兄弟姉妹は遊び相手、相談相手
兄弟姉妹を育てる親は、「うちの娘たちは顔はそっくりだけど、学習態度が正反対!」「長男と次男は性格や好みが違うから、よくケンカになる」など、さまざまな不安や悩みを抱えています。そもそも子どもにとって兄弟姉妹とは、一体どんな存在なのでしょうか? 兄弟姉妹の人間関係について研究している磯崎三喜年氏は、「兄弟姉妹は一番身近な遊び相手」と言います。
「小さい頃から一緒に遊び、ケンカをして、ときには互いの悩みを相談する。そのような触れ合いを通して、自然と社会的なルールを身につけていきます。また、上の子には『年下の子を守る』、下の子には『年上を敬う』といった意識が自然と育まれ、子どもの人格形成にも少なからず影響を与えます」
また、兄弟でものを取り合ったり、勉強やスポーツで競い合うことにより、競争意識が芽生えます。
「兄弟姉妹を自分の目標にしたり、ときには反面教師にする。そうやって互いに刺激を受けながら切磋琢磨できるのが、兄弟姉妹のいいところだと思います。さらに、互いに似ているところや違うところを感じ取ることで、子どもは自分自身を客観視できるようになります。つまり兄弟姉妹は、子どもが自分自身を知る鏡でもあるのです」(磯崎氏)
明治大学文学部教授の諸富祥彦氏も、「兄弟姉妹の存在が子どもの成長に与える影響は大きい」と話します。
「兄弟姉妹がいる家庭では、子どもたちがおもちゃを取り合ったりすることがよくあるでしょう。そういった体験を通して、少しずつ話し合いの大切さを理解し、何とか妥協点を見つけようとする。ときには我慢をしながら、少しずつ協調性を身につけていきます」
このように、兄弟姉妹がいることのメリットは数多く挙げられます。その一方で、親が注意すべき点も。
中学受験に挑戦する多くの家庭に取材を行ってきた教育ジャーナリストの清水克彦氏は、「子ども同士の競争意識が強くなり、劣等感や優越感を持ちやすいのが心配」と話します。
「比較対象が身近にいるからこそ、"お兄ちゃんは僕より頭がいい""お姉ちゃんより私の方が絵がうまい"といった感情を抱くものです。これは、"親の気を引きたい!""ほめられるところをもっと増やしたい!"という気持ちの表れとも言えるでしょう」(清水氏)
「兄弟姉妹との関わりの中で生まれた劣等感が強くなり過ぎると、いずれ嫉妬に変わり、深い葛藤を抱える恐れも。私が教えている大学生の中にも、子ども時代の劣等感を引きずっている人が少なくありません」(諸富氏)


性別、年齢差によって関係性は変わる
兄弟姉妹の間に葛藤が生まれる可能性は性別や年齢差によって変わります。
「兄弟と姉妹を比較した場合、一般的に兄弟の方がケンカや張り合う場面が多く見られます。一方、姉妹は互いの存在を肯定的に捉える傾向があります」(磯崎氏)
さらに、同性同士の組み合わせよりも、異性の兄弟姉妹の方が相手と張り合う気持ちは弱くなるそうです。
「性別が異なると、それぞれの嗜向性が自然と違ってくるため、葛藤が生まれにくい。また、どのような組み合わせでも、女の子は男の子より『兄弟姉妹が好き』という感情を持ちやすいことが明らかになっています」
兄弟姉妹間に生まれる競争意識については年齢差も重要なポイントです。
「兄弟姉妹の年齢が4歳以上離れると、性別を問わず、直接的な競争相手にはなりにくいでしょう」(磯崎氏)
「仮に下の子が上の子にスポーツや勉強で後れを取ったとしても、『4歳も上なのだから、負けても仕方がない』と考えるものです。一般的に、兄弟姉妹の年齢が離れるほど、競争意識や葛藤は小さくなります」(諸富氏)
一方、年齢が近い場合はどうでしょうか?
「1、2歳しか離れていない場合は、心も体も発達段階がほぼ同じであるため、兄弟姉妹で楽しく遊べます。その反面、下の子は上の子に負けまいとして、競争心が強まる。上の子は下の子が張り合ったり、真似したりすることを不愉快に感じて、ストレスをためる。その結果、互いに葛藤を持ちやすくなる恐れがあります」(磯崎氏)
ただ、このような傾向が小学生の頃に顕著であっても、成長するにつれて次第に弱まります。
「"女の子は男の子より『兄弟姉妹が好き』という感情を持ちやすい"と前述しましたが、男の子も大学生になる頃には肯定的に受け止められるようになります。仮に今、兄弟姉妹で仲が悪かったとしても、過度に心配する必要はないでしょう」(磯崎氏)


