元・中学受験生の悩み
二人の元・中学受験生。ともに第一志望に合格したものの、何やら悩みを抱えているようです。彼らの悩みは一体何に起因するのでしょう。


将来の礎となる学力と精神的な強さが身につく
前のページのAさんとBくん。二人に足りなかったものは何でしょうか。それは、"将来の夢"を持ち、そこに向かって主体的に学ぶ姿勢です。子どもにとって、夢は"自ら進んで学ぶ"原動力になります。そして、中学受験という経験を将来に生かすためには、その主体性こそが重要になります。
そうした主体性の大切さを考える前提となるのが、"そもそも中学受験にどんな意義があるのか"。まずはそこを確認する必要があります。
「中学受験に取り組むことで、能力を開花させるための"根っこの力"が形成される」と話すのは、『子どものための苦手科目克服法』『中学受験に合格する子の親がしていること』(ともにPHP新書)など、受験に関する著書が多い小林公夫氏です。
「物事を良く吸収する小学生の時期に勉強を重ねることで、あらゆる判断の源となる論理的思考力と、それの基となるさまざまな力がつき、将来発揮する能力の根っこをつくることができます。根拠や根気、根幹など、人が生きていく上で重要な言葉には"根"がついていますが、勉強においてもやはり根っこが重要。まずはそこをしっかり養うことで、将来、能力という花を咲かすことができるのです」(小林氏)
NPO法人ハートフルコミュニケーションの代表を務める菅原裕子氏も、吸収力の高い時期に勉強することには、相応のメリットがあると言います。
「スポーツの世界では、9歳から12歳の頃は"ゴールデンエイジ"と呼ばれ、あらゆる物事を深く身につけられる時期であるとされています。これは学習にも言えることであり、この時期は砂に水がしみこむようにすばやく知識を吸収できるので、その時期に学問の基礎となる知識を学ぶことは理にかなっています」(菅原氏)
さらに、知能の成長だけではなく、精神的な成長も期待できます。
「困難を乗り越えることで、物事を簡単にあきらめない精神的な強さが身につきます。難問に取り組むことで、試行錯誤して道を切り拓こうとする意志も育まれていくでしょう」(小林氏)
「昨今は自信の持てない子どもが多いと感じますが、勉強の中で、成功体験をうまく積むことができれば、それが自信につながります。目標を合格だけに定めるのではなく、達成可能な"できる"を積み重ねていく。そうすることで、受験を終えたときに大きな自信がついているはずです」(菅原氏)
また、受験生活を送る中で身についてくる良い習慣もあると言います。
「多くの知識と接するうちに、次第に知らないことを知る喜びを発見していきます。一度学びの楽しさがわかれば、その後も勉強の習慣は続き、苦になることもありません」と語るのは、四谷大塚町田校舎の福島大輔校舎長。
渋谷校舎の成瀬勇一校舎長も「時間の使い方もうまくなり、自分の得意、不得意と向き合うことで、自身を客観的に捉える習慣がつく」と言います。

