1 大前提は、子どもをよく知ること
  子どもが今、何をがんばっているのか、どんな悩みを抱えているのか、お母さんは知っていますか?
  学力を伸ばすコミュニケーションは、まず、子どもをよく観察することから始まります。

子ども全般の傾向とわが子の個性を把握

 資格予備校での司法試験対策講座の講師、中学受験の家庭教師などの経験を活かし、『「頭が良い子」の親がやっていること』(大和書房)など、受験に関する著書を多く持つ小林公夫氏。「子どもをよく知ることが、よいコミュニケーションの大前提」と言います。

 「まず、子どもというものは全般的に、大人が思っている以上に、大人の言うことを理解することができないものだという認識を持ちましょう。“5円と10円のアメを2つずつ買ったら、いくらでしょう?”というレベルの話でも、小学校低学年では、瞬時に内容を把握して計算できる子は少ないものです」

 そのため、親子の会話では、できるだけ具体的な表現・言葉を使うように心がける必要があります。

 「“どうしてできないの?”と、感情的に叱っても、意味がありません。子どもは、その“どうして”がわからない。ですので、具体的に“何ができないのか”“できるようになるためには、何をしなければならないのか”を、コミュニケーションの中で、追究していく必要があります。とは言っても、このように冷静に話をするのは、いつも子どもの近くにいるお母さんには、難しいことなのかもしれません。そんなときは、お父さんや塾の先生に協力を仰ぐのも、ひとつの手です」

 子どもを褒めるときも、具体的・発展的に声をかけることが重要です。

 「たとえば模試の結果なども、“算数がよかったね”などと具体的な教科名をあげて褒めることから始め、“今回の理科のテストは、子どもの苦手な生物・物理の分野からの出題が多かったので、多少、点が悪くても仕方ないな”といったレベルまで分析できると、よりよいでしょう。そして、“苦手な物理だけど、その割には点が取れたね”などと声をかけるのです」

 できないことができるようになるプロセスを褒めるのも、有効な手段。

 「“今まで大人から3回ぐらい言われないとできなかったことが、2回言われてできるようになった”という程度のことでも、“2回でできるようになったね、すごい! そのうち1回でできるようになるといいね”と褒めましょう。そのためには、“わが子は何が苦手で何が得意なのか、何が好きで何が嫌いなのか”“今どんな成長の過程にあるのか”といった、子どもの個性・特性を把握することが必要です」

 子どもの全般的な傾向に加え、わが子特有のキャラクターまでよく知ることが、よい親子のコミュニケーションの前提条件ということなのでしょう。

 「また、褒めてばかりいればいいというものでもありません。失敗の原因を分析しない、自分を甘やかす、自分が正しいと思い込む、人の話を聞かない、などの傾向が見られたときは、注意すべきです。その際も、褒めるときと同様、客観的事実に基づいた指摘を行い、悪い部分が少しずつでも改善されるよう、発展的な話し方を心がけましょう」


会話レッスン1
  塾のテストで好成績を取り、塾のテストで好成績を取り、ひとつ上のクラスに上がることになった息子。
  大喜びしているようだけれど、このまま気を抜かずに、勉強に励んでほしいなあ……。

 すごいじゃない! おめでとう。苦手な食塩水の濃度の問題、間違えたところを、何度もくり返し復習していたもんね。

「原因」→「結果」を認識させる
「なぜ今回、テストの点が上昇し、クラスが上がったのか」を、具体的に分析して、褒めてあげてください。そのために、子どもが各教科のどの分野をがんばっていたか、明確に把握しておく必要があります。そのような具体的な声がけであれば、子どもは「原因」→「結果」を考えるようになり、「次も同じ方法を試そう」と、自発的に勉強を始めます。(小林氏)

息子 そうだなあ。算数の成績は、この前よりすごく上がったなあ。でも、国語は前と同じくらいだった……。

 答案を見たけれど、前回も今回も、物語文の読解のところで、点を落としてるから、食塩の濃度の問題を復習したように、もう一度やってみたら?

息子 長い文章を読んでいると、途中からどこを読んでるのか、わからなくなっちゃって。

 じゃあ、塾の先生に相談してみたら。「問題文を最初から最後までしっかり読み込むには、どうしたらいいですか?」って。

わかったふり、できるふりはさせない
親や先生の顔色をうかがって、「こんなことは聞けない」という子は、伸びません。「わからないと宣言することは、恥ずかしいことではない。大丈夫」ということを、お母さんが子どもに伝えてあげましょう。また、お母さん自身も、どんな質問も受け入れてあげる度量を身につけることが大切です。(小林氏)

息子 わかった! 今度、聞いてみるよ。

 すごいね! おめでとう。がんばってたもんね!

