3 "ほめる"ことでモチベーションを保つ

上辺だけのほめ言葉は子どもに信用されない
長い受験生活において、子どもの気持ちは常に一定ではありません。ときにはモチベーションが高まり、ときにはやる気を失う……。それを繰り返しながら勉強を重ねていくものです。ただ、やる気のない期間があまりにも続くと心配になるでしょう。
「確かにモチベーションが高いときは、子どもは自主的に勉強します。しかし、子どもの感情の浮き沈みにかかわらず、常にモチベーションを高くしようとばかり考えていると、親の方が疲れてしまいます。理想は、一定のモチベーションをずっと継続していくこと。子どものテンションを高く保ち続けるには、とにかくほめることが有効だと考えている人もいるでしょうが、実はそこに落とし穴があります。ほめること自体はプラスなのですが、ほめて相手をコントロールしようという意識でほめると、言葉がどうしても上辺だけになってしまいがち。子どもはそれを敏感に見抜き、気持ちが逆に冷めてしまいます」(菅原氏)
子どもは親の想像以上に親をよく観察しているというのは、小林氏も感じるそうです。
「小学校低学年の男の子が、母親の小言についてこんなことを言っていました。『ちゃんとやりなさい。ダメなんだから。なんて毎日のように言ってるけど、僕はお母さんの小言が始まると、別のことを考えて聞かないようにしてるんだ。だってどうせ本気で言ってないから聞いてもしょうがない』。これは、小言が自分のためを思ってではなく、ストレスのはけ口として吐き出されているのだとわかっているということです。これでは、いくら子どもの奮起を促そうとしても、モチベーションは落ちるばかり。また、親が怒り続けていると、子どもは委縮するだけです。『できないんならやめてしまえ!』などと強い口調で子どもを従わせては、勉強に対してネガティブな印象が植えつけられてしまいます。怒られるのが怖くて仕方なく勉強をやっている、と子どもが感じれば、自主性は身につかないでしょう」(小林氏)
モチベーションに大きく関わるほめ方や叱り方こそ、テクニックではなく本音で親の考えをきちんと伝える必要があると言えます。
では、具体的にモチベーションを保つためには、どのようなことを意識して子どもと接すればよいのでしょう。
「親はまず子どもの気持ちに共感することが大切。たとえテストで良い点を取っても、子どもが納得していなければ、ほめられてもうれしくないのです。子どもの気持ちを正確に汲み取るためには、好きな勉強の傾向や弱点を日頃からつかんでおくことが必要になります。そして、それを踏まえて子どもがどれだけ努力したかを判断し、子どもがほめてほしいときに、親もほめたくなるような関係が築ければ、モチベーションは自然に保てるでしょう。あとは、子どもを信頼すること。我が子を本心から信頼していれば、あなたはできる、大丈夫、といったポジティブな言葉が出てくるので、自然と子どもの心は安定するはずです」(菅原氏)
「表面だけのほめ方にならないために、子どもの学力の得意・不得意の一覧表をつくることをおすすめします。自分の可能な範囲で詳細に分析し、出来不出来だけではなく、好きか嫌いかなども含めて記載します。何もこれを子どもに見せるわけではありません。人間は、得意なことをほめられるとさらに自信がつくもの。得意や好きをほめて伸ばすために活用するといいでしょう。叱って奮起させるか、ほめて伸ばすか、という二者択一ではなく、叱るときには本気で叱り、子どもが何かを達成したときには一緒に喜び、ほめる。それらを併用することで、子どものモチベーションを高く保つことができるのです」(小林氏)