主体性があるかどうかで次第に差が広がってくる
中学受験のメリットはいくつもありますが、受験を経験したすべての子どもがそれらを平等に享受できるかと言えば、残念ながらそうではありません。同じように勉強していても、伸びる子と伸びない子がいるのが実情です。
そのような差を生む大きな要因となるのが、子どもの主体性。"自ら進んで学ぶ"姿勢があるかどうかで、受験の結果は大きく変わってきます。
四谷大塚の講師陣は、子どもと接すれば、すぐにその子が「自らやる子」か「やらされている子」かがわかると言います。
「ノートに親の文字や書きこみが多いほど、子どもの主体性は低いと感じます。ノートとは本来、自分の理解のためにつくるものであり、親がいちいちチェックして納得する必要はないはずです。しかし、どうしても手を出してしまう親もいます。また、忘れ物をしたことを母親のせいにする子どもがいますが、それも『親のためにやっている』と子どもが考えていることの表れだと思います」(福島校舎長)
では、主体性のあるなしで、どのような違いがでてくるのでしょうか。
やらされている子は、親の気分や行動に対し、過敏に反応する傾向があるようです。我が子がしきりに自分の顔色をうかがっていると感じたら、黄色信号かもしれません。
「自らやる意識があれば、言われなくとも勉強しますから、当然親も強制的にやらせる必要がありません。つまり、自分のペースで取り組めるので、ストレスを感じず長期的に安定して努力ができます。自らやることで"学ぶ回路"も開かれるため、吸収力も高まります。やらされている子は、その反対。勉強しろとせっつかれてやる気を失い、さらに強制されるという悪循環に陥ると、ストレスは大きくなり、学ぶ回路が閉じていることで吸収力も落ちます」(菅原氏)
ラストスパートや受験後にも、子どもの主体性が影響を与えます。
「最後の最後に踏ん張れるかどうかのカギは、志望校への憧れです。子ども自身に強い思いがあって勉強している場合、ラストスパートで爆発的に成績が伸びることはよくあります。しかし、親が決めた志望校ならば、なかなか死にもの狂いにはなりきれないでしょう。また、主体性を持って勉強して受験を乗り切ったなら、中学に入っても自ら新たな目標を持つなどして自然に勉強を続けますが、親にやらされていた子は、強制力から解放されたことで勉強しなくなってしまうケースが多く、その後の挫折につながる恐れもあります」(小林氏)

主体性のあるなしで人生が大きく変わる 
中学受験がきっかけとなり、主体性を身につけられたなら、それは将来どのように生きてくるのでしょうか。
経済産業省の調査からも明らかになっている通り、日本企業が今、社員に求めているのは主体性です。
「現代社会において、言われたことしかできないような人財の評価は高くありません。仕事を自らつくり、キャリアをつくり、会社を支えるような人財が求められています。自ら学び、考え、主体的に判断、行動し、より良く問題を解決するという能力は、すなわち人生を生きるための力にほかならないのです。また、自分から取り組む習慣ができているかどうかで、社会で仕事をする上でのストレス度が変わります。主体性のある人は、仕事にも積極的な姿勢で臨めるので、楽しみも発見しやすく、結果的にストレスが減ります。こうして考えると、主体性のあるなしで人生そのものが違ってくると言えるでしょう」(菅原氏)
自ら困難に立ち向かった経験は、精神的な成長を促し、社会に出てもへこたれず、いつも前向きにモノを考えるような強さの源ともなります。
「つまずいても、投げ出さずに自ら考え続けることが習慣化していると、それが自らの道を切り拓く力となります。なぜ失敗したのか、次からはどうすればいいかを考えることで、失敗を成功への糧とすることができるからです。人生においては、目標を目指して努力する過程にこそ、価値ある体験が隠されているのです。伸び悩んだ苦しみの上に、成功の大きな喜びがあるということも、自ら苦労しなければ理解できないことです。努力が実を結んだときの爽快感を早くから味わっておけば、社会に出ても進んで努力することができるようになるでしょう」(小林氏)
将来を決める最初のステップがいつになるかも、主体性によって差が出てくるかもしれません。
「中学受験を経験した子どもには、未経験者より一歩進んだ大人の考え方が身につきます。そしてその分、将来に対しても早くから準備ができるようになるのです。それはたとえば、大学に入ってからやりたいことを考えるのではなく、大学入試の前に夢に向かって走り出せるということ。もし、いつまでも主体性を持てないと、流されるままに生きていくような状態になるでしょう。そうして将来の大きな選択を迫られる就職活動の時期に、途方に暮れることになってしまうのです」(成瀬校舎長)
「数多くの子どもたちを見てきて思うのは、主体性を持って勉強した上で結果が出ると、『自分はやればこれだけできるんだ』という本物の自信がつくということです。そしてそれが、新しいことを学ぶ際の意欲やモチベーションの基になります。自信があればこそ、新たなことにも果敢に自らチャレンジすることができるのです。そしてその姿勢こそ、人生を飛躍させるために、なくてはならないものだと思います」(福島校舎長)


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