あらすじ
「"考える"って、つまりどうすること?」「"わかる"って何?」など、シンプルながら難解な問いに対して、著者が哲学の観点から丁寧に解説する。上手に考えるための作法が身につき、これまでの価値観から一歩抜け出して世の中を見る力が磨かれる。
野矢茂樹ってどんな人?
1954 年、東京生まれ。東京大学大学院博士課程修了後、08 年より同大学院の総合文化研究科教授。哲学や論理学をわかりやすく解説した著書を数多く執筆し、代表作に『論理トレーニング』(産業図書)など。中学校の国語教科書の監修にも携わる。

当たり前のことに気づくおもしろさ
小学生にオススメの一冊を紹介するにあたり、自身が大学院生の頃に読んだ哲学の本『はじめて考えるときのように』を選んだ筑波大学附属駒場中学校・高等学校の澤田英輔先生。「今まで読んだ本の中でも特に印象に残っていて、真っ先に浮かんだのがこの本です。著者の"考えるとはどういうことかを考えよう"というスタンスに感銘を受けました」 本書は6章で構成されており、澤田先生が特に気に入っているのは、第4章「ことばがなければ考えられない」、第6章「自分の頭で考える?」など。「私たちはいろいろな『常識』を持っていて、その中で無意識のうちに言葉の使い方や、ものの見方を限定しています。これは物事を考える上で必要なことでもありますが、その『常識』にばかり寄りかかって物事を見ていると"そもそもなぜ自分は考えているのか?"がわからなくなる恐れがあります。多くの人が当たり前だと認識していることに対して著者が疑問を投げかけ、丁寧に解説して、”なるほど!"と再認識させてくれる。そんなおもしろさが随所に見られます」

否定語から可能性を見い出すことができる
本書の第4章では、考える上で言葉が果たす役割について触れています。「その中に”否定において、ぼくたちは、そこにないものを見ることができる”という一文があります。たとえば、私が部屋の中に居て、机の上には植木とカップが置いてあるとしましょう。私が植木を机の下に隠した後、Aさんが部屋に入って来た。すると、Aさんは机の上にカップがある状況しか知らないので、『植木がない』とは考えにくい。つまり、『植木がない』と表現できるのは、『植木がある』という可能性が頭の中にある私だけということになります」「○○がある」というのは、誰もが気づくことができる客観的事実。一方、「○○がない」というのは、それを言葉で表現する人が無数に考えられる可能性の中からひとつを選び出したことを意味しているのです。「『○○がない』という言葉は、そう語っている人のものの見方が反映される表現だと思います。それに初めて気づかされたとき、『”ある"と”ない"では、随分と性格が異なる表現になるんだな』と、非常に感心したのを覚えています」

異なる価値観に触れ視野を広げよう 
最後の第6章については、「巷でよく言われている”自分の頭で考える”というのは、本当に正しいアプローチなのかを吟味している箇所が印象的」と語る澤田先生。「著者は、『考える』とはひとりで黙々と頭を働かすことだけを指すのではなく、人に相談したり、自分の考えを紙に書くことを含むと述べています」 これは、澤田先生の授業のスタンスにも少なからず影響を与えています。「生徒たちは日々、自分とは違う価値観に出会います。そして、それらに触れることで初めて〝自分はなぜそう考えるのか??と疑問を持ちます。そのため授業では、自分の意見を発表させるとともに、ほかの人の意見に耳を傾ける大切さも伝えたいと思います」 本書では、難しい哲学用語がほとんど使われておらず、やさしい語り口でまとめられています。「文章の合間には、すてきなイラストが載っていて、読者を飽きさせない工夫が凝らしてあります。読書好きな子どもであれば、それほど苦労せずに読み進められるのではないでしょうか」 ただ、さらに一歩踏み込んだ読書をするためには、親が「本に書かれているようなことが、あなたの日常ではどんな事例として表れているかな」などと質問して考えさせるのも、ひとつの方法です。「また家族で本を読み、互いの感想を述べ合うと、視野が広がるでしょう」 澤田先生は、読んだ本の内容や感想を忘れないために、10年来の読書ノートをつけています。ノートには本を読んだ日付、評価(◎、○、記入なしの3段階)、感想のほか、その本を読んだことで新たに興味を持った本のタイトルなどを書き込みます。「長く続けるためには、できるだけシンプルな形にするのがオススメです。もし、少しの間読書ノートが途絶えることがあっても、”また、どこかで始めればいい”くらいの気持ちで取り組むのが、続けるコツだと思います」


 

『たまご-L’OEUF』

ガブリエル・バンサン【作・絵】
86 年刊/ BL出版/ 1,365円

突如、巨大な卵が人々の前に出現。卵を遠巻きに見物したり、調査する人間の様子をイラストだけで表現した異色の絵本。読者の想像力次第で、何通りものメッセージを読み取ることができる。

『名詩の絵本』

川口晴美【著・編】
09 年刊/ナツメ社/ 1,365円

中原中也やまどみちおといった日本を代表する詩人の作品を筆頭に、外国の詩や現代詩も多数掲載。作品ごとに異なる写真 やイラストが載っており、視覚的にも楽しめる。文庫サイズで持ち運びにも便利。

『江戸川乱歩傑作選』

江戸川乱歩【著】
60 年刊/新潮社/ 578円

「二銭銅貨」「芋虫」「人間椅子」など, 初期の作品をまとめた珠玉の短編集。小学生向けに一部書き直された乱歩作品とはひと味違い、淫靡な世界観に触れることができる。

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