疲れていても塾を休むと罪悪感

塾と学校行事の両立は、中学受験に取り組む親子にとって、乗り越えなくてはいけないハードルのひとつ。学校行事が忙しい時期は、当然子どもの疲れがたまり、それを見守る親も気をもみます。疲れ切った我が子の姿を見ると、「たまには塾を休ませてあげたい」と思う親もいることでしょう。ただ、果たしてそのサポートを、受験生は喜ぶのでしょうか。

結論から言うと、6人中3人が「×あまりうれしくない」と答えました。そのひとりである榎本くんは、自分から母に「塾を休みたい」と伝えたことがあるそうです。

「修学旅行から帰ってきた日に、塾の組分けテストがあったんです。そのときは、さすがに疲れていたので、母に"今日は塾を休みたい"と言いました」

しかし、お母さんは首を縦に振らなかったそうです。

「母には、"塾を休んだら、クラスが下がるよ。それに、ほかのみんなも、がんばっているんだから"と、諭されました。僕も心の中では、"今のクラスでがんばりたい!"という気持ちがあったんです。だから、母の言葉に気持ちを奮い立たせて、組分けテストに行きました。実際、僕と同じ小学校に通う人もテストを受けに来ていたので、母の言葉が身に染みました」(榎本くん)

そして、塾のクラスが落ちなかったことで自信が深まり、今では母が引き留めてくれたことに感謝しています。「その経験から言うと、"塾を休んでもいいよ"って言われるのは、僕はあまりうれしくありません。長い目で見ると、やっぱり自分のためにならないと思います」(榎本くん)

市川くんも、修学旅行から帰って来てすぐにテストというハードなスケジュールを体験をしました。

「僕は、負けず嫌いな性格だから、疲れたから休むっていうのは好きじゃないんです。塾を休むことには罪悪感を覚えるし、1回でも休むと友だちと差がついてしまう。もし、母から"塾を休んでもいいよ"って言われたら、"僕の性格をわかっているの?"って、疑っちゃうかもしれません」

もちろん、市川くんのお母さんは、そのような言葉をかけたことはなかったそうです。

「修学旅行で帰ってきた後に合不合判定テストがあった日、僕はすごく疲れていました。だから、塾に行こうか迷ったんです。でも、"塾に行かないとまずい!"っていう危機感があったから、休みませんでした。その時に母は、学校まで車で迎えに来てくれたんです。そして、塾の前で僕を降ろした後、"疲れていると思うけど、がんばってね!"と声をかけてくれました。そのひと言で、やる気がアップしました」(市川くん)

ふたりのお母さんに共通しているのは、ハードなスケジュールだと理解しながらも、子どものやる気を信じていた点です。榎本くんも市川くんも、笑顔で「母に感謝している」と振り返ります。

楽しんでいる子どもは最後までがんばり通す

「× あまりうれしくない」と答えた渡邉さんは、学校行事の委員長を務めていたことがあります。

「私の母は、"どちらかがおろそかにならなければ、受験も学校行事もやっていいよ。両方楽しみなさい"と言ってくれました。私も、学校も塾も両方楽しくて、全力でやると決めていました。だから、疲れたことを理由に塾を休むという選択肢は、頭になかったですね。もし母から"休んでもいいよ"って言われたら、自分のやる気に水を差されたと思ったかもしれません」)

自分の意志で学校行事に取り組んでいる子どもに対しては、「たとえ疲れが見えても、子どもが楽しんでいるうちは大丈夫」くらいのポジティブな姿勢で見守るようにしたいところです。

「△ どちらともいえない」を選らんだ川崎くんも、「学校行事で疲れていても、塾を休もうとは考えなかった」と振り返ります。

「学校行事が塾の組分けテストと重なったことがあったし、学校行事の都合で塾に遅れたこともあります。そういうときは、さすがに"疲れたな"と感じることもありました。でも、僕は塾に行くことがいつも楽しくて、塾で友だちと一緒に過ごす時間が、受験の息抜きになっていました。だから、このケースは自分としてはイメージしづらくて、どちらとも言えないかな」

一方で、肯定的な意見を述べたのが、出村くんと太田さんです。「◎ すごくうれしい」を選んだ出村くんは、「"休んでもいいよ"と声をかけてくれる母の配慮がうれしい」と話します。

「僕は、運動会の後に塾のテストに行かなくてはいけない日がありました。塾は休まなかったけれど、もしその時に、母から"がんばって行きなさい"って言われていたら、やる気がダウンしたと思います」

出村くんは「塾を休んでもいいよ」という励ましを、次のように解釈しています。

「この言葉は、"塾に行ってもいいし、行かなくてもいい"というふたつの選択肢を与えてくれている気がします。それを自分で選べるのがうれしいです」

子どもの体調を気遣った上で判断を委ねるというサポートについては、太田さんも「うれしい」と言います。

「こういう言葉をかけてくれると、"ちゃんと私のことを見てくれているんだ"って感じます。私は、影で見守ってくれるようなサポートのほうが、基本的にはうれしいです。でも、ちゃんと言葉に出して気遣ってくれるのも、やっぱりうれしい!」