上の子は親の期待に応えようとする 
これまで数多くの兄弟姉妹を調査・研究してきた磯崎氏は「家族構成や生まれた順番などにより子どもの性格や行動に特徴が表れる」と解説します。
「まず一番上の子は、親にとって第一子であり、兄弟姉妹の中でもある種『特別』な存在。親も子育てに関してわからないことだらけなので、何かにつけて手厚くサポートします」
さらに、親の期待が集まるという傾向も。
「そのため、上の子は親、または先生などの期待に敏感で、それに応えようとがんばる。その結果、優等生タイプの子どもが多くなります」(磯崎氏)
上の子は総じて責任感が強く、リーダーシップをとることにも長けています。
「社会的なルールを素直に受け入れ、何事にもまじめに取り組む傾向が見られます。この特徴は学習面にも当てはまり、コツコツ努力するタイプが多く、成績も比較的安定。大人になってから社会的に高い地位に就いたり、堅実な職業で活躍するのは、上の子によく見られる共通点です」(磯崎氏)
まじめ、努力家、堅実といった強みを持つ上の子。しかし、親が大きな期待をかけ過ぎると、それがプレッシャーになり、知らず知らずのうちに子どもを追いつめてしまう恐れも。
「親は、自分の考えを押しつけることがないよう、気をつけてほしいですね。上の子は、下の子に比べてまじめな反面、適度に手を抜いたりすることが苦手です。そんな性格を理解して、ときには親の方から『疲れてない? 少し休もうか』などと声をかけてみてはどうでしょうか」(磯崎氏)
「親はどうしても、下の子の世話に手がかかってしまい、上の子には『しっかりしてほしい』という気持ちを抱きがち。その結果、『お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから、そのくらいできるでしょ!』と叱ってしまうこともあるでしょう。しかし、それがずっと続くと、上の子は『弟(妹)はずるい!』という気持ちを抱いてしまいます。ときには、上の子と二人だけで過ごす時間をつくって、子どもの言い分を聞いてあげることが大切です」(清水氏)



要領がよく自由奔放な下の子 
一方、下の子に関しては、「甘え上手で要領がいい」という性格で、識者3人の考えが概ね一致しました。
「上の子が親にうるさく注意されているのを横目で見て、"僕はもっと上手にやろう"と考えるようになり、要領よく立ち回る傾向があります。上の子に比べて親の期待やプレッシャーが弱まるため、社会的な枠組みにとらわれず、比較的自由に行動するタイプが多いです」(磯崎氏)
また、「甘え上手」という性格に関しては、下の子が置かれた環境が影響しています。
「上の子は黙っていても親の注意が向きやすい。そんな兄や姉を見て、下の子は小さい頃から『もっと親の注目を集めたい!』という思いを抱き、親に甘えてきます。親も、上の子のように『もっとしっかりしなさい』と言うことは比較的少ない。その結果、『甘え上手』な性格が形成されていきます」(磯崎氏)
一方、下の子は「お兄ちゃん(お姉ちゃん)には負けたくない」という気持ちを抱いています。
「下の子は"兄や姉には負けてもしょうがない"と思いながらも、やはり負けると悔しがります。そして、自分より力が強く、何でもできる兄や姉に追いつこうと努力する。その過程で、負けん気の強さや粘り強さが磨かれます」(磯崎氏)
がむしゃらにがんばる姿勢が、将来花開く可能性もあります。
「スポーツや芸術の分野で才能を発揮する人には、下の子がたくさんいます。サッカーの日本代表チームや、オリンピックメダリストに下の子が多いのが、よい例でしょう」(磯崎氏)
3人兄弟の場合、真ん中の子には、上の子や下の子とはまた違った特徴が見られます。
「真ん中の子は、上からは抑えられ、下からは突き上げられる力関係に置かれ、結構大変な立ち位置かもしれません。しかし、上の子と下の子の強みをうまく取り入れながら、自分の立ち位置を自然と学んでいきます。そして、成長するにつれて人当たりのよい性格が形成されます。いろいろなタイプと仲よくできる性格はリーダー向きとも言え、実は日本の総理大臣にも真ん中の子が多いんです」(磯崎氏)