息子 うん。でも、国語は前と同じくらいだったなあ。

 えーっ!そうなの。算数がいくらよくても、国語で足を引っ張ってちゃ、ダメよ。それに、算数だって、まだまだ100点じゃないんだから。次は国語でもいい点取れるよう、気を引き締めて勉強しなくちゃ。

全教科が満点でなくてもいい。
どの教科も、100点満点をとらなくてはいけないという考えは、子どもを「いつもハラハラドキドキ」させてしまい、精神的に追いつめてしまう可能性があります。テストの平均点はどれくらいなのか、それとの比較でどれくらい取れているのかなどを冷静に見て、かける言葉を選びましょう。(小林氏)

息子 長い文章を読んでいると、途中からどこを読んでるのか、わからなくなっちゃって。

 国語なんて、所詮日本語なんだから簡単。算数や理科と違って、難しい計算もないし。うかうかして、また下のクラスに落ちないようにしなくちゃね。

否定的な声がけはNG
子どものやる気を上げるための声がけは、ポジティブでなくてはいけません。マイナス面にばかり目を向け、ネガティブな言葉がけをしても、「じゃあ、次はこうやって勉強してみよう!」という前向きな姿勢は生まれてきません。「ダメな原因を充分に分析して、こうすると、もっとよくなる」という発展的な声がけをしてください。 (小林氏)

息子 うん。。。

2 家庭の中で役割を与える
  勉強に本気になれない子どもは、受験をどこか他人事であると感じているのかも。
  その突破口は、自分の役割を意識させるお母さんのコミュニケーションにあります。

与えられた役割が将来の目標の土台に

 小林公夫氏は、「早くから子どもに自己の役割を意識させることも、中学受験を通して、子どもを成長させるために大事になってくる」と指摘します。

 「家庭の中で、子どもに役割を与えましょう。犬の散歩や食事の支度など、継続的に取り組めて、ややハードルの高いものがいいと思います。自分の役割を果たし続けていくうちに、“これは自分の仕事である”という責任感、また、他人から言われなくても行動することの大切さや、喜びを得ていくのです。そうなれば、受験勉強の面においても好影響を及ぼすことでしょう」

 また、勉強面でも、ドリルの丸つけを子ども自身の役割とするなどの工夫が考えられます。

 「これは賛否両論ありますが、自分が何ができていて、何ができていないのかを、丸つけをすることによって意識させるのは、重要だと思います。また、“円とは何か?”などと物事の定義について質問し、自分の言葉で子どもに答えさせるのもいいでしょう」

 家庭とは、社会の縮図とも言えます。その中で自分の役割・自己の存在を意識させることは、将来、社会や国に対して自分の果たすべき役割は何かと考えるための、土台となっていきます。

 「将来の夢、自分はどんな職業に就いて、日本という国や国際社会全体に対してどんな風に貢献したいのか、と考えるきっかけができるということですね。家庭の中で自分が果たす役割があるように、社会の中で自分が成すべきことがあるのではないか、という発想が得られるわけです。私はそれを“公共性”の修得と位置づけています」

 ではなぜ、早くから公共性を身につける必要があるのでしょうか。

 「それは、“なぜ中学受験をするのか”という根本的な問いかけと共に考えてみてください。中学受験の国語の入試問題は、論理的な読解力・思考力が要求される論説文、他者の心情を読み取る能力をみる物語文、いずれの読解にしてもリーダーの資質を問う問題にシフトしている、という傾向があります。それは、東大など最難関大学の小論文問題にも共通していること。また、理数系の科目でも、中学受験からの大きな課題は、推理・抽象化・集合・出題条件の整理要約・直感力や着眼力などで、やはりリーダーに必須のスキルが求められています。“中学受験=将来のリーダー養成”と考えたとき、志のないリーダーなどありえないのです」

 わが子に公共性を獲得させたいなら、まず親自身が公共性を持つことが必要です。政治や国際問題などに無関心な親では、わが子の成長は望めません。

 「最近では、とても意識の高い、特にお父さんの姿が増えたと感じています。“わが子をこんな風に育てたい”“子どもにはこんな人間になってほしい”、といった方針を念頭において、ただ単に会話というのではなく、親子のコミュニケーション、すなわち意思疎通を図る努力をすべきでしょう」


会話レッスン2
  娘に、責任感を持ってもらおうと、毎日の食器洗いをさせることに。
  慣れない手つきで、食器を洗っているけれど、大丈夫かしら?

