夫が納得するような根拠を考える

 パートナーを上手に受験や家事に巻き込んでいくのが、子育ての理想です。しかし、現実にはそう簡単にうまくはいきません。夫婦間で意見が対立し、不穏な空気が流れることもあるでしょう。そんなときは、どうやって対処するのがいいのでしょうか。「中学受験に臨む夫婦で意見が対立しやすいのは、何と言っても志望校選びです。妻が一生懸命に情報を集め、我が子に合う学校を幅広く選ぼうとするのに対して、夫が"受験する学校は第一志望だけでいい""偏差値〇〇以下の学校は受ける必要がない"などと主張して対立するケースが毎年必ずあります。そんなとき妻は本当に大変だと思いますが、それでも手を替え品を替え、説得を試みてほしいですね」(高杉先生)
 高根澤先生は、「夫の考えにも、夫なりの理由や根拠がある」と話します。「それを"子どもがかわいそう""精神的な負担を減らげたい"と感情に訴えるだけでを動かすことは難しいでしょう。が、説得力のある根拠を示す必要ます。たとえば、夫が"第一志望以外の学校は受けさせない"と言い合、子どもに過度のプレッシャーを与えてしまい、第一志望の入試本力を発揮できない恐れがあるのだということを論理立てて伝えるといいでしょう」(高根澤先生)
 また、夫が偏差験校を限定しているような場合さまざまな説得の方法があります。「"学校の偏差値は絶対的なものではなく、実際は調査によってバラつきがある""偏差くても、大学の進学実績がすばらしい学校は多い""偏差値的に余裕を持って入れる学校を選べば、入学後もが学内で成績上位のグループ、その方が伸びる可能性もある"など、話の持っていき方はいくらでもあります。いずれにしろ、塾の説明会や保護者会、または先生から教えてもらった情報をもとに具体的な説明をした方がうまくいくでしょう」(高杉先生)
 夫婦の意見が衝突した際には、原点に戻って子どもの気持ちを確かめたり、子どもの意見を尊重する姿勢を持つことも肝心です。「中学受験の主役は、あくまでも子どもです。夫婦の考えだけで志望校を決定しても、幸せな結果は得られないでしょう。とは言え、小学生の子どもが大人のように志望校を多方面から考えることは難しい。そのため、まずは夫婦で話し合い、その内容をもとに選択肢を用意し、子どもに選ばせるという手順を踏んではどうでしょうか」(高根澤先生)
 そして、子どもの意見を踏まえた上で、夫婦の方向性をすり合わせていくのです。「最終的には、子どもが自分で志望校を決めたと思えるような作戦を夫婦で考えられると理想的です」(高根澤先生)

子どもの前でケンカをしてもOK?

