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お母さんのひと言が、子どもの考えを深めるのです。
感情的にならずに行動を考えさせる
考える力はもちろん、考えるための判断材料を自ら求める姿勢も、学力を伸ばすためにはかかせません。その姿勢を子どもに身につけさせるために、お母さんはどう子どもに接すればいいのか、菅原裕子氏に聞いてみました。
「たとえば、社会常識や礼儀について、考えてみましょう。小さな子どもは、公共の場でどう振る舞えばいいのか、わからないもの。悪意があって、まわりの人に迷惑をかけることはありません。しかし、そのような場合、多くのお母さんは、叱ることで、子どもに行動の間違いを気づかせようとしてしまうのです。それでは、子どものためにはなりません。叱る代わりに、情報をフィードバックしてあげることこそ、有効なのです。自分のしたことが、まわりにどういう影響を与えていたか。そのせいで、今どんな状況なのかという事実だけを伝えて、子ども自身に自分の行動について考えさせます」
叱る行為は、実は親自身の不安の現れである場合があります。自分をコントロールする意味でも、感情に任せて叱らずに、一歩引いた視点からわが子を見ることが重要と言えそうです。
「フィードバックの際には、“あなたがこうした結果、こうなってしまったね。だから私はこう思っている”というように、お母さんの気持ちも伝えてあげてください。すると子どもは、さらに自分の行動について考えます。そして、ゆくゆくは、お母さんからのフィードバックを受けずとも、子ども自らが冷静に事実をとらえるようになり、考える力をさらに深めていくはずです」
図書館で友だちを見つけ、大騒ぎをしている息子。
まわりの人が、迷惑そうにしているのにも、気がついていないようです……。

息子 (図書館で、友だちを見つけて)あ! ○○君だ! おーい!
母 ちょっと待って。
息子 え!? 何?
母 ほら、まわりをよく見てごらん。あなたが大声を出したから、まわりの人たちがびっくりし ているよ。

「静かにしなさい」という答えを与えるのではなく、まわりの状況を正し く伝えて、子どもに「自分は、どう振る舞わなければいけないか」を、 考えさせましょう。この積み重ねが、「情報を自ら求め、考える」という 力を育んでいきます。(菅原氏)
息子 あ、本当だ。みんな僕を見てるや……。
母 でしょう。あなたがそうやって図書館で大騒ぎをしてると、お母さんも困っちゃうわ。
息子 うん。ごめんなさい。
母 じゃあ、どうしたらいいと思う?
息子 まわりの人に迷惑をかけないように、静かにするね。

・何やってるの! 静かにしなさい!
・○○してあげるから、お願いだから、静かにしてちょうだい。
子どもを等身大で受け止めてあげることが大切です。
子どもなりのペースがあることを認める
子どもは皆、「親に認められたい」「褒めてもらいたい」という気持ちを持っているもの。ですので、学習面で親が子どもの実力以上の結果を期待する言葉をかけ続けると、それは「早く結果を出さなきゃ」というプレッシャーになり、子どもは親の期待に沿う「できる子」を演じようとします。
親に「できる自分」を見せたい気持ちが強くなりすぎると、たとえばテストで間違えることを恐れて極端にアガッてしまい、本来の実力を出せなかったり、悪い点の答案は隠すなどといった行動を取る場合もあります。目的が「親の望むようなできる子になる」ことなので、勉強は楽しいという気持ちになれず、成績はなかなか伸びません。
「“テストでいい点を取りたい”。その思いが、前向きなものなのか、それとも親によく見られるように繕っているのか、親は見極めなくてはいけません」と、四谷大塚高田馬場校舎の菊地忠明校舎長は語ります。
子どもが親の前で繕うことなく、ありのままで安心していられるようにするには、結果をすぐに求めないことです。また、むやみに人と比べるのも、子どもを追いつめます。子どもが努力しているそのままの姿を認めるような接し方、言葉がけが必要なのです。
「子どもには自分なりのペースがあります。コツコツやっているのであれば、たとえその進み具合が親には遅く感じたとしても、叱ったりせずに、努力している現状を認める言葉がけがほしいですね。そうすれば、子どもが自分を繕うこともないはずです」
プレッシャーからか、テストの点数に敏感になっている息子。
返ってきたテストを、あまり見せたがらないようになってしまいました。

母 この前のテスト、返って来たんでしょう?結果はどうだったの?
息子 ……うん。返って来たけど。
母 平均点は何点で、あなたは何点だったの?
息子 平均は70点で、僕は、……65点だった。
母 そうかあ。平均点に届かなかったのね。
息子 今回はあんまりよくなかったけど、明日から毎日家でも3時間勉強するよ!だから、次のテストでは、もっといい点数を取れると思うけど。

