夫婦のギャップを生かす発想がカギ!

 中学受験や子育てに関する著書を数多く執筆しているおおた氏は、「前提として、夫婦の考え方にギャップがあるのは健全な姿だと理解してほしい」と話します。「どんなに気の合う夫婦であっても、もとは生まれも育ちも違う他人同士。価値観がぴったり合うということは、まずあり得ないでしょう。ですから、夫婦のギャップを"埋める"というより〝生かす?という発想を持ってみてはどうでしょうか」おおた氏は、「子育てにおける父親と母親は電車のレールに例えて説明できる」と言います。「電車(子ども)を走らせるとき、レール(父親、母親)は2本あってこそ安定して走ることができます。そして、レールの幅は広い方が望ましい。夫婦の価値観にギャップがあれば、それだけたくさんの選択肢や手段を見せることができ、子どもの視野が広がるからです」(おおた氏)
 ただし、レールの幅が広がり過ぎたり、異なる方向に延びていくと、電車はしっかり進みません。 「それと同じで、子育てや受験の目的など、目指す方向はしっかりと話し合って決めるべきでしょう。その内容を紙に書くなどしておくと、夫婦の考えがすれ違ったときに役立つと思います。ただ、目的に向かうための細かい方法については、できるだけ柔軟に考えてみてください。個人的には、夫婦の意見が分かれたときは、自分のやり方に思い入れが強い方に一度任せてみるのが良いと思います」(おおた氏)
 柏木氏は、「母親自身が、家事や育児をすべて自分一人でやっている状況に疑問を持ってほしい」と語ります。「今は、子どもの受験や子育てに精一杯かもしれません。でも、80年近くある人生の中で、それはほんの一時。子どものことで忙しい状態は、50歳頃までにほぼ終わるでしょう。それから後の30年を自分はどう生きたいのか、夫婦関係はどうあってほしいのか、将来の展望を今からでも持つべきだと思うのです。そうすれば、自分の将来のために〝今、どんな努力をするべきなのか?を真剣に考えられるようになり、夫に働きかけるためのベストな方法が見えてくるでしょう。育児や家事の分担は、母親が楽になることだけが目的ではありません。むしろ、夫に家族の一員としての自覚を持ってもらうためにこそ必要なのではないでしょうか」(柏木氏)

父親のやり方を理解し尊重するのがポイント

では、どのようにして夫に家事や育児を頼むと、快く協力してくれるのでしょうか。おおた氏は、「母親たちにはまず、"夫は自分が望まないことをやる恐れがある""最初は自分の仕事が増えるかもしれない"という二つの点を覚悟してほしい」とアドバイスします。「やはり、夫には夫のやり方があり、それは妻のやり方と異なる場合がほとんどです。極端な例を挙げてみましょう。よちよち歩きの子どもが火に近づこうとしていると、多くの母親は火傷したときの子どもの気持ちが気になり、火から遠ざけようとする。しかし父親は、子どもが歩き出しても、しばらく見守る人が多い。そして、子どもが火に触れて泣きながら駆け寄って来たら、氷を与えて"火は熱いから気をつけよう"と、行動や結果の大切さに目を向けさせます」(おおた氏)
 この場合、母親は事故を未然に防ぐことを教え、父親は失敗から学ぶことの大切さを教えていると言えます。「どちらの方法が良い・悪いというのではなく、父親と母親のやり方が違うことが重要です。子どもへの接し方に幅が生まれ、子どもが育つ環境にも奥行きが生まれるのではないでしょうか」(おおた氏)
 おおた氏は、父親が我流の家事・育児をすることに関しては、「実害がない限りは放っておく方が良い」と続けます。「多くの夫は、自分で工夫しながら上達していきます。妻としては、夫の成長を促す言葉かけを意識してみてはどうでしょうか? 一番効果的な言葉は、妻からの『ありがとう』です。これは、妻自身が一番得をする"魔法の言葉"。夫に対して、繰り返し伝えてみてください。そのうちに妻のアンテナの精度がアップし、夫の小さな変化や成長を見逃さないようになります。夫もお礼を言われることで、"これをすると喜ばれるんだ"と気づくようになるでしょう」(おおた氏)
 このようにして夫が家事に関わることは、子どもの成長にもつながります。その好例を柏木氏が紹介してくれました。「3人の子どもがいる家庭で、夫は仕事が超多忙で家事をまったくせず、妻は仕事を持ちながら家事と育児のすべてを担当していました。あるとき、妻が仕事の都合で家事をせずに出勤したのを夫が非難したことをきっかけに、夫婦で家事の分担を徹底的に話し合ったのです」その結果、土日だけは夫が料理をすることになりました。「最初は、"これが料理なのか"というひどいものだったそうですが、妻はグッと我慢。そのうち、パエリアなどの凝った料理をつくるようになり、妻も子どもたちも"すごい、レストランみたい"と絶賛して喜びました。そのうちに夫は、冷蔵庫の残り物を上手に使って料理をするレベルにまで成長しました。そんな父親に影響を受けて、3人の子どもたちも週に1回ほど夕食づくりを担当するようになったそうです。夫婦が家事を分担することは、子どもの自主性を育む上でも大いに役立つことでしょう」(柏木氏)
 柏木氏は、これまでまったく家事や育児をしてこなかった夫に手伝ってもらう上で大切なのは、「妻が、自分のやり方が一番という思い込みを捨てること」とアドバイスします。「自分だって最初からベテランの主婦ではなかったのだから、夫が上手に家事や育児をこなせなくても非難や説教をしないよう、グッと堪えてほしいですね。また、ゴミ捨てのような簡単なことから頼んでみるなど、最初のハードルを下げることもポイントです」(柏木氏)