 食器洗いも、なかなか大変でしょう。

 もう疲れたよー。

 ほら、ただスポンジでこすってるだけじゃなくて、汚れがキレイに落ちているかどうかを確認しながら、洗いなさいよ。


自分の行動の目的を考えさせる
食器洗いは、ただ食器を洗うという行為ではなく、あくまでも食器をきれいな状態にすることが目的です。がんばっていることは、もちろん認めてあげるべきですが、「何のためにするのか」を、子ども自身に意識させてやることが、親の役割です。(小林氏)

 はーい。早く終わらせて、テレビ観たいなあ。

 1枚洗っては水で流すでは、効率が悪いわね。それでは、時間がかかり過ぎるんじゃない?まとめて水で流した方が、すぐに済むわよ。

どんなことにも工夫ができる子は伸びる
勉強するとき、疑問点のあるページに付箋をつけ、後から見直しをしやすくするといった工夫をしている子は、学力が高いです。目的をしっかり理解し、それを達成するために工夫をするきっかけを、お母さんが勉強以外の会話の中で教え、身につけさせてあげてください。(小林氏)

 確かに! お箸とかフォークも、まとめて一気に洗っちゃった方が早いね。

 あなたが、食器洗いをしてくれるから、お母さん、とっても助かるよ。ありがとうね。

 えへへ。どういたしまして。

 食器洗いも、なかなか大変でしょう。

 もう疲れたよー。

 まだ始めたばっかりでしょう!口を動かすんじゃなくて、手を動かしなさい。

手を抜いたら必ず冷静に諭す
子どもが、自分自身を甘やかしたり、手を抜いたりした場合、母親が安易に手助けするようなことは避けてください。そのような場面では、子どもを冷静に諭すべきです。困難な仕事だからこそ、自分の役割の大切さや、達成感が得られるのです。(小林氏)

 はーい。早く終わらせて、テレビ観たいなあ。

 そうやって、ダラダラやってるから終わらないんでしょう!……もう、結局あとで、お母さんが洗い直すことになるんだから。

 私が洗うよりも、お母さんがやった方が、絶対早く終わるよ。

 お母さんはね、あなたのためになると思って、やらせてるの。

「人のためになること」の大切さを教える
将来、わが子には社会のリーダーになってほしいと考えるお母さんにとって、「誰かのために、何かをする」ことを子どもに学ばせるのは、とても大切です。「あなたのためにやらせている」と言うより、「周囲の人間が助かっている」と感謝を伝えるべきでしょう。(小林氏)

 えー。別にそんなこと、しなくてもいいのに。

3 子どもを待つことも大切
  頭のよい子は、"心の風通し"がいいいと言います。
  明るく素直で前向きな姿勢を身につけさせるには、発破をかけるのではなく、子どもをじっと待ってみる。
  これも、お母さんの大事な仕事なのです。

肩の荷を下ろしてやるのもお母さんの仕事

 小林公夫氏は、中学受験の難しさを親が自覚することの重要性についても、語ってくれました。

 「子どもは、小学校での学習をこなした上で、中学受験の受験勉強をしているのです。大人でも、普段の生活の中で、仕事や家事以外に、毎日数時間、集中して何かを継続しなければならないのは、難しいことでしょう。また仕事でも、上司や同僚、部下のミスに対して、いきなり怒り出したりせず、相手の立場を理解しようとしますよね。それと同様に、子どもとコミュニケーションを取るべきです」

 「わが子は、中学受験の勉強という難しいことをしているんだ」と考え、ときには、子どもの肩の荷を下ろしてやるのも、お母さんの仕事だと言います。

 「たとえば、じっと机に座って、勉強できない子がいるとします。お母さんにとってみれば、すぐに叱りたくなるような光景でしょう。しかしそこで、少し想像力を働かせて、“もしかしたら、問題の難易度が高すぎるのでは?”と考え、“基礎問題を解き直そうか”と言えるかが、重要なのです」

 また、子どもに“間違えてもいい”と伝えることも、肩の荷を下ろしてあげる行為です。

 「周囲の目を気にせず、積極的に発言をし、間違ってもあっけらかんとしている子は、間違いなく伸びます。お母さんが正解ばかりを求めると、子どもが、間違うのは恥ずかしいと感じるようになり、消極的になってしまいます」

 子どもの状態を無視して、ただ追いつめるだけになってしまうと、親が何を言っても反発する、反抗期になってしまいます。

 「本格的な反抗期を迎えると、元に戻すのはとても難しいのです。子どもが部屋に閉じ込もるなど、反抗期の兆候を見せることがあるかと思いますが、その段階では、子どもを放っておくべきでしょう。しばらくすると、子ども自身も“このままではいけない”とサインを出しますから、そこに親は敏感に反応すべく、アンテナを張っておくといいと思います」

 一方で、子どもの自主性に任せきる、完全な放任主義は避けた方がいい、と小林氏。

 自主性が芽生えて勉強するようになるか、まったく勉強しなくなるかのどちらかになりますが、得てして人は楽な方に流れがちなもの。“お母さんは、毎日1ページやるのがいいと思うけど、どう?”などと、ある程度の方向性を親が示すべきでしょう。あくまで押しつけにならないように、最後の決定は子どもにゆだねます」

