好きにしていいのにうれしくない理由は?

子どもが「受験をやめたい」と言うのだから、その言葉を受け入れて「好きなようにしていいよ」と答える。一見すると、ものわかりのよい親の対応にも思えます。しかし、6人中5人が「× あまりうれしくない」と回答。それは、なぜなのでしょうか。

渡邉さんは、その理由を次のように話します。

「私が"受験をやめたい"と思うときは、たぶん今考えている問題が解けず、イライラしているときです。別に、受験そのものが辛いわけではありません。それなのに、母から"好きにしていいよ"と言われると、突き放された感じがします」

太田さんも、「すごく無責任な感じがする」と指摘します。

「母も、いろいろ考えた上で言っているのかもしれないけど、私は、"もう少し真剣に考えてよ"って思います」

勉強を続けることに悩む子どもの気持ちを軽くしようと、「好きにしていいよ」と言ったとしても、子どもの心には届きにくいようです。さらに、「自分のことを真剣に考えていないのではないか」という不信感を子どもに抱かせる恐れもありそうです。

また、この言葉が「どの時期に言われたかにもよる」と回答したのが出村くん。

「中学受験をするかしないか、まだ迷っている小4や小5の頃に言われても、それほど気にしないかもしれません。でも、小6の夏以降に言われたら、本当にやる気がなくなってしまうと思います。それまでの努力が無駄になってしまうし……」 

受験勉強を長い間がんばってきたからこそ、多くの子どもは「ここで勉強をやめてしまったら、後悔するのでは?」という不安も、同時に抱いています。

「× あまりうれしくない」を選んだ市川くんの「ずっと塾に通っていた人で、"受験をやめたい"と本心から言う人は、ほとんどいないと思います」と言う意見は、入試本番に向けて、ぜひ心に留めておきたい貴重なアドバイスです。

小6の秋を迎えると、多くの子どもは「なぜ受験をするのか」という問いに対して、自分なりの考えを持つようになります。もし「受験をやめたい」「勉強をしたくない」と言った場合でも、親はまず、その言葉の裏に隠された、子どもの不安や苛立ちに気づくサポートが求められます。その上で、子どもの気持ちに寄り添う言葉がけをすることが、大切なのではないでしょうか。

理由を一緒に考えて背中を押してほしい

では、子どもから「受験をやめたい」と言われた場合、親はどのようなサポートをすればよいのでしょうか。その方法は、子どものタイプによって異なります。 

ひとつ目は、「引き留めてほしい」タイプ。「受験をやめたい」と言ったものの、本心ではなく、親に「諦めないで」「考え直したら?」と言ってほしい場合です。 

たとえば、「母が、"本当にそれでいいの?"って、言ってくれるとうれしい」(市川くん)という意見が挙がるように、子どもが冷静さを取り戻し、考え直すきっかけを与えるような言葉がけが求められます。

榎本くんは、難関校の対策クラスに入ったとき、授業内容がとても難しく、母親に愚痴をこぼすことがあったそうです。

「そのとき、母から"そこで諦めてどうするの!"と言われて、気持ちをリセットすることができました。今振り返ると、僕より母のほうが受験を真剣に考えていた気がします。だから、母から"好きなようにしていいよ"って言われても、信じられなかったと思うし、見捨てられた感じがしたかもしれません」 

受験に対する親の想いを子どもは十分に理解しています。だからこそ、「諦めないで」「考え直したら?」という親の率直な意見に触れられるほうがうれしいようです。

ふたつ目には、「理由を聞いてほしい」タイプが挙げられます。「"好きにしていいよ"と言う前に、まずは、私が受験をやめたいと思う理由を聞いてほしいです。そうしてくれたら、"私のことをちゃんと考えてくれているんだ"って、実感できます」(太田さん)

子どもに伝える言葉が「好きにしていいよ」にしても、「諦めないで」にしても、その言葉には何かしら親の気持ちが表れます。しかし、受験生としては、それよりもまず、「自分の考えを聞いてほしい!」というのが、本音のひとつなのです。子どもが受験に対する不安や悩みを抱えているとき、その原因を親が聞き出すことにより、受験生は母のサポートを実感し、「じゃあ、自分はどうしたらいいのか」と考えるきっかけを得られます。

そして、最後は「励ましてほしい」タイプ。

「"今まで勉強をがんばってきたのだから、続けてみよう"とか、"これからが受験のラストスパート! ゴールは目の前だよ"などの言葉を掛けてほしい」(出村くん)、「お母さんが、"もうちょっとだけ、がんばってみたら?"と励ましてくれるとうれしい!」(渡邉さん)という意見が挙がるように、母親からの前向きな言葉が、やる気を取り戻す上でカギを握るようです。 

長きに渡る中学受験では、どんな子どもでも疲れがたまれば、「受験をやめたい……」と、愚痴のひとつも出るもの。その心情を理解した上で、「気持ちはわかるよ。でも、もう少しだからがんばろう」と、背中を押してあげる言葉が、不安と緊張が入り交じる受験生の心に、すっと入っていくのです。

一方、6人の中で唯一「◎ すごくうれしい」と答えたのは川崎くん。

「僕が、この言葉をかけられた場合、"辛くなったら、最悪受験をやめてもいいんだ"って考えて、肩の荷が下りると思います。そして、逆に開き直って、"だったら、やれるところまでやろう!"っていう気持ちになれます」

