右:『鹿の王(上)生き残った者』上橋菜穂子【著】/ 14年9月刊/角川書店/ 1,600円+税Amazonで購入
左:『丹生都比売 梨木香歩作品集』梨木香歩【著】/ 14年9月刊/新潮社/ 1,500円+税Amazonで購入

児童文学のノーベル賞とも言われる国際アンデルセン賞作家賞を受賞した上橋菜穂子さん。大人も夢中にさせる稀代のストーリーテラーです。最新長編『鹿の王』は、異世界を舞台にした父と子の物語。辺境の戦士団の頭だったヴァンが、奴隷として囚われていた岩塩鉱で、黒い獣の群れに襲われる場面から始まります。その後、謎の病が発生し、獣に噛まれた人々は死亡。ところが、ヴァンと一人の幼い少女だけが生き延びるのです。

突然流行し始めた奇病はかつて国を滅ぼした〈黒狼熱〉なのか。ヴァンはユナと名づけた少女を連れて放浪します。一方、若き天才医術師・ホッサルは病の治療法を調べるのですが……。彼らが直面する危機の背景には、強大な帝国による支配、医術の発達を阻む迷信、故郷を奪われた少数民族の存在がありました。架空の国の話だけれど、どこか現実の緊迫した世界情勢とも重なります。ヴァンも魅力的です。風のように駆ける飛鹿に乗り、敵に遭遇すると誰がリーダーか見抜いて最初に倒す。タフでカッコいい大人の男ですが、亡くなった妻子のそばに早く行きたいから戦士になったという悲しい過去を持っています。ヴァンがユナを守ることで失った大切なものを取り戻し、『鹿の王』という題の意味がわかる終盤は、ページをめくりながら何度も目頭が熱くなりました。

梨木香歩さんの『丹生都比売』も、静謐な筆致ながら激しく心を揺さぶられる一冊。梨木さんの初めての短編集です。日本古代の女帝として知られる持統天皇と息子の草壁皇子のエピソードをもとにした表題作もすばらしいのですが、お父さんお母さんにぜひ読んでいただきたいのが「夏の朝」。小学一年生の夏ちゃんと、親友の春ちゃんの話です。

春ちゃんは、夏ちゃんが誕生日にもらった〈とくべつの球根〉から生まれた親指姫。大人の目には見えません。幻の友だちとばかり話している娘を心配したお母さんは、ある行動をとります。夏ちゃんが春ちゃんを必死で守ろうとする場面に、胸を締めつけられずにはいられないでしょう。でも最終的には春ちゃんの存在を否定せずに、夏ちゃんが成長するところがうれしい。ほかの収録作にも芯の強い優しさを感じます。文章も美しいので、じっくり味わってみてください。




『かっこうの親もずの子ども』
椰月美智子【著/
14年10月刊/実業之日本社/ 620円+税
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幼児雑誌の編集部で働くシングルマザーの統子は、仕事に子育てに悩みながらも奮闘する日々。ある日、AID(非配偶者間人工授精)によって授かった息子と似た少年を見つけて……。親子の絆を問う感動作。





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