気持ちを上げるにはできたことや努力を評価
では、子どものモチベーションが下がってしまい、落ち込んだり、つらそうだったりした場合、親はどのように気持ちを立て直してあげるとよいでしょうか。
「子どもの気持ちをどうしても高めたいときには、第三者を通してほめることをおすすめします。塾の先生でも親戚でもいいのですが、子どもがちょっと照れるくらい大げさに『うちの子はがんばっていて、私はうれしいです!』などと言ってあげると、子どもは何だか誇らしげな気持ちになり、モチベーションも上がります」(小林氏)
また、モチベーションが落ちているときに、子どもに完璧を求めることはやめましょう。
「80点を取って喜んでいる子どもに対し、できなかった20点を叱る親御さんがいるのですが、自分の身に置き換えて考えてください。大人でも、たとえばダイエットして1kgやせた際に、『たった1kgしか減っていない』と言われるより『もう1kg減ったの!』と言われた方がモチベーションが上がるのではないでしょうか。経験的にも、子どもの気持ちを上げたいときは、できない部分を怒るよりも、やはり今あるもの、できている部分を評価し、前向きな声かけを行うしかないと思います」(福島校舎長)
もう一つ、親が意識しなければいけないのは、結果にこだわり過ぎないこと。中学受験の価値というのは、結果よりも努力の過程にあるはずです。その姿勢をどれだけ親が保てるかが、子どものやる気を左右する大きなポイントになりそうです。
「たとえ努力をしても、すぐに成績が上がることはほとんどありません。成果は2~3か月後に出てくるのが通常で、一生懸命勉強しても、結果が出ない時期は必ずあります。そんなときに『点数が悪い』と叱られると、子どものモチベーションは一気に下がり、ひいては自主性を失うことにもつながります。まずは勉強していること自体をしっかり評価してあげて、『結果が出たのはこういう努力をしてきたからだね。あれをやって良かったね』というようにほめるといいでしょう」(成瀬校舎長)

4 解法を教えるのではなく、子どもに考えさせる
最初は厳しめでもOK習慣化したら見守る 
家庭での時間の過ごし方も、主体性を持ってもらうためのポイントの一つです。我が子をどのようにサポートし、親がどこまでコントロールすべきかについては、誰もが一度は悩むところ。"自らやる子"にするためには、どうすればいいのでしょうか。
「まず知ってほしいのが、子どもは家と塾では"違う顔"をしているということです。塾には先生がいて、それなりに張りつめた環境で勉強をします。そして、家に帰って来れば気持ちがリラックスするもの。塾での緊張からようやく解放されたそんなときに、『ほかのことはお母さんがやるから、あなたはとにかく早く勉強しなさい』などと迫られては、子どもの心が休まる場がありません。大人だって、仕事が終わって家に帰ってみたら、別の上司が待っている、なんて状況は嫌でしょう? リラックスしたいときにガミガミ言ってしまうとストレスは溜まる一方です。家庭学習は、主体性が身につけば子どもの方から自然に始めます。受験勉強を始めたばかりの頃なら、家では最低限の勉強だけでいいと私は考えています。それよりも、子どもがのんびり過ごせる環境づくりに力を入れてほしいですね」(小林氏)
家庭学習にそこまで力を入れなくとも、主体的に勉強するようになれば、自然に家での学習時間も増えるというのは、菅原氏も同意見です。
「極端な話、自分で机に向かえる子であれば、勉強に関して家庭でできるサポートはほとんどないと思います。自主的に勉強してもらうためには、受験を始める段階で『家でも1時間くらいは勉強した方がいいかもね』と伝え、それが特別なことではないと思わせることが第一歩になります。親は塾の宿題などに関しては目を配り、家庭学習がそれなりに習慣化するまでは、きちんとチェックした方が良いでしょう」(菅原氏)
家庭学習のサポートも、やはり最初が肝心なよう。まずはある程度子どもを導きつつ、次第に習慣化していくというのが理想的です。
「小さな子どもが自ら机に向かって勝手に勉強するというのは、まずありえないと思っておいてください。親は最初は宿題などにつき合い、ほめることで家庭学習を習慣化していく必要があるでしょう。その際は、できるだけ自分で答えを出させること。次第に子どもに自信がついていきます。また、家では読み書き・計算など、やればできるようになるものを、当たり前の習慣にしてほしいですね。その習慣がつくまでは、比較的厳しく親がついてあげてほしいのですが、習慣化したら、後は基本的に塾任せで大丈夫です」(福島校舎長)
悩んでいる我が子を見ると、親はついつい自分なりに教えたくなるもの。しかしあまり手を出しすぎると、思わぬ弊害があるようです。
「家庭学習では、親が深入りしすぎない方が主体性につながると思います。生徒からよく『塾で習ったことと違うことを言われた』と聞きますが、これは大人の知識で問題を解く場合と小学生の知識で解く場合のアプローチが違うから。塾ではそのあたりのことも考慮し、その時点の材料を使って解く方法を教えています。家庭学習においては、親の仕事はあくまでサポート役と考え、勉強はプロに任せた方が無難です。まずは勉強しやすい環境を整えることに尽力し、具体的な学習内容にはあまり口出ししない方がいいでしょう」(成瀬校舎長)
「家庭のサポートでやってはいけないのは、親の方がムキになって、子どもが求めてもいないのにぴったり横について何かと口を挟むことです。それでは主体性どころか、自分でものを考えることすらできない子になってしまいます。普段から子どもがどういった内容を勉強しているのか、ある程度、把握しておくことは必要ですが、相談に乗るのは子どもから疑問や質問の声が出たときだけで十分です。まずは子どもがどう考えたのかを話させ、どこがわからないのかを一緒に考えてあげましょう。自ら話すうちに、子どもも問題の整理ができてきますし、自分で悩むことが主体性にもつながります」(菅原氏)



