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「A」と「B」はどちらが「論理的」か?


野矢茂樹先生(以下、先生)

まず自己紹介しておきましょうか。野矢茂樹といいます。専門は哲学なんですが、『論理トレーニング』という本を出したこともあって、今日は「論理」の授業をします。それで、小学生にはまだ早いかなと思ったけど、ぼくが編集に関わっている中学の新しい国語の教科書に載っている文章を使って、問題を作ってみました。小学生を教えるのは初めてで―普段は大学生が相手ですからね―、ちょっと緊張しています。よろしくお願いしますね。

生徒全員

よろしくお願いしまーす!

先生

さて、「論理」という言葉の意味は知っていますか?

生徒全員

……ぼんやりかな。

先生

じゃあ、「論理」や「論理的」ということがどういう意味なのか、そこから見ていこうか。まず、第1問を見て。

AとB、どっちの方が論理的だろう。と言っても、まだ何も説明してないから、まちがって当たり前。いろんな答えが出てきて、それを受けてぼくが説明をしていくので、最初はまちがえてほしいくらいなんですよ。

あてずっぽうで答えるんじゃなくて、「わからない」ときは「?」を書いてください。おお、分かれましたねえ。うれしいな。「A」が3人、「B」がふたり、岡添さんが「?」。

飯野くんはどうしてBにしたのかな?こういうときにだいじなことは、先生に向かって答えるんじゃないってこと。それだと答え合わせになっちゃう。そうじゃなくて、自分と意見が違う人に向けて自分の意見を説明するんです。たとえば、山田さんに対して、「AじゃないよBだよ」っていう理由を説明する。その後で山田さんには「BじゃないよAだよ」って飯野くんに言ってもらうから。

飯野拓人くん(以下、飯野)

えっと、論理的っていうのは、いろいろな可能性を考えて書くっていう感覚があるんです。Bは、いろいろな観点から見てるから、Bじゃないかなって。先生 Bは「こう考えたらどうだろう」って試しながら結論を出してるけど、Aの方は、考えを述べてるだけだ、そんな感じかな。山田さんは?

山田真理子さん(以下、山田)

私はAで、Bは最後の方に「私は」って書いてあって、自分から見た意見になってる。そうすると、読んでいる相手にはそうは思えないとか、そういうことが起こる。Bは多くの人に「そうだ」って納得してもらえる言葉じゃないと思うから、Aだと思う。

先生

なるほどね。Bの方は「私の意見」で、強く言っちゃうと主観的。だけどBの方は客観的で、「誰もがそうだ」っていう感じがある。だから、Aの方が論理的。岡添さん、どっちの方がいいと思った?こういうとき「?」の人がいるといいね。

岡添紗帆さん(以下、岡添)

……どっちもいいと思った。

先生

どっちもかあ(笑)。

櫻井汐音くん(以下、櫻井)

ぼくはBの方で、Aは最初の問いかけに「特徴的な研究方法とは何だろうか」って書いてあるにもかかわらず、最終的に「科学はけっして万能ではない」って言ってて、なんか矛盾してるような、してないような。

先生

相反することを言ってるわけではないから「矛盾」というわけではないね。だけど、Aはなんだかちぐはぐになってしまっている。最初に出した自分の問いかけに全然答えてなくて、違うことを話してるんですね。藤田くんも手を挙げてたよね。

藤田遥平くん(以下、藤田)

論理的というのは、科学的で誰が見ても絶対そうだって納得するようなことだと思うから、Aの方が論理的かなって。

先生

うん、山田さんと同じ方向かな。Bは個人の意見で主観的になっちゃってるんじゃないかって。

さーて、それではぼくの方から説明をしていきます。「論理」っていうのは、抽象的な内容や科学的な内容だけのものではありません。それから、主観的か客観的かということも、「論理的」ということとは別です。むしろ自分の意見を述べるときの方が、論理的に言わないと伝わりません。

