以外の楽しみはありますか?
尾崎 学部のときは結構時間があって、サークル活動もしていました。
平木 実は、私たち全員、同じオーケストラサークルにいたんです。サークルには文系理系問わず部員がいましたが、文系の人たちに比べると、やはり実験などがあったりして忙しかったですね。でも、十分楽しめました!
後藤 大学院に進学してからは、サークル活動というよりも、個人でそれぞれ時間を見つけて、思い思いに楽しむという感じですね。僕は、時間に余裕があるときは、個人でオーケストラに参加したりしています。それがないときは、関東近郊に遊びにいくことが多いですね。週末、土曜か日曜、どちらかは研究室に行くこともありますが、どちらかは必ず休むようにしているんです。その休みを使って、筑波山に登ったり、長瀞に行ったり……。あ、この前は、武蔵野までビール工場の見学をしに行きました!
尾崎 それは、飲みに行っただけでしょう(笑)。
平木 でも私も、週末はきちんと休んで、山に登ったりしています。研究生活は大変だし、もちろん疲れることもあるけれど、"つらい"と思ったことは、不思議とないんです。週末でリフレッシュして、"またコツコツがんばるぞ!"。そういう気持ちになれます(笑)。
尾崎 僕は、最近ロードバイクを始めたんです。平日の夜中、研究室を出た後、都内を1時間くらい走ったりしています。リフレッシュと健康維持を兼ねて(笑)。
得丸 私も週末はお休みします。休日は、主に美術館や博物館巡りをしています。理系の先生の中には、哲学や経済など、専門外のことに詳しい方がとても多いんです。その影響もあって、私も研究以外の楽しみを見つけたいと思って、絵などを観に行くようになりました。今はすっかりはまってしまいましたね(笑)。

本質を知りたいのが理系の特徴
――理系の人ならではの特徴を教えてください。
後藤 うーん……。強いて言えば、"細かい"ことかな。たとえば、ピザを5等分に分けるときに、その角度にまでこだわるとか(笑)。
平木 何でもそのモノの仕組みを知りたがるという部分もないですか?
得丸 それは、合理的なこと、効率的なことを好むとも言えるのかもしれないですね。そのモノの仕組みを知りたいということは、見た目ではなく本質はどうなのかということを考えることで、結局、無駄なことが嫌いなんだと思うんです。
平木 自分もそうだと思う?
得丸 自分はそうじゃないと思っているから不思議(笑)。
尾崎 でも確かに、僕はコトの原因をやたら考えたりしますね。あまり自覚したことはないんですが、言われて気づくというか。「あれ? みんなはそういうこと考えないの?」と思うけれど(笑)。
平木 どんなことでも、仕組みがわかると、すごくうれしい気持ちになることがあります。
尾崎 サークル活動をしていたとき、僕はコントラバスを担当していて、一緒に組んでいたのが文系の同期だったのですが、彼はすごく感覚的でした。音を出すときも「こんな感じ」とかよく言っていたんです。でも僕は、実際に音を録音して、それを解析したことがあって(笑)。悪い音といい音を両方録音して、その波形を比べてみたりしたことも!
一同 (笑)
後藤 それはまさに理系ならでは、だね(笑)。
尾崎 そういう意味では、僕は漠然としたイメージだけで誰かに何かを伝える、ということをあまりしないですね。これは文系の人と違うところかもしれません。
平木 私もイメージだけで話すよりも、より具体的に言うように心がけているかな。
得丸 物事の本質が気になるのは、理系でも理学系と工学系ではまた違うかもしれないですね。理学はより本質に迫ろうとする……そういう学問ですから。そういう特徴が出てしまうのも無理はないのかも……(笑)。

それぞれの研究 描いている夢は?
――理系に進んでよかったと思うことは何ですか?
平木 やはり、自分の好きなことを、自分のテーマで研究できることでしょうか。好きなことを追究できるということは、とても大きいと思います。実は、私は数学が苦手で、数学の受験がつらいと感じたこともありましたが、目的があったからこそ、つらい勉強もクリアできたのだと思います。
尾崎 僕は、学びながら一つひとつ技術を身につけられることが、理系の魅力だと思っています。目の前に何か自分のやりたいことがあったときに、それを実行する力を着々と身につけていくことができるわけですから。
得丸 私も、自分の興味があることができている、というのが一番にあります。高校時代、私も数学が嫌いだったんですが、今は勉強してきてよかったと思います。自分の苦手な教科であっても、中高で、大学1、2年で理系の勉強をしてきたことが、違う分野の人と話をするときに役立っていると感じるので。
後藤 僕は、もし自分が理系でなかったら、大学院に進むという選択をしなかったと思うんです。大学院に行って初めて、"本当にやりたいこと"に出会えたことを考えると、今さらながら、理系に進学してよかったな、と思いますね。
――最後に、皆さんの夢を教えてください。
後藤 今、二酸化炭素を地中に貯留する技術に関する研究をしていますが、温暖化は喫緊の課題ですし、そういう技術を、形あるものにして世に送り出せたらいいなと思います。
平木 メダカの脳の研究を続けていくうえで、今着目している物質があり、もしかしたら人間の医療に役立つのではないかと思っています。ただ、その物質そのものの機能が、まだあまりわかっていないので、その解明にいち早くたどりつきたいですね。
得丸 私の夢は、もっと地球のことを知ること。地球は物質とエネルギーが循環して今の状態になっていると言われています。そういう物質やエネルギーの流れを解明する研究をしていきたいです。
尾崎 研究を続ける中で、自分の手で新しい物質を発見したり、つくり出せたら。今まで誰も見たことがないような性質を持った物質をつくり出したい……。それが僕の夢ですね。

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