自分を大きく見せようとする子、嘘をついてしまう子は、「お母さんを、がっかりさせたくない」「お母さんに申し訳ない」と考えている場合が多いでしょう。それを頭ごなしに、叱ってしまっては、子どもを傷つけるだけ。等身大の自分に向き合うことを、お母さんが優しくサポートしてあげることが大切です。(菊地校舎長)
母 テストはね、今の自分ができていないところがわかればいいのよ。
息子 でもやっぱり僕、いい点取りたいな。
母 よし、じゃあ、テストの復習をしようよ。どこを特訓すればいいか、一緒に考えましょう。

・○○君は何点だったの?
・(子どもの言ったことを鵜呑みにして)そうね、もっと勉強時間を増やさないとね。
そんな子どもの気持ちを大事にすることを心掛ければ、子どもの好奇心は伸び伸びと育まれます。
親が楽しんでいる姿を子どもに見せる
高学年になって学習面で疑問がわいたときに、自力で解決法を見つけ出す力のある子どもは、低学年のうちから、好奇心の芽を十分に伸ばしていることが多いものです。
好奇心を高めるには、子どもが「これ、何だろう?」「どうしてこうなるの?」などと聞いてきたときに、親が「一緒に調べてみようか」と、応じることが大事。辞書や図鑑、パソコンで調べる、博物館や水族館、動物園に行って確かめるのもいいでしょう。「高学年になって疑問の内容がより高度になっても、子どもと一緒に専門書を使うなどして、とことん調べてほしいですね」と、菊地忠明校舎長は、親が関わることをすすめます。
「自分ひとりで調べてみなさい」などと突き放した言い方をしたり、調べた結果を、ただ子どもに見せるだけだと、子どもの好奇心は育ちません。一緒に辞書や図鑑を読み、パソコンのキーボードを押させるなど、子どもが「自分で解決できた」と思えるような、親の働きかけが大切です。
「その経験の積み重ねが、高学年になって、自力で疑問を解決する力になるのです」
親自身が好奇心を持つことも大切です。子どもは、親が好きなことを喜んでやっている姿を見るのが好きですし、そこから学ぶことも多くあります。電車好きな親なら家族で電車旅行をしたり、登山好きな親なら家族で山へ出かけるなど、親の興味に子どもを巻き込んで、一緒に楽しむのがコツだと言えるでしょう。
塾で植物を習ってから、娘が道ばたの草花に関心を持つように。
娘の植物への興味を、もっと育んでやりたいものです。

娘 この草、変な形をしてるね。
母 わ! 懐かしい。これはペンペン草って言うのよ。こうすると、音が鳴るでしょう。
娘 すごーい! おもしろいね。
母 お母さんが子どもの頃は、そこらじゅうに生えていたから、よく取って遊んでたの。

子どもは、親が関心を持っているものに、興味を示す傾向があります。お母さんの実体験を織り交ぜながら話をすることも、有効でしょう。そして、子どもが疑問を持ったら、一緒に調べて、答えにたどり着く過程を、見せてあげてください。その経験が、子どもに達成感を学ばせます。(菊地校舎長)
娘 でも、これ、なんで音がするのかな?
母 確かに! 考えたこともなかった。じゃあさ、一緒に図鑑で調べてみようよ。ひとつ取って帰ろうか。
娘 うん。不思議だねー。
母 ほかにもね、くっつき虫っていうのがいてね。とげとげした小さい実で、洋服にくっつくのよ。それでもよく遊んだなあ。
娘 へえ。変な名前! くっつき虫も、見てみたいな。

・お母さんも、わからないなあ。
・お母さんは忙しいから、自分で調べてみなさい。
普段の親子のやりとりでも、集中力は高めることができます。
低学年のうちは「急かさない」こと
「定規やコンパスを使って線や円を描く」といった、大人には簡単で些細なことでも、初めて体験する子どもは真剣な表情で、慎重に、時間をかけて取り組んでいるはずです。この瞬間、子どもはとても集中しています。親はまず、子どもは何事も習熟するには時間がかかる、ということを理解し、急かさないことが大事です。
「親が言いがちな、“もっと早く!”とか、“いつまでやってるつもりなの”という言葉こそ、子どもの集中の糸を切ってしまうのです。特に低学年までは、このような子どもの真剣な姿に水を差す言葉は、避けてほしいですね」と、四谷大塚南浦和校舎の川上俊彦校舎長は言います。
高学年でも集中力は必要ですが、特に受験勉強においては、じっくりと時間をかけて、集中して考える力と同時に、「集中する対象を短時間で切り替える力」も求められます。
「これも小さい時から集中して何かをやり遂げる経験を重ねていれば、それ程苦労しないでできることです。教室にも、5分休憩にさっと本を出して、読書に熱中する生徒がいますが、そういう切り替えのうまい子は、やはり学力が高いという傾向があります」
高学年で集中力の切り替えがうまくできない場合は、生活の中で「自分で時間を管理する」機会を増やすといいでしょう。たとえば、親子で食事や入浴時間を何分と決め、「7時半までには夕食を食べ、8時までにはお風呂に入ろう」などと約束し、時間を意識させるのも練習になります。
普段落ち着きのない娘が、4時間近くもずっと机に向かっています。
この集中力を、勉強にも活かしてほしい!

