発展途上国の持つ貴重な生物資源を
利用し守り育てる

マレーシアってどんな国?

人口:2,861万人
(2009年推定)
面積:329,735km&2;
首都:クアラルンプール
在留邦人数:9,142人
(2010年調べ)
日系企業数:1,427社
(2009年7月調べ)

電子・電気関連分野の輸出が好調のマレーシア。今後は、製造業、農業、ICT、バイオ、観光、教育、医療、イスラム金融、ハラル食品を重点的に経済を活性化する指針を立てている。日本との文化交流も盛んで、日本型の大学をマレーシアに設立し、日本の価値観・労働倫理・文化的環境の中で学生を教育するという構想も ある。

発展途上国に対してもフェアな精神で接する

二村聡さんは、マレーシアの国立・州立の政府機関と提携して、薬用植物などの生物資源の研究利用権を獲得。生物資源を製品開発に利用したいと考える企業から依頼を受け、ジャングルで生物資源の探索を行う会社を経営しています。マレーシアと企業の間に立ち、企業が合法的に生物資源を利用できるように調整を行っているほか、企業との共同研究が可能な施設・スタッフを揃えており、それも重要な仕事のひとつです。

「なぜこんなビジネスが成り立つかというと、まずひとつは、生物資源は薬や化粧品、そのほかの化学製品などの貴重な材料になるからです」

たとえば、細菌を殺しさまざまな感染症を治療する薬(抗生物質)は、カビなどの微生物から作ります。微生物の種類は多様で、一部の国や地域だけに生息している微生物からしか、作れない薬なども存在するのです。微生物から薬の成分を抽出する技術も、研究が必要なことがあります。

「世界の生物資源の10%はマレーシアにあります。それを主に利用しているのは製薬企業や化粧品会社ですが、生物資源の応用できる分野はそれだけではありません。たとえばこの間、私の会社と日本の大手光学機器メーカーと共同で、マレーシアに棲むホタルから採取した発光物質を特許申請しました。この物質は、ある条件下で光るように調整をし、分析用の試薬として製品化することが期待されます」

実は、そんな貴重な生物資源を、かつては先進国の企業が世界各地から自由に取ってくることができました。「その流れが変化したのは、1992年にブラジルで開催された環境サミットで生物多様性条約(CBD)が締結され、翌年発効してから。昨年までに192か国とECが批准したこの条約は、〝生物資源の所有権・利用権はその保有国にあり、生物資源の利用については保有国の許可が必要である”としています」

2002年には、日本の大手メーカーがインドネシアのNGOからCBD関連のクレームを受け、51件もの請求項(特許で保護される発明)を持つ特許を放棄することになりました。
「保有国の許可を受ける、というのは資源国の政府機関との共同研究契約を結ぶということです。しかし当然ながら、いきなり一企業が契約を交わそうとしても、すぐにOKとはいきません。そこでマレーシアでは、すでに契約済みの弊社の登場となるわけです。私たちの会社と企業の共同研究という形で、生物資源の利用が可能になります。その際にもCBDの精神を遵守しなければなりません」

二村さんは、次のように続けます。
「要はフェアに資源国の主権・利益を尊重するということです。資源をなるべく外国に出さない。そのためには、なるべく資源国内で研究する必要があるので、現地に研究所を立て、現地の人を雇います。現地の人を雇うことで、その地に雇用が創出されますし、そうした人々に現地の研究所で技術を伝えられます。このようにして、資源国に生物資源を使わせてもらった利益を還元することができるのです。もちろん研究の結果得られた特許などの知的財産も、資源国と共有します」

このような方針を強く打ち出しているからこそ、(株)ニムラ・ジェネティック・ソリューションズは、資源国の信頼が得られています。

「マレーシアに続いて、昨年8月にはブータン王国と提携契約に成功しました。現在は、アフリカ、南米、オセアニアの各国と交渉中です。先日は、アフリカのレソト王国に行きました」

ジャングルで先住民族と資源となる植物を探す

実は、ここに至るまでの二村さんの道のりは平坦ではありませんでした。
 「タイルの輸入販売の会社に入ったのですが、自分の仕事に意義を見出せずに退社。〝これからは農業だ!.と考え、明治大学の農学部に22歳で入学し、卒業後は知人の誘いでマレーシアの農作物をヨーロッパに輸出する、マレーシア企業に就職するはずでした。しかし、現地に行く直前に会社が倒産。とは言え、就職を祝ってくれた親や親戚にそのことを言い出せず、とりあえずマレーシアに渡航したのです」 

その後、日本語教師や輸入関連の仕事など、生活のために働きながら農業に携わる仕事を模索し続けました。

「やがて、マレーシアには日本にはないようなめずらしい植物などが豊富に存在し、それらが製薬会社などにとって貴重な資源となることに気づきました。生物資源に含まれる物質に関する知識などは、大学の農学部で学んだことが役に立っていますね。深いジャングルに入って、先住民族と電気やトイレもない生活を、長いときには3か月もともにして、植物を探したりもしました。当然食事も、先住民族と同じものをとります。これは現在の会社でも、とても大切な仕事。メーカーなど普通の企業には、先住民族とうまくコミュニケーションをとり、生物資源を採集するノウハウはありませんからね」

 そして1994年にマレーシアで薬用植物調査会社を設立し、2000年に同社を発展解消させて、現在の会社を立ち上げた二村さん。海外で活躍する秘訣を聞いてみました。

「他者に対して発信する強い何かを持つことでしょう。そうすれば言葉が完全にはわからなくても、その何かを理解しようと、人々は耳を傾けてくれます。私にとっては、それが農業、生物資源、CBDの精神だったのです。私の英語は、マレーシア人に間違えられるほどこの国のなまりが染みついていますし、マレーシア語に関しても、いまだに下手なりに挑戦しているというレベル。けれど、外国の企業と仕事をしたり、現地の農業大臣と会談したりできていますから」

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