先輩お母さんが語る 我が家の役割分担術

中学受験経験者である母がサポートを主導
今春、麻布中学校に合格を果たした塚田遊磨くんが中学受験を決めたのは小3の6月。母・佳美さんによると、全国統一小学生テストを受けたことがきっかけのひとつになったそう。
「もともと好奇心旺盛で学ぶことに抵抗がない子でしたから、よりよい環境のもとで可能性を伸ばすためにも、いずれは中学受験をと考えていました。まず、どのレベルにいるのかを確認しようとテストを受けさせたところ、それまで全く塾に通っていなかったのですが、意外に成績がよかったんです」
11月には四谷大塚に入塾。いよいよ受験生活が始まるという前に、塚田家では家族の役割分担がある程度、明確になっていました。「実は私は四谷大塚のテスト生でしたので、中学受験を経験しています。夫は中学受験をしていないので、子どものサポートに関しては私が主導権を持つようにしました。受験生活にはどういうことがあるのかを説明したうえで、この部分は私がするので、塾への送迎などの部分はサポートしてくださいというような話をしていました」特に気をつけたのは勉強面のサポート。父母で考え方が食い違って、子どもが混乱するのを避けるためです。
「人によって言うことがバラバラになってしまうと、一番困るのは本人だと考えました。スケジュール管理から採点、プリントの管理まで、徹底して私ひとりが担当するようになりました」
こうした話し合いを早い段階で持ったことが、その後に影響したのかもしれません。サポート全体の役割分担率は母が負うところが多いものの、夫婦間の意見のぶつかり合いもなく、塚田さん主導の受験生活はいたってスムーズだったようです。
「説明会に参加して願書を入手してくれたり、夫も積極的にこなしてくれました。特に土日に塾の送り迎えをしてくれたのは、その間に晩ごはんの用意ができるのでとても助かりました」

メンタル面のケアでは祖父母の役割が大きい
どうしても受験生中心に偏りがちな生活に、ほかの兄弟姉妹の不平や不満が募るという話はよく聞かれるもの。塚田家ではその点も問題なく、いつも通りに過ごすことができたそうです。
「妹も小4でしたから、兄の受験を理解してくれていました。たとえば、年明けから外出時は家族全員マスク着用にしていたのですが、文句を言ったりすることもなかったですね。それに妹は習い事をしていますので、レッスンの時間は"100%妹"、家に帰ったら"100%兄"とはっきり分けるようにしていました。そうすることで、どちらに対してもバランスよく接することができたと思います」
メンタル面のケアに関しては、塚田さんの実両親の存在が非常に大きかったとのこと。その役割は、単なる息抜きやくつろぎを与えるというだけに留まらなかったようです。
「少しでも時間がとれたら、外に連れ出してくれました。受験のことをよく理解してくれていたので、そのときは勉強の話は一切なし。本人の行きたいところに連れて行ってくれたり、食事に行ったり、思う存分、遊ぶことだけに徹してくれていました。今思えば、同居していない祖父母なので、家という現実から離れられたことが一番よかったのではないでしょうか」
成績は上位のクラスでほぼ安定して、マイペースに勉強を進めていたという遊磨くん。でも、祖父母の前では弱気な本音をポロリと明かすこともあったとか。
「自分から頻繁に電話もかけていたんですよ。ほとんどは今日、学校でこんなことがあったとか、他愛もない話でしたが、ときには『ちょっと成績落ちちゃったんだ』なんて、気にしていることをこぼしていたみたいです。私にも夫にも言いづらいようなことでも、祖父母には言えたんでしょうね。後から耳に入ってくることもありましたが、それを問いつめたりしないよう心がけていました」
また、日常的な世代間交流は生活体験を豊かにしたり、語彙を増やすなど、子どもの成長によい効果を及ぼすとも言われています。
「昔のことをよく知っているんですよ。たとえば、二層式の洗濯機や氷を使った冷蔵庫、カラーテレビが初めて家に来たときの話なども祖父母からいろいろと教えてもらっているみたいです」
受験生活を振り返り、改めて祖父母が果たしてくれた役割の大きさを感じているという塚田さん。これから受験を迎える人たちに向けても、次のようなアドバイスを送ってくれました。
「受験期間中の家族の役割分担というと、学習面ばかり考えてしまいがちですが、メンタルケアをしてくれる人やそういう場が大切になると思います。ぜひ、子どもが息抜きできるような環境づくりをしてあげてください」