母 ねえねえ、何しているの?
娘 図工の宿題をやってるの。夏休みの思い出を描いてるんだよ。
母 なるほど。絵を描くの、好きだもんね。
娘 うん。もうすぐ完成。
母 どれどれ、お母さんにも見せて。あら、旅行のときの絵を描いたのね。すごい!とっても上手に描けてるじゃない!
娘 海の色を、たくさん重ねて塗ったんだよ。あー疲れちゃった。
母 お母さん、さっきから見ていたけれど、4時間ぐらい集中していたね。

「うちの子は、何をやらせても時間がかかる」と言って、「早くしなさい!」と子どもを急かしてしまうお母さんは多いでしょう。しかし、この言葉こそが、子どもの集中を阻害しています。時間をかけて、物事に取り組むことで、子どもの集中力は育まれます。むしろ「集中してえらい!」と褒めてあげるべき。子どもも、「これが、集中するということなのだ」と理解するはずです。(川上校舎長)
娘 えー!!! そんなに時間が経ってた?
母 そうだよ。集中できて、えらかったね。この絵も、きっと先生に褒めてもらえるよ。

・いつまでやってるの?
・早く終わらせてしまいなさいよ。
わが子の成長を後押しするのは、お母さんが投げかける「信頼」の眼差しなのです。
耳を傾けることが大人として扱う第一歩
「成績のバランスがよく、しかも飛び抜けて優秀な生徒は、人と接する態度が大人びている傾向があります。また、以前、お母さんから、“息子を、子どもとしてではなく、一人の人間として接してくれてありがとうございました”という手紙をもらったこともあります」と語る、川上俊彦校舎長。
子どもと言えども、高学年にもなると、人間関係で悩むこともあります。それを見て、親は「うちの子はまだ子どもだから、私が何とかしてあげなくては」などと思い、どうしても“上から目線”でのもの言いになりがち。それでは、「同じ立場で接してくれた」と、子どもは感じないでしょう。
「勇気を出して親に悩みを打ち明けるとき、子どもは、親から“こうしなさい”と言ってもらいたいのではなく、ただ自分の話を聞いてもらうことだけを望んでいる場合もあります。その気持ちを受け止め、耳を傾けてあげることこそ、子どもを大人として扱う、第一歩なのではないでしょうか」
受験においても、同じことが言えます。受験すると決心した子どもは、自分なりに「何をすべきか」をわかっています。それでも勉強がはかどらなかったり、思うような結果が出なかったりと、悩んでしまうのです。そんなときに、親から、“もう間に合わないよ”などと言われたくないのは当然のこと。子どもと一緒に勉強量や勉強法を見直したり、計画を立てたりするなど、子どもを信頼して「応援しているよ」という姿勢を態度で示す方が、子どもの心に響くはずです。
受験校選びに難航しています。
親として、行ってもらいたい学校はあるのですが、息子は一体どう思っているのか……。

母 どこの学校を受験するか、そろそろ決めようと思っているんだけど。
息子 うーん。どうしよっか
母 お父さんとお母さんは、A中学がいいと思っているの。でも、受験するのも、通うのもあなただから。どんな学校がいいと思ってる?

子どもを大人として扱うためには、まずは子どもの声に耳を傾けてあげることが重要です。お母さんにとっては、まだまだ何もわかっていない子どもかもしれませんが、子どもには子どもなりの意見があります。その意見を、対等な立場の人間として、真摯に受け止めてあげてください。そのことで、子どもは、信頼されていると感じ、積極的に物事を考えるようになります。(川上校舎長)
息子 A中学でもいいけど。僕は、理科の授業がおもしろい学校がいい。
母 そうなんだ!B中学はね、理科に力を入れているって聞いたよ。
息子 へえ。その学校、よく知らないや。
母 今から調べてみない?ほかにも、理科の授業がおもしろそうな学校を探してみよう。あなたの意見も聞かせてね。

・あなたは、こういう学校が絶対にいいよ。
・お母さんが決めるけど、あとから文句言わないでよ!
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