ただし、「塾を休むか休まないかの最終判断は、自分に決めさせてほしい」とも言います。

「たとえ疲れがたまっているときでも、"負けちゃダメだ!"って気持ちが、心のどこかにあります。どっちの気持ちに従うかは、やっぱり自分で決めさせてほしいです。ただ、私は疲れたから塾を休みたいって気持ちになった経験があまりなかったから、『○ うれしい』くらいが妥当かな」(太田さん)

6人の回答を見ていると、それぞれの個性が大きく反映されていることがわかります。負けず嫌いだったり、意志が強い子どもには「休んだら?」という気遣いは、逆効果でしょう。一方、自分のペースを重視するタイプには、「塾を休む」という選択肢を与えて考えさせるのもひとつの方法です。子どもが疲れているときこそ、我が子の性格を見極めて、サポートの仕方を工夫してみましょう。

褒めてくれるのはうれしい!だけど……

「どんな問題でも、正解できればうれしい。その時にお母さんが褒めてくれたら、もっとうれしい!」(太田さん)

と言うように、母親に褒められると、多くの子どもはやる気がアップします。その上で、過去問の出来がよいときに褒めてくれるのは、喜びもひとしおのよう。「◎ すごくうれしい」を選んだ市川くんは、その理由を次のように話します。

「志望校の過去問であれば、問題のレベルに関わらず、出来がよければ自信につながります。そこで褒めてくれたら、本番に向けてのモチベーションが確実にアップすると思います」

たくさんのテストを受けてきた子どもにとっても、やはり過去問は特別な意味を持ちます。親としては、まさにここが「褒め時」でしょう。

ただし、「"すごいね"と言われたら、素直にうれしいけど、"お母さんには解けないな"という褒め言葉は、ちょっと白々しい」(出村くん)、「あまりにも"すごい!"を連発されると、"本当にそう思っているの?"って、気分になるかも」(渡邉さん)という意見が挙げられたように、言葉選びや言い方には注意が必要です。

特に「お母さんには解けない」という褒め言葉は、避けたほうがよさそうです。多くの受験生は、中学入試の問題が親でも頭を悩ませるレベルであることをすでに理解しています。そのため、やる気アップにはつながりにくく、子どもによってはカチンと来てしまう恐れも。

「何でもかんでも褒められると、言葉が軽く感じられて信用できません。入試直前やすごく難しい問題を解けたときなど、"ここぞ!"というところで褒めてほしいです」(川崎くん)と言うのが、多くの受験生の本音でしょう。

そして、唯一「× あまりうれしくない」と答えた榎本くんは、「自分にとって簡単な問題が解けたとき褒められても、嘘っぽく聞こえます。単に持ち上げているだけような気がします」と、鋭い指摘。

問題のレベルと子どもの学力を見極めながら、シンプルな褒め言葉をかけることが、ベストなサポートと言えそうです。

いつも通りの態度がうれしい

塾のクラスが下がったときに母親がいつも通りに接することについて、6人中3人が「◎ すごくうれしい」を選びました。そのひとりである出村くんは、小5の6月頃にクラス落ちを経験し、3か月ほど元のクラスには上がれませんでした。

「でも、母はそのことには触れず、普通に接してくれたので、ありがたかったです。もし、"クラスが下がっちゃったね"なんて言われたら、軽い口調であっても、気分がドンヨリしたと思います」

「○ うれしい」と回答した太田さんも、小5と小6で1回ずつクラス落ちを経験しました。「私の母は、影で見守ってくれることがほとんどでした。塾のクラスが下がったときも、いつも通りに接してくれました。それがすごく自然な態度だったので、うれしかったです」と、受験当時を振り返ります。

一方で「× あまりうれしくない」と回答したのは市川くん。

「僕は、小5の終わり頃にクラスが下がりました。母には、"もうちょっと勉強しておけばよかったね"みたいなことを言われて……。でも、すぐに"じゃあ、次はがんばろう"って励ましてくれたから、気持ちが切り替わりました。もし、母から何も言われなかったら、逆に"怒っているんじゃないかな"って不安になったと思います」 

母親が不安や怒りを無理に抑え込んでいると、子どもにも伝わるもの。あくまでも「自然体」が重要となります。

塾のクラスが下がる以外にも、受験生のモチベーションがダウンしそうになる場面は多々あります。たとえば、テストの点数が悪かった場合、母親からどんなサポートを受けると、受験生の気持ちは持ち直すのでしょうか。この時も、カギを握るのはやはり「いつも通りの態度」です。

自分の性格について「メンタルがちょっと弱い」と話す榎本くんは、次のように話します。
「僕は、テストの結果が悪かったときに、母から同じことを指摘されたら、余計に落ち込むと思います。でも、実際にテストの点数が悪かったとき、母は特に話題にはしませんでした。だから、立ち直りやすかったです」 

同じように渡邉さんも「いつも通りがいい」と話します。

「反対に、妙に前向きで、"大丈夫!次はよい点がとれるから"なんて言われると、気を遣われた感じがして、あまりうれしくありません」

母親の中には、「励ましの言葉がなくて大丈夫かしら?」と不安を抱く方もいるかもしれません。しかし、いつも通り見守る態度は、母親が考えている以上に子どもに勇気を与えます。

「テストの点数がダウンしても、いつも通り接してくれるのは、母が"きっと学力はアップする!"と、僕のことを信じているからだと思います。励ましの言葉もうれしいけど、『心から信じている』という態度を見せてくれるほうが、気持ちは持ち直します」(川崎くん)

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