夫は論理的に説得するのがコツ
自身が私立中高一貫校の元教員で、一貫教育のよさを理解していたことから、受験をすすめたという川端実花さん。「家族がみんな協力的で助かった」と受験期を振り返ります。
川端家にとっての受験のヤマ場は、小6の秋に訪れました。受験生の駿吾くんが、10月に膝を脱臼……。靱帯損傷と骨折で1か月、塾も学校も休むことを余儀なくされたのです。
「今までの生活リズムが一変しました。退院した後も生活は不自由で、家族の手を借りないとお風呂にも満足に入れません。勉強面の遅れもあり、精神的にも大変な時期でしたね。これを乗り越えられたのは、家族のサポートがあってこそだと思います」
川端家では、明確に分担を指示するようなことはなかったと言います。
「私が大変なときに声を上げ、お手伝いをお願いしていく中で、自然に役割が決まった感じですね」
勉強面で川端さんが担当したのは、主にスケジューリングやプリント類の管理です。
「私が国語の教員だったこともあり、国語の勉強は私が見ていましたが、そのほかは、休日を利用して夫が教えてくれました」
そのほかで、夫に対し最も感謝しているのは、塾まで迎えに行ってくれたことだそう。
「足の怪我以来、塾には車で送り迎えしていましたが、下の子の世話などで私がどうしても忙しいときには、あらかじめ夫に迎えを頼みました。夫はそれに合わせて仕事を早めに切り上げてくれました。このおかげで得られた1時間は、とても貴重でしたね」
とは言え夫も忙しい身。お願いする際には、少々気を配ったと言います。
「まず明日は何時に帰れそうかをそれとなく聞いて、大丈夫そうな気配があるときに切り出すようにしていました。どうしてもお願いしたいときは、『今日は○○があって○○だから迎えに行けない』と論理的に説明することを心がけました。男性は論理的に説明するほうが理解してくれますよ」
情報収集は、自らが担当。説明会などに行く際には、同居している実両親に妹の面倒を見てくれるようお願いしました。
「自分の体はひとつしかありません。実務的なことは特に、全部自分でやるのは難しいことを家族に伝え、相手ができる範囲でお願いするのは、大切なことだと思います」

家族全員で協力して健康管理を行う
家族全員で協力して健康管理を行う メンタル面において、川端家の母の役割は「怒り役」だったそうです。
「息子はのんびり屋で、ミスしてもあまり落ち込まない性格でしたので、ときには喝を入れる必要がありました」
川端家の日常は、まず母が怒ると、祖父母が間に入ってとりなします。一端はそこで収まるも、母は、怒った内容を父に報告。父は男ふたりで、本人にそれを諭します。
「祖父母という逃げ場がありましたから、私は遠慮なく怒れました。最後に夫から静かに諭されることで、本人の態度が改まることが多かったです」
ただし、直前期には「怒り役」は廃業。何があっても「これなら大丈夫」と常に笑顔で接するように心がけたと言います。
川端さんが最も力を入れていたのが、健康管理です。
「同居している私の母が病気をして抵抗力が落ちていたこともあり、家族の誰かが風邪など引かないよう常に意識していました。空気清浄機を買い、私の指示でうがい、手洗いを徹底。家族全員にマスクを着けさせ、人ごみにはできるだけ行かないようにお願いして、家に菌を持ち込ませないため、帰ったらすぐに着替えてもらうことを約束しました。食事でも毎日ビタミンCが摂れるよう献立を工夫しました」
これだけ徹底したのは、「家族の健康を守るのは母の使命」という責任感があるためです。
「病気は、家族全員で対策をしないと防ぎきれません。誰かひとりが体調を崩しただけで、受験に大きく響きます。我が家は、みんなよく協力してくれたおかげで、家族全員が健康なまま受験期を過ごせましたし、その習慣は今でも役に立っていると思います」
直前期、親の大事な役割のひとつに、受験や入学の手続きがあります。ミスが許されない部分もあり、時間が取られるところです。川端家では、これらすべてを母がひとりで担当しました。
「事務関係は、煩雑だからこそ、ひとりが担当したほうがいいですね。分担してしまうと、どこまでやってあるのかがあいまいになり、どうしてもごちゃごちゃしてしまうもの。志望動機なども、書き慣れた人がやるほうが短時間で済みます。結果的にひとりのほうが効率的だと思います。手が回らなければ、事務以外のことで家族を頼って、バランスを取るようにするといいでしょう」
母が家族の司令塔であるために必要なのは、「相手への気遣い」だと川端さんは考えています。
「まずは、家族の誰が何を得意として、どんなことなら厭わずにやってくれるかを考えます。そして、自分が苦手なことは思い切って任せ、一度お願いしたら、相手のやり方にいちいち口を挟まないこと。そうすると相手も責任感を持って担当してくれますからね。手伝ってもらった後のフォローも、忘れずにしっかり行うことが大切です。一番重要なのは、相手にきちんと感謝すること。手伝ってもらうのを、家族なんだから当たり前と思わずに、『ありがとう。助かったわ』と言葉にして感謝することです。また、自分だけでなく、子どもも喜んでいるよ、というところまで具体的に伝えると、家族はさらに喜んでサポートしてくれると思いますよ」


