毎日の生活の中で、多くの親が抱える悩みは、2パターンに分類できます。
TAを学びこの2つに適切に対応できれば、いろいろな悩みに応用できます。

まずは子どもを信頼することから始める

子育て講座の講師を依頼されることが少なくないという梅本和比己さん。会場では子育ての悩みについての相談も寄せられます。「中でも、朝、自分で起きられない子どもについて悩んでいる、というお母さんが非常に多いです」 

そんなときに梅本さんが勧めているのが"1週間は絶対に起こさない"こと。効果は絶大。今まで100%の確率で起きられるようになっているそうです。ただし、やるときにはさまざまな約束があります。

「まずは、始める前によく話し合うこと。TAでは、子どもをひとりの人間として信頼するのが基本ですから、最初にお子さんと約束をします。たとえば、『あなたはもう小学校6年生だから、朝は自分で起きたほうがいいと思うけれど、どうする? まだお母さんが起こしたほうがいい? それとも自分で起きる?』と子どもに聞いて選ばせるわけです。6年生ともなれば、親から自立したいという気持ちが芽生えている時期ですから、『自分でやってみる』と言う確率が非常に高いと思います」 

それでも、もし「まだ起こしてほしい」と言われたら「じゃあ、何歳から自分で起きるようにする?」と聞きます。子どもが「中学1年から」と言ったら「じゃあそれまではお母さんが起こすから、中学1年になったら自分で起きるようにしようね」と約束すればいいのです。

「子どもが『自分で起きてみる』と答えた場合、もうひとつ約束として大事なのは、お母さんは"1週間は起こさない"と決めて約束したら、絶対に起こさないこと。もし、"朝一度だけは声をかけるわね"と言ったら、それ以上は絶対に声をかけないことです」 

そうは言っても、遅刻したら困る……。そう思うのがたいていの親の心情かもしれません。けれど、それでは子どもを信頼していることにならないし、その行動には矛盾がある、と梅本さんは言います。「親が、朝、子どもを起こすというのは、『学校に遅刻をしないように行ってもらいたい』、『きちんと規則を守って自分で何事も考えて行動する子どもに育てたい』という、5つの心で言えばCPの部分があると思います。その思い自体はとてもよいのですが、それを実現しようとしながら、起きてこない子どもを起こしてしまうことは矛盾がありますよね。自立した子どもに育てたいのであれば、自分で起きるという力を持ってもらわなければならないのに、起こしてしまっては、その機会を奪ってしまっているわけですから」

親の問題と子どもの問題は切り離す

起こせば起こすほど、子どもは自分からは起きなくなり、起こしに行ってしまうということは、ギリギリまで寝ていていいよというメッセージを親が与えてしまっていることにほかならないと、梅本さんは続けます。 

「でも、起こしに行かないことって、親としては本当に辛いんですよね」と語るのは、2人の小学生の子どもを持つ中島啓子さんです。「『もうこれで最後だからね、もう起こさないわよ』って言いながらついつい起こしに行ってしまうんですよ」 

でも、それでは、行動と言葉が一致していません。TAでは、「言葉と行動を一致させる」ことが基本なのです。 

仮に起こさないことががまんできたとして、もし、本当に子どもが遅刻したらどうすればいいのでしょう?

「遅刻させていいんです。それも、よい変化です。なぜかと言うと、遅刻したことを自分で先生や友達に説明して、解決しなくてはいけない。この"自分で考えて行動する"という新しい機会が得られたんだ、と考えるわけです。大人の心であるAを使うわけです。もし、ずっと起こされていれば、そういう機会はなかったし、それは、自立させたいというお母さんの目的に合致したとてもいい機会です。だから、あえて遅刻したことも喜んでいいわけです」(梅本さん) 

とはいえ、親としては、何回も遅刻が続いてしまって、そのまま悪い方向に進んでしまったらどうしよう、という不安もあります。その思いはどうやって解消すればよいのでしょう。

「そこは葛藤に打ち勝たなければなりません。大事なのは親の問題と子どもの問題を切り離すこと。親は確かに"起こさないこと"が居心地悪いかもしれません。だけど、それは子どもとは関係ないこと。自分の問題として解決するべきです。そして、自分で起きて学校に行く、ということに挑戦している子どもを支えてあげることが大切です」(梅本さん) 

そして、たった1週間ですが、その過ごし方が大切だと言います。「やっていることをちゃんと見ていてあげて、それをすべて認めてあげるという姿勢が加わるとさらにうまくいきます。やさしい母親的な心、NPを発揮することですね。たとえば、遅刻したのにも関わらず行ったのであれば、『遅刻だったのに、よく行ったわね』と褒める。1週間のうちにきちんと行ける日があったなら『すごいわね。やっぱりできるんじゃない』と褒める。それで、子どもは日に日に変わってくるはずです。1日遅刻しようと2日遅刻しようと長い人生ではどうということはない。それ以上に得るものが多いはずです。ぜひ、やってみてください」(梅本さん)