子どもの性格にもよりますが、「第一志望校に落ちたらどうしよう……」などの不安を、何度も口にしている場合などは、落ち着きを取り戻させる効果がありそうです。

ただし、どんな場合でも、まずは子どもの話に耳を傾ける姿勢が欠かせません。そして、親子でよく話し合った上で、「あなたの好きなようにしていいよ」と伝えれば、「救いの言葉」として、子どもの心に響くこともあるでしょう。

うれしいけど明るく言われると……

併願校であっても、「不合格」という結果は、やはり受験生に大きなショックを与えます。そのため、いつも以上に母の励ましが心に響くようです。6人中ひとりが「◎ すごくうれしい」を、3人が「○ うれしい」を選びました。 

「◎」を選んだ市川くんは、その理由を次のように話します。 「受験シーズンは、辛くても次に向けて気持ちを切り替えることが大事。だから、第一志望校への希望を与えてくれる言葉は、心の支えになります」

「○」を選んだ榎本くんも、「自分が精神的に弱っているときに、母から優しい言葉を掛けられると、救われた気がする」と話します。ただし、励ましの言葉が、あまりにも明るい感じだと、違和感を感じることも。

「母からの励ましの言葉が、あまりにもあっけらかんとしていたら嫌だな。"自分の気持ちをわかってない"と感じると思います」(渡邉さん)

「不合格なのに明るく励まされると、"そこまで楽天的にならなくてもいいんじゃない?"って思います。僕なら、普段通りの口調で、"この学校は第一志望ではないんだから、大丈夫だよ"くらいの言葉をかけてほしいです」(出村くん) 

そして、「× あまりうれしくない」と答えた太田さんは、母親の気持ちも考えて、この選択肢を選びました。

「合格確実だと思っていた学校に落ちれば、母だって不安になるはず。そういう気持ちを抑えて、無理に前向きな言葉をかけられても……。それよりも、不安を表には出さず、普段通りに接してくれたほうが、私はうれしいです」 

最後に、「△ どちらとも言えない」を選んだ川崎くんの鋭い指摘も、ぜひ参考にしたいところ。

「併願校の入試問題と、第一志望の出題傾向は、かなり異なる場合があります。だから、必ずしも『併願校に落ちた=第一志望が危ない!』って、ことじゃない気がします」 

併願校を受験させるときは、「合格の可能性がどれくらいなのか」「出題傾向は第一志望と似ているのか」を今一度チェックしておくことが、カギを握ると言えるでしょう。

食事面のサポートは子どもへの効果抜群

第一志望の入試前夜、母が腕を振るって夕食を作ってくれることに対しては、6人全員が「うれしい」と判定しました。

「〇 うれしい」と「◎ すごくうれしい」で回答が分かれたのは、「豪勢な」という言葉に引っかかったかどうかの微妙な違いのようです。

「○」を選んだ出村くんは、「本番前日の夕食は、普通通りでいいです。あまり豪勢な夕食が出されると、"明日、具合が悪くなったらどうしよう"って、心配になっちゃうから(笑)」と話します。

同じく「○」を選んだ太田さんも、「豪勢な食事でなくていい」とコメント。

「入試が近づいた時期に、外食に連れて行かれたりすると、逆にプレッシャーを感じます。"え、そんなに一大事なの?"って(笑)」

「◎ すごくうれしい」と答えた4人も、じつは「豪勢な食事」には、それ程こだわってはいません。それよりも回答として目立つのは、「自分の好きな食べ物を出してくれるとうれしい」と言う意見でした。

「我が家では、第一志望の入試の前日に、母が煮込みハンバーグを作ってくれました。普段から食べているメニューでしたが、僕の好きなものだったので、とてもうれしかったです」(榎本くん)

「入試前日の夜は、僕の大好きな親子丼でした。豪勢ではないかもしれないけど、お気に入りのメニューだったから、"明日はがんばろう!"って気持ちになりました」(市川くん)

「私の母は、入試直前やテストの結果が出たときなど、『ここぞ!』というときには、私の好きなハンバーグを作ってくれました。そういうサポートを口には出さず、普通にやってくれることがうれしかったです」(渡邉さん) 

さらに、入試本番が近づく時期に、母親が体調面のサポートに力を入れてくれたことに対しても、感謝の言葉がたくさん述べられました。 「母は、"直前期は生ものを控えたほうがいい"と言って、1か月くらい前から、刺身を食卓には出しませんでした。僕はお寿司が好きだったのですが、受験が終わってから、母がお寿司を好きなだけ食べさせてくれたので、特に不満はありませんでした(笑)」(市川くん)

「母はいつも、消化のいい食材を選んで、献立を考えてくれました。入試直前は揚げ物を控えるなど、気を遣ってくれたことに感謝しています」(榎本くん) 

子どもを応援する気持ちを言葉だけでなく、態度や行動で示すと、多くの受験生が「母が心の中で"がんばって!"と、応援してくれているような気がする」(川崎くん)と感じるようです。 

入試本番への不安や緊張が高まる時期、母親が食事や体調面に気を配るサポートは、受験生のやる気を確実にアップさせます。そして、子どものお気に入りメニューが食卓に並べば、まさにこれ以上のサポートはないと言えるでしょう。

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