受験までの大きな流れを母が管理
平日はフルタイムで仕事をしている中台有紀さん。出勤時間は比較的ゆっくりとはいうものの、午前9時過ぎには出社し、帰宅時間は、夜の10時を過ぎることもあると言います。自身も日々忙しい生活の中で、中学受験を控えた子どもを抱え、家族はそれぞれどういう役割を担っていたのでしょうか。
「この受験期間中、私が担っていた最大の役割は、中学受験までの全体的なスケジュール管理です。受験の本番は小6の2月。そこがとりあえずの目標地点なので、そこにたどりつくためには、いつ、何をしたらいいのかということを逆算して、学校訪問のタイミングや資料の取り寄せ、志望校の決定など、大きな流れを私が中心になって管理していました」
そもそも、中学受験を決めたきっかけは、通っていた小学校の附属中学に向いていないかもしれない、と本人が言い出したこと。もともと附属中学に上がるためにも、勉強は必要だったことから、どちらに進んでもいいようにと準備をしてきましたが、エンジンがかかったのは、中学受験を決めた小6になる直前のことでした。
「ほかのお子さんよりも圧倒的に時間がないからこそ、俯瞰で見る全体的なスケジュール管理は必要だったと思います。ただ、時間がないとは言え、中学受験をした私の経験上、子どもの集中力が何か月も持続するとは思えなかったので、ラスト2か月に集中力が高まるよう、12月になったら巻きを入れていこう、ということは意識していたように思います」
中学受験生活において、母の大きな役割と思われる、生活面や健康面でのサポートについては、受験生だからといって特別なことはしなかったという中台さん。
「息子は、小6の11月まで学童保育に夜7時までお世話になっていて、それから自宅に戻り勉強するという生活をずっと続けてきていました。その生活が日々変わりなく送れるよう、生活面や健康面については、普段から気にかけていなければいけないことでもありましたし、私の場合、家族の体調が崩れると、自分の仕事にも支障が出てしまうので、その点はいつも気をつけるようにしていましたね」
それでも、受験本番直前に、家族ふたりがインエンザになってしまい、大変な思いをしたと言います。
「今年、インフルエンザの予防接種は、私以外は全員受けていたのですが、1月の最終週に夫と保育園に通う次男がインフルエンザにかかってしまって。とにかく、感染していない長男を隔離して、食事なども自分の部屋で、ひとりでとらせたり、タオルを分けたりと、何とか長男にうつらないようにしなければと必死でした(笑)。そういう意味では例年より気を遣っていたかもしれません」

乗り気でない夫をあえて巻き込んだ
そんな日々忙しい中台さんを支えたのは、夫の存在でした。
「夫自身、小学校や中学校の受験経験がなく、中学受験をするということに対して、最初はあまりよく思っていなかったのだと思います。ただ、長男自身が受験をしたいと言い出してからは、私があえて夫を巻き込むようにしました」
若干尻込みをしている様子の夫に、具体的な日時を指定して、「自分は行けないから代わりにお願い!」と、学校説明会などに行ってもらったりしているうちに、受験に関心を持つようになってきたと言います。
「我が家の場合、受験に関わる煩雑なあれこれをこなしていくためには、時間的にも物理的にも、夫の協力なくしては成り立たない状況でした。最初は少しでも受験に関心を寄せてくれたら……という気持ちでお願いしていましたが、実際に学校に行って、校長先生のお話などを聞いているうちに、学校そのものにすごく興味を持ったみたいです。それからは、逆に夫のほうが積極的に情報を集めてくれたりして、『うちの子にはこっちの学校のほうが向いている!』とか、そんな話を自分からしてくれるようになりました」
共働きの家庭ではあるものの、夫の仕事のほうが時間的な融通がきいたことも大きかったと言います。
「私は仕事で一定時間を拘束されていますので、思うようには動きづらい状況でした。一方夫は、比較的自由に動ける仕事でしたので、長男の学童保育、次男の保育園の送迎から、夕食の準備まで、細々としたところも手助けをしてくれたので、本当にありがたかったです」
また、こうした学童保育の送り迎えや入浴の時間などが、父と子の大切な時間だったとも。
「送迎やお風呂の時間に、ふたりでいろいろと話をしたみたいです。そういう意味で、メンタルのサポートは主に夫が担っていたように思います」
そして、受験生活が終わった今、がんばった長男はもちろん、家族にとても感謝していると言います。
「特に夫は、自分の考えもあったと思いますが、私の意志を理解したうえで、批判めいたことも言わず献身的に協力してくれました」
また、改めて受験を振り返って感じたことを話してくれました。
「夫婦間で子どもの教育に関して、いかに共有できているかが大切だと実感しています。受験という目先のことだけではなく、子どもをどういうふうに育てていきたいのか。そういう大きなところで考えを共有できていたので、できるほうができることをする、という協力体制が自然に敷かれていったんだと思います」
同じ考えを持つことで、夫のすることならどんなことでも信頼できたという中台さん。役割分担はそもそも"夫婦間の信頼のうえに成り立っている"と言えるのかもしれません。」

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