子どもに学習計画や目標を意識させる 
親のサポートとしてやってあげたいことの一つが、勉強のスケジュールを決めることです。もちろん、最初は親が導いてあげることが必要ですが、ここにも自主性を引き出すポイントがあります。
「スケジュールは、一緒に考えるという形をとるのが重要です。具体的には、まず親が"何をすべきか"をすべて書き出し、子どもにはそれをスケジュールに当てはめさせる、という流れです。そうすることで、子どもは自分で計画を立てたという意識になります。また、毎日の勉強時間を決めておいた上で、『次の目標は○○点にしよう。こことここができるようになるとその点数に届きそうだね』など、子どもと相談しながら具体的な目標を掲げると、だらだらせずに学習できます。子どもが怠けている際の催促も『時間だからやりなさい』ではなく『今日は何の勉強をする予定だっけ?』とそれとなく気づかせるような声かけをすると、やる気を損ねずに机に向かってくれるでしょう」(福島校舎長)
家庭においても、子どもに有効なのは、やはり"努力をほめる"ことです。しかしどうやら、ほめることよりも叱ることに目を向けがちな家庭が多いのかもしれません。
「学校や塾に『うちの子を調子に乗せないでほしい。もっと厳しくしてほしい』と電話をしてくる親が意外にたくさんいます。気持ちはわからないでもないですが、一生懸命やったことをほめないというのは、正直いかがなものかと思います」(小林氏)
「生徒には『お母さんの説教が長くて勉強できなかった』などという子もいますが、それでは本末転倒でしょう。叱るときは短期集中で叱り、次にどうすればいいのかという対策をしっかり練ることに時間を使わなければいけません。怒りで労力を消費せず、建設的な話し合いを行いましょう。納得すれば、子どもは自然に机に向かうはずです」(成瀬校舎長)