解決策は子ども自身に決めさせる

塾に行く時間になるとなんだか急に「お腹が痛い」と言いだす子。学校に行ったはずが、ずる休みしていた子。そんな子どもたちに対して、ついついCPが高まって、「ずる休みしてだめじゃないか!」「さぼっちゃだめでしょう」「月謝払っているのに、もったいない!」と頭ごなしに叱ってしまいがちです。だけどそれは大きな間違いで、逆に問題を大きくしてしまう可能性がある、と警鐘を鳴らす梅本さん。

「まずは、塾に行きたくない、学校に行きたくない理由がどんなものなのかを、親は聞いてあげることが大事です。特に、塾の場合は、義務教育の学校よりも親の関わりが少ない分、友達や先生との関係性など、その中で起こっていることをあまり把握していないケースが多いと思います。子どもが『塾に行きたくない』と言ったら、まずはNPで『塾に行きたくないのね』とその思いを受け止めてあげて、その後に『何か理由があるの?』と聞いてあげること。この聞いてあげるということで、子どもの気持ちはかなり落ち着くはずです。そして、気持ちが変わって、『やっぱり、行ってくる』と言うかもしれません。子どもの側にはいろいろな理由があって、ひょっとすると、親に甘えたかっただけかもしれないし、なんとなく言ってみただけかもしれない。もちろん、もっと深刻ないじめなどの問題もあるかもしれません。いずれにしても、先に親の判断で何でも決めてしまうと、子どもは何も話さなくなってしまいます」 

子どもに話してもらうために大切なのは、話せば何かが変わるかもしれない、という姿勢を見せること。子どもが「どうせ言っても状況は変わらない」と思ってしまったら、もう何も話さなくなってしまいます。たとえば、最初に、「学校や塾は行ってもいいし、行かなくてもいいよ」というニュートラルな姿勢を見せれば、子どもも話しやすくなります。 

「ママに言っても安心、という姿勢を示すことも大切です」と語るのは中島さん。 「子どもたちが何かを話したとしても、その後の解決策は、子どもたち自身に決めさせ、子どもたちの承諾なしには親が動かない、ということが重要です。うちでは、何か子どもたちが問題を訴えてきた場合は、『ママが何かやろうか? それとも自分で解決できる?』と聞いて決めさせるようにしています」 何か起きたときに、子どもの意志を無視して親が勝手に動いてしまうと、子どもは口を閉ざしてしまうと言うのです。子どもがケンカをしてきて、ケガをしてきたとする。理由も子どもの意見も聞かずに、親が相手の家に押し掛けて文句をいう。子どもにとってこれほど困ることはありません。 

そのために、普段から子どもが話しやすい環境を作っておくことが必要ですが、すでに「子どもが何も話してくれない」という環境になっている場合はどうすればよいのでしょう。「子どもに言えばいいのです。『お母さんは、今まではちょっと間違っていたかもしれない。あなたに相談なしに、勝手に動いてしまうこともあったけれど、今度から変わりたいし、変わるようにがんばるから、何かあったら話をしてね』と宣言をするのです。すぐには話してくれないかもしれないけれど、いつも耳を傾けて、『あなたが言いたいのは、こういうことね』と繰り返すうちに、ちょっとお母さんは変わったかも、と気づいてくれるかもしれません」(梅本さん)

学校に行かないのは愛情不足の可能性も

ただ、塾に行かないという問題と学校に行かないという問題は分けて考えたほうがいいと梅本さんは言います。「塾は先生を変えてもらうとか、塾そのものを変えるということで、解決することも少なくありませんが、学校の場合はなかなか変えるわけにもいかないので、もう少し問題が大きい場合があります。たとえば、両親の仲が悪くてケンカばかりしている場合、自分が学校に行っている間にママがいなくなっちゃうかも、と不安で学校に行きたがらない、というようなケースもあります。学校に行かない場合は、子どもに余計に親身になって聞く必要がありますね」

学校の場合は、先生も心配し、「ご両親で学校に来てください」ということにもなりかねません。子どもからすると、自分の問題を両親が考えざるをえない状況になるわけです。それは広い意味では、愛情が自分に注がれているということ。つまり、あまり愛情が注がれていなかったり、注目されていないと、無意識に学校に行かないということもあるのです。「『ママ、パパ、私のことを見て! 僕に気づいて!』というメッセージを送っている可能性があります」(中島さん)。

そんなことはない、十分に愛情を注いでいる、という人が多いかもしれません。その場合は、愛情が伝わっていない可能性があるかも。抱きしめたり、褒めたり、あるいは前出の携帯電話の例のように、自分なりに愛情を伝える方法を考え直す必要もあるかもしれません。「まず大切なのは、TAでいろいろなことに『気づく』こと。今までできていなかったからといって落胆する必要はありません。小学生のうちならまだ間に合う。これから中学・高校という大事な時期の前に、豊かな親子関係を築いておきましょう」(梅本さん)

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