塾の説明会に参加してやる気になる夫も

 妻は、自分が得た新しい受験情報を夫が興味を持つように提示する工夫も大切です。「多くの夫は、偏差値や大学への進学実績など、数字のデータに興味を持ちます。また、データを客観的に分析することが得意な男性は多いものです。妻は受験に関するデータを揃えて、話し合いのツールにしてみてはどうでしょうか」(高杉先生)
 高根澤先生からは、「塾の説明会に夫を連れて来てほしい」というアドバイスが挙げられました。「妻から得た情報と塾の先生が話す内容を重ね合わせ、今の子どもたちを取り巻く教育環境に気づき、俄然真剣になる夫が多いからです。過去には、自分のやり方で子どもの勉強をサポートしてきた夫が、塾の説明会に参加してから、塾に連絡をとりながら学習方法を考えるようになった例もあります」(高根澤先生)
 高杉先生も、夫婦で協力して受験に臨むことの大切さを語ります。「これまでたくさんの家庭を見てきましたが、妻一人でがんばるよりも、夫が一緒になって受験にチャレンジする家庭の方が明らかに良い結果を生んでいます。母親は面倒だと思っても、父親を受験に巻き込むことをあきらめないでほしいですね」(高杉先生)
 まずは塾の送迎など、比較的簡単なことからお願いしてみるのが、一つの方法です。「父親と子どもの会話が増えるいい機会になるでしょう。父親の言葉は、母親が考えている以上に子どもの心に響くものです。父親が"最近がんばっているな""前回より成績が上がったな、すごいね"などと声をかけると、子どもは"お父さんも自分のことを見てくれている"とうれしくなり、やる気がアップするでしょう」(高杉先生)
 夫が受験について話すときは、それが妻の意見と違っていても、まずは耳を傾けることが大切です。「妻は、いろいろな情報を得て考えを深めています。その反面、子どもの成績に感情的になったり、周りが見えなくなる傾向も見られます。そんなとき、夫が冷静な意見を言ってくれると、上手にクールダウンすることができるでしょう」(高根澤先生)
 「夫婦間のギャップはどうしても生まれ、そのすべてを解決する必要はないと思います。とは言え、中学受験に関しては、期限内に結論を出さなくてはいけない局面が多々あります。そんなときに夫婦の話し合いが平行線をたどるようであれば、受験のプロである塾の先生に介入してもらった方が、問題は解決しやすいでしょう」(おおた氏)
 また、どうしても夫が受験に協力してくれない場合は、こんなやり方も。「"受験を否定するようなことや、子どものモチベーションを下げるようなことを子どもの前で言うことだけはやめてほしい"と訴えてみてはどうでしょうか?それだけでも、子どものやる気を維持することにつながると思います」(高杉先生)

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