5 失敗を肯定し、そこから学ばせる
子どもに寄り添いつつ次につながる対策を 
いくら頭のいい子でも、常に完璧ではいられません。何度も失敗し、そこから学ぶことで学力は伸びていきます。
誰でも自分が失敗したと感じたら落ち込み、傷つくもの。我が子が悪い成績を取ってショックを受けているときに、親がその傷をさらにえぐるような言動を取ってしまっては、子どもがネガティブになる一方です。とても主体性は育めません。「子どもの失敗を責めてはいけないのは、きっと誰もがわかっていることでしょう。『私はそんなことはしない』と大半の方が思っているかもしれません。しかし、受験生活の中で、親はどうしても感情的になりがちです。知らず知らずのうちについ責めたり、叱ったりしてしまうお母さんも少なくありません。悪い成績を見たときなどは、つい『何でこんなにダメなの!?』と怒ってしまう人もいるはず。結果ばかりを追求され、できない部分を責められるのは大人だってつらく、責める人を好きにはなれませんよね。子どもも同じで、ミスばかり責められると当然親が嫌いになり、対立が生まれます。 そうなっては何もかもうまくいきません」(小林氏)
また、親が子どもの失敗の理由を、遺伝など別のものに転嫁することもよくありますが、それも子どもの主体性を削ぐ行為です。
「失敗に対し親が『私も文系だったから、できなくても仕方がない』などと、子どもの可能性を否定するような発言をしてはいけません。子どもが"どうせできないんだからやっても仕方がない"と思ってしまったら、もう自主的に勉強することはないでしょう」(小林氏)
そんな事態にならないためにも、親が意識しておいた方がいいことはいくつかありそうです。
「子どもが"がんばった"と内心思っているのにもかかわらず、親が成績だけを見てこのテストは失敗と判断し、叱るケースがありますが、これは主体性の芽を摘んでしまう最たる行動です。ずっと苦手だった分野の問題が一つ解けたとします。たとえその配点が1点でも、子どもにとっては大きな一歩であり、満点に匹敵する価値があるかもしれません。成績にかかわらず、がんばった部分に関しては必ず評価しましょう。また、いつもできているところができなかった場合も、子どもはショックを受けるものですが、そんなときは、できたところを無闇にほめるよりも、『こういうこともあるよ。でも次はきっと大丈夫』『一つくらい失敗しても問題ないよ』などと、子どもの心に寄り添う言葉をかけ、まずは安心させてあげることです」(菅原氏)
子どもの気持ちを立て直すことが大切である一方で、失敗を失敗のまま終わらせてしまっては学力は伸びていきません。失敗から学び、未来へとつなげていく必要があります。
「すんだことをグチグチと言っても子どものやる気が下がるだけです。子どもだって、自分の成績が振るわなかったことは、親に指摘されるまでもなく十分にわかっています。親は、成績を見たらまず、ここまではできている、ということを把握し、それを評価してあげてください。その上で『じゃあここを直せばもっと良くなるね』と冷静に話をしましょう。そして、同じ失敗をしないためにはどうしたらいいかは、子どもに考えさせること。反省も、次の一手を決めるのも、あくまで子どもを主役にしてほしいと思います」(福島校舎長)
失敗を糧として成長できるかは、受験の成否につながる大事なことですが、ときに親の"過保護"がそれを阻害してしまうと言います。
「何かうまくいかないことが子どもに起きた場合、過保護な親は、子どもが少しでも悩んでいると手を出さずにはいられず、すぐに解決策を提示してしまう傾向があります。それは結果的に、子どもが失敗と向き合い、そこから学ぶという時間を奪っていることにほかなりません。親はある程度、子どもに粘り強くやらせることが必要です。できる限り子どもに考えさせてあげてください」(小林氏)



叱るときは感情を抑え何が悪いか考えさせる 
努力した結果、成績が振るわなかった場合は責めてはいけませんが、中だるみや手抜きから成績が落ちた場合は、それを指摘する必要があります。
「自分で決めたことをサボったり、手を抜いたりしたことで失敗したなら、叱らなければいけません。そのときは、ただ悪いところを責めるのではなく、何が悪くて怒られたのか、次からはどうするかを自分の言葉でしっかり話させてほしいと思います。そうして自分 で結論を出させることが、次につながります」(福島校舎長)
子どもに対して嫌な話をするときには、一方的に通達するのではなく、心配りがある方が、子どもとの関係性を壊さずにすみます。
「私の場合、まずはいい話をたくさんしてから、最後に嫌な話を少しだけするように意識していました。こうしたことが子どもにどこまで届いたかはわかりませんが、少なくとも勉強嫌いになることはありませんでした」(小林氏)
手抜きによる失敗を叱る際、親はまず叱る内容をきちんと整理した上で、冷静に話す必要があります。それでも子どもが反発してしまうなら、塾の先生の力を借りるのも手です。
「いくら子どもに落ち度があっても、『サボったからダメだったんだよ。だから言ったじゃない』と、"それ見たことか"という指摘ではいけません。子どもに非を認めさせ、謝罪させること自体には意味はなく、それは親の自己満足でしかない。約束を守れなかったなら、なぜ守れなかったのか。どうしてサボってしまったのか。それを子どもにも考えさせることが大切です。怠けているからといって、いくら親が口酸っぱく『勉強しなさい』と言っても、モチベーションが落ちるだけでいいことはありません。子どもが怠けていると思ったら、第三者である塾などに相談し、"家庭ではテレビ30分"などの約束事をつくってもらうことをおすすめします。もしも子どもがそれを破ったら、先生の名前を出して注意すればいいのです。ときには第三者から言われる方が、子どもの心に届きやすいことがありますから、受験のプロである塾の先生にどんどん相談してほしいと思います」(成瀬校舎長)

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