子育ての基本は比較しないこと
兄弟姉妹それぞれの特徴を理解した上で、親はどのような接し方をすればよいのでしょうか? 3人の識者から共通で挙げられたのは、「兄弟姉妹を比較しない」というアドバイスでした。
「"お兄ちゃんはそんなことしないよ""妹はしっかりできるのに、なんであなたは……"のように、兄弟姉妹を比較するような言い方はできる限り避けてほしいと思います。特に同性の兄弟姉妹の場合、親がつい比較してしまいますが、そうすると子ども同士も互いを比較するようになります」(諸富氏)
年齢が近い兄弟姉妹の場合は、特に接し方に気を配りたいところ。
「兄弟ゲンカが起きると、親はどうしても上の子に対して"お兄ちゃんなのにダメでしょ!"と叱ってしまいがちです。しかし、1、2歳しか離れていない兄弟姉妹の場合、上の子は弟や妹を自分と同等の存在として捉えており、親から"お兄ちゃんなのに!"と言われることに強い不満を感じます。もし、うっかり言ってしまったら、違う場面で"さすがお兄ちゃん!"などとほめ、上の子の顔を立ててあげることも意識してみましょう」(清水氏)
また上の子は、親の期待に応えようとするため、プレッシャーを感じても無理してがんばる場合があります。
「親だけでなく、近所や親戚からも期待の目で見られることが多いものです。それをすべて防ぐことは難しいと思いますが、周囲の期待が上の子にばかり向かないよう、親は気を配ってほしいと思います。上の子がリラックスできる環境を整えたり、好きなことに打ち込める時間をつくるなどのサポートを心がけてほしいですね」(磯崎氏)
上の子には慎重派が多く、「石橋を叩いても渡らない」ような子も珍しくありません。
「そんな性格をもどかしく感じたら、"あなたの好きなようにやってもいいんだよ。うまくいかなくても応援するから"と声をかけてみましょう。親が背中を押してくれることで、挑戦する勇気が湧いてきます」(磯崎氏)
「上の子は責任感が強く、下の子の面倒もよく見てくれます。親はそれを当然のことと思わず、"お姉ちゃんが下の子を見てくれるから、お母さんは助かるわ"と感謝の気持ちを伝えてみましょう。そうすれば、上の子の自尊心を高められます」(清水氏)


兄弟姉妹それぞれの才能に注目する 
一方、真ん中の子や下の子は、上の子と比べて、親の関心が集中しないことに不満を感じる傾向があります。
「親は折に触れて、下の子が一生懸命取り組んでいる勉強やスポーツなどに興味を示してあげるといいですね。親の中には、下の子特有の自由奔放さを不安視する人もいますが、それが大きな武器になる可能性も。周りの人に迷惑をかけたり、子ども自身が危険な目にあうといった場合以外は大目に見てあげてはどうでしょうか?」(磯崎氏)
下の子は上の子をよく観察して要領よく行動する反面、兄や姉に対して劣等感を抱くケースもあります。
「下の子に自信を持たせるためには、親が上の子とは違う強みに目を向け、"よくそこまでがんばったね"と、努力の過程をほめて伸ばすようにしてみましょう」(諸富氏)
兄弟姉妹の年齢が近い場合は、同じフィールドで勝負させないような配慮も、ときには必要となります。
「たとえば、お兄ちゃんと同じサッカークラブに通っている弟がやる気を失っているとしたら、別の習い事に通わせてみてはどうでしょうか? 同じ習い事を続ける場合でも、"お兄ちゃんはシュートがうまいけど、弟はディフェンスをがんばっている"など、それぞれの得意分野に目を向けてほしいと思います」(磯崎氏)
「兄弟姉妹が中学受験にチャレンジする場合も、サポートの仕方は変えた方がよいでしょう。"上の子は男子校に行かせたけど、下の子は共学校が向いているかも"のように、広い視野を持って子どもをサポートしてみてください」(清水氏)



兄弟全員を「えこひいき」しよう
しかし、親がどんなに工夫しても、兄弟姉妹間の葛藤をゼロにするのは難しいもの。「お兄ちゃんばかり、ずるい」「何で妹にだけ?」といった感情を子どもが抱く可能性はあるでしょう。
子どもたちが不平等感を持たないようにするために、親はどんなことを心がけたらいいのでしょうか? 諸富氏は、「全員を『えこひいき』するのが一つの方法」とアドバイスします。
「子どもたちに平等に接することを心がけ、"皆、大好きよ"と言う親もいることでしょう。しかし、この言葉は意外と子どもの心に響かないものです。ほかの兄弟と平等に扱われると、多くの子どもは何だか損したような気分になります。それよりも、一人ずつと向き合う時間をつくって、"あなたのことが世界で一番好き!"と伝えてみてはどうでしょうか? 全員を絶対的にえこひいきすることが、兄弟姉妹を育てる上で重要なポイントになると思います」
多くの親は「兄弟姉妹にかける時間や労力、お金は平等にすべきでは?」と考えがちです。
「しかし、兄弟姉妹の性別、年齢、性格、得意・不得意はそれぞれ違います。同じような環境を与えたとしても、必ずしもプラスになるとは限りません。やはり、そのときの状況に応じて、子どもの性格に合ったサポートを考えることが一番重要でしょう」(諸富氏)
同じことは、中学受験にも当てはまります。
「"上の子を私立中学に行かせたから、下の子にもそうさせないと不公平"と考えるよりも、"お兄ちゃんは受験をして希望の学校に合格したけど、あなたはどうしたい?"と、下の子に考えさせるのが理想ではないでしょうか」(清水氏)
「何より大切なのは、子どもが親から大事にされているという気持ちを持てること。親が、それぞれの子どもにとって一番のサポーターになれるといいですね」(磯崎氏)


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