じゃあ、「論理的」ってどういうことかと言えば、いくつかの側面がありますが、今日強調したいのは「一貫している」ということです。だから櫻井くんが言ったことが、すごくポイントを突いている。最初から最後までちゃんとひとつの流れがあって一貫している、それが、論理的ということ。

この問題は少し意地悪で、科学と冷やし中華だったら、科学の方が論理的で冷やし中華の方が論理的じゃない気がしちゃうでしょう。だけど実はAの方は支離滅裂で一貫性がない。つまり、非論理的。逆にBはかなり論理的。少し詳しく見ていきましょう。

最初の文で「科学に特徴的な研究方法とは何だろうか」と問いかける。しばらく「科学にもいろいろある」ということが述べられて、その後、「ときに人はあたかも科学が万能であるかのように語る」と言われる。ここで話題がいきなり変わってますね。ここに大きな溝を感じとってください。

続けて、私たちの「科学」のイメージは16世紀以降のことに過ぎないと述べられますが、これは「科学が万能か」ってこととは、関係ないですよね。もちろん「科学に特徴的な研究方法」という最初の問いかけとも関係がない。それを差し挟んでおいて、最後にまた、「科学は万能ではない」と言う。話は変わるわ、関係ないことが差し挟まれてるわで、よーく見ると支離滅裂なんですね。全く一貫性がない。それに対してBの方は、一貫して話が通っています。(論理CHECK1)まず問題にしたいことがらを提示する。そしてそれを受けて自分が批判したい相手の考えを示す。「冷やし中華は一年中メニューに入れろ」派ですね。続いて、相手のその意見のどこがおかしいのかを述べる。そして自分の意見を、どうしてそう考えるのかという根拠とともに述べる。一貫した流れがあるでしょう?一つひとつがつながっていて、全体がひとつのまとまりを持っている。というわけで、論理的なのはB。


論理的な文章を読み、書き、話すときには、話のつながりをはっきりさせなければいけない。そのためには、接続表現(つなぐ言葉)に注意することが必要となる。話をつなげるつなげ方には大きく分けて次の5通りがある。

言い換える … すなわち、つまり、等
例をあげる … たとえば、等
結論や根拠を示す
・根拠を示す … なぜなら、というのは、等
・結論を示す … だから、したがって、等
逆のことを述べる … しかし、だが、ただし、等
付加する … そして、また、等

第1問で、AとBの文章を見比べてわかったように、「論理的」ということは、つながりが明確ということです。一つひとつがつながっていて、一貫していて、全体がひとまとまりになっているということ。

そうすると、論理的になるために一番だいじなことは「文と文をつなぐ言葉」です。たとえば接続詞などが代表的ですが、接続詞だけではないので、一般に「つなぐ言葉」と言っておきましょう。文章の中にある「つなぐ言葉」をだいじにしていきます。読むときにも、自分で書いたり話したりするときにも、注意していきます。

全部にいちいちつなぐ言葉を入れてしまうとうるさいんですけどね。最初は練習だから、一つひとつ、あえてつなぐ言葉を考えながら、「この文とこの文、この段落とこの段落は、どういう風につながってるのかな」「この箇所は全体の中でどういう役割を持っているのかな」ということを考えながら読む。その練習を繰り返すことが、論理力の基礎体力を作るんです。

あまり細かい分類をしてもしょうがないので、本当に大まかに分けると、つなぐ言葉は次の5種類です。

言い換える。「すなわち」、「つまり」などです。
例を挙げる。「たとえば」ですね。
結論と根拠を示す。これはふたつに分かれていて、根拠を示すなら「なぜなら」や「というのは」。結論を示すには「だから」や「したがって」です。
逆のことを述べる。「しかし」「ただし」など。
付加する。「そして」、「また」などですね。

ひとつ注意しておいた方がいいのは「つまり」。これは言い換えるときにも使いますし、結論を言うときにも使います。便利だけど、少し曖昧なところがあります。

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