 夫婦の意見が何度も食い違うと互いにストレスがたまり、夫婦ゲンカが起こる可能性も高くなります。夫婦ゲンカに発展する前に、お互いに冷静になる方法はあるのでしょうか。柏木氏は「夫婦ゲンカで避けてほしいのは、ただの感情の爆発になってしまうこと」と話します。「お互いの感情がヒートアップし、肝心の問題点が置き去りになっては意味がありません。そうならないためには、相手に言い返したい気持ちになったときに、話し出す前に3つ数えるのがおすすめです。そうすることで、自分が言おうとしていることが、その場にふさわしいのか、建設的な内容なのか、少し冷静になって考えられるのではないでしょうか」(柏木氏)
 さらに、普段の会話でもお互いの考え方のスタイルを知り、補うようにすることがポイントです。「一般的に男性は論理的に考える、すぐに結論を出そうとするなどの特徴があります。一方女性は、感情的になりやすい、昔のことまで引っ張り出して話をするなどの傾向が見られます。その違いをしっかりと認識し、夫が妻の感情面を理解しようとする、妻は事実を整理して夫に伝えようとする。そんな気遣いができれば、ただの怒りの爆発ではなく、建設的な話し合いが少しずつ生まれるのではないでしょうか」(柏木氏)
 しかし、夫婦共に「できるだけ冷静に話し合いたい」と思っていても、やはり口論に発展することもあります。そんなときは、どうやって衝突を乗り越えるといいのでしょうか?「子育てに関する本や雑誌にはよく、『子どもの前で夫婦ゲンカを見せないようにしましょう』と書かれています。しかし私は、子どもの前で夫婦ゲンカをするのも一つの方法だと考えています。そもそもケンカや口論というのは、大人げなく怒りをあらわにしてまで自分の考えをわかってほしいと訴える"情熱の証"。意見がぶつかること自体は悪いことではないのです」(おおた氏)
 むしろ問題なのはケンカの仕方にあると、おおた氏は語ります。「仲直りするまでがケンカです。特に子どもの前で夫婦ゲンカをする際は、この点を肝に銘じてほしい。下に紹介した『上手なケンカの心得』を覚えておけば、意見の衝突を糧にして夫婦の絆をさらに強くすることができるはずです」(おおた氏)
 しかし、この3つの心得を十分に理解していても、夫婦の衝突がヒートアップする場合もあります。おおた氏はさらに「夫婦ゲンカでお互いが守るべき最低限のルール」も提案してくれました。「まず最初に犯人捜しをしない。感情的になると、どうしても"そもそもあなたがあんなことをするから……"などと責任の押しつけ合いになりがちです。それよりも目の前の問題の改善策だけを考えましょう」2つ目のポイントは、別の話を持ち出さないことです。「ケンカがエスカレートして、"あのときもそうだった"などと話題がどんどん変わっていくと、話がまとまらなくなります。これは女性に多く見られる特徴なので、注意してほしいと思います」さらに3つ目のポイントとして、勝手に土俵を降りないことがあげられます。「"もう知らない""勝手にすればいいでしょ"という台詞は控えるように心がけてみてください。一方がケンカの土俵を勝手に降りてしまうと、残された方は怒りの行き場がありません。ケンカを終わりにしたいのであれば、"とりあえず今日はおしまいにしよう"と、相手の同意を得てからにしましょう」(おおた氏)
 おおた氏は、「話の内容が堂々巡りを始めたら、一旦切り上げた方がいい」ともアドバイスします。「それは、ケンカの『終わらせどき』のサイン。お互い言いたいことは出尽くし、もうそれ以上はないという証拠です。その際、相手の言い分に納得したかどうかは、さほど重要な問題ではありません。それよりも、自分の言いたいことを全部吐き出せたかが肝心であり、夫婦ゲンカを終わらせる際の目安と言えるでしょう」(おおた氏)
 そして、最後のポイントとして、あいさつの大切さをあげます。「ケンカを終わらせたのであれば、その後はいつも通りの夫婦に戻ることが大切です。もちろん多少ぎくしゃくすると思いますが、そんなときこそ"おはよう""いってらっしゃい""ありがとう"など、基本のあいさつを心がけてみてください。それがないとお互いを無視したような状態になってしまい、正常な関係になかなか戻れません」(おおた氏)
 反対に、昨晩激しいケンカをした両親が、翌朝はいつも通りあいさつしている。そんな様子を見て、子どもは「なんだ、ケンカをしても大丈夫なんだ」「互いに信頼しているから、言いたいことを言い合えるんだ」と考えられるようになります。「やりっぱなしの夫婦ゲンカは、子どもを不安にさせます。しかし、『仲直りまでするケンカ』であれば、子どもを安心させ、人間関係への信頼感をアップさせることにもつながります」(おおた氏)

夫婦の協力が子どもの将来を豊かに

 子どもを中学に入れてからも、夫婦の子育てはまだまだ続いていきます。それでも、「生活面から学習面まで、あらゆることをサポートする」という状態からは、少しずつ変わっていきます。「子どもが大人に近づくにつれて、子育ての課題は、子どもの自立を促すことになっていくでしょう。加えて、夫婦もお互いに依存するのではなく、自立した生き方を考えることが必要だと思います」(柏木氏)
 ある調査によると、「中高年の夫婦のうち、お互いの関係を"相思相愛"だと感じているのは3割」という結果が出ています。「残りの7割は、どちらかが相手を愛せないのです。その中には、"本当は別れたいけれど、経済的に難しいからとか、世間体を気にして別れられない"といった妻の声が多く見られます」(柏木氏)
 これは長年、妻が家事も育児もすべて一人でこなし、夫は外で仕事というように、役割をはっきり分担してしまった夫婦に多いそうです。「おそらく、夫婦の役割分担をはっきり決めてしまうと、自分の役割をしっかり果たさなくてはいけないという責任感が強まり、自分のやっていることがとても大変なことだと感じるのではないでしょうか。その結果、相手への尊敬や感謝の気持ちが薄れるのだと考えられます。反対に、家事や育児について話し合い、上手に分担できている夫婦には、このような葛藤が生まれにくいようです」(柏木氏)
 さらに柏木氏は、夫婦が協力して家事や子育てに取り組む意義を、次のように語ります。「子どもが将来、人生のパートナーを選んだり、自分の家庭を築くとき、両親がどんな風に過ごしていたかは、少なからず影響を与えると思います。妻が夫に敬意を払い、夫が妻への協力を惜しまなければ、その子どもも同じような家庭を目指すのではないでしょうか。今、夫婦が互いに協力することは、我が子の将来を豊かにさせることにもつながると思います」(柏木氏)

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