 子どもが「嫌だ!」などと反発した場合は、その理由を話させることも教育上、効果があると言います。

 「親はあまり理屈っぽくならないように。社会に出ても、拒絶したい意思を、筋道を立てながらやんわりと相手に伝えるというコミュニケーション能力が必要ですよね。その訓練にもなります」


会話レッスン3
  成績が下がったことを叱ると、自分の部屋に閉じ込もってしまった息子。
  こんな反抗的な態度は初めてなので、どう声をかけたらいいか戸惑います。

 まあ……そんなにカッカしないで、少し落ち着いたら、お茶を飲みにおいで。

子どもからのアクションを待つ
お母さんが感情的になればなる程、子どもも同じように感情的になります。力で押さえつけるのではなく、ここではひたすら子どもの出方を待つ姿勢が大事。反抗的な態度を取った子ども自身も、母親に口答えしたことを反省しています。また、成績が下がったことで追いつめられている子どもの気持ちも、考えましょう。(小林氏)

息子 ……わかった。

 さっきは言い過ぎてしまって、ごめんなさい。ほかにも何か、不満に思ってることがあったら、お母さんに話してごらん。

息子 4教科とも成績が落ちちゃって、もう僕どうすればいいかわからない!

 なんだ、そんなことか……。

息子 えっ!?

 お母さんと一緒に、今何ができて、何ができないかを科目別に考えてみようよ。優先順位を決めて、一つひとつ成績を上げていけばいいんだよ。

子どもの心の重荷を外し、気持ちを整理してあげる
成績が落ちて、パニック状態になっている子どもは、「自分は何をすればいいのか」を冷静に考えられません。そのようなとき、子どもが今「できること」と「できないこと」を整理してあげ、子どもの肩の荷を下ろしてあげてください。(小林氏)

 そうだね。わかった。

 いつまでふてくされているつもりなの!?

息子 ……うるさい!

 そうやって難しいことに背を向けて、逃げてばかりいても、始まらないよ。

逃げることを批判せず、むしろ逃げ道を作ってあげる
子どもは、追いつめられると、反抗します。その兆候が見えたら、まずは逃げ道を作ってあげることに徹しましょう。ただ、一旦勉強から離れるにしても、いつまでもダラダラさせるのではなく、明確に期間を区切ることは必要です。(小林氏)

息子 4教科とも成績が落ちちゃって、もう僕どうすれば いいかわからない!

 どうすればいいって、それは勉強するしかないでしょう。

息子 ……。

 1に勉強、2に勉強、成績を上げるには、勉強しかないのよ。

できている科目を活かす方が◎
追いつめられているとき、子どもは自信を失っています。なので、まずは自信を回復させてあげることが先決です。「できないことをできるように」というよりも、「できることを活かしていく」という発展的な声がけが有効です。(小林氏)

息子 僕なんか、勉強したってどうせできないよ!もう放っておいて!

4 できないことも、まずは受け止める
 大人には簡単でも、子どもには難しいことがたくさんあります。
 できないことに対して、お母さんはどう接するべきか。そこに、子どものやる気を上げる秘訣があります。

安易に励まさずにまずは共感してあげる

  「子どもを無下に叱ってはいけない」そう思いつつも、テストで悪い点を取るなどして、落ち込んでいる子どもに、どう接すればいいかと悩むお母さんは、多いのではないのでしょうか。励ますべきか、慰めるべきか……。どのようなコミュニケーションを取ればいいかを、NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事・菅原裕子氏にお聞きしました。

「お母さんの中には、“叱ってはいけない。とにかく励まさなければ!”と考えている方もいるようですが、場合によっては、子どもが心を閉じてしまう可能性もあります。まず、子どもの成績と、落ち込んだ気持ちを受け止めてあげることが大切でしょう」

  励ますことは、一見、有効そうにも見えますが、実はここに、コミュニケーションの難しさがあるようです。

  「“あなたは、やればできるから大丈夫”。このような前向きに思える励ましは、自発的に勉強しているような子どもであれば力になるでしょう。しかし、まだそこまでモチベーションが上がっていない子どもの場合、“落ち込んでいることをお母さんに受け止めてもらえなかった。無視された”と感じてしまうことがあるのです。その結果、勉強に対するモチベーションも上がらないまま、受験を迎えることもあり得ます。それを避けるためにも、まずは親が子どもに共感してあげることですね」

  子どもにとって、親は最も自分の気持ちをわかってほしい存在。否定や安易な励ましは避けた方がよさそうです。

  「とは言え、共感するだけで終わってしまうわけにはいきません。その気持ちを、再びプラス思考にするためには“どうすればよくなるか”を説き、“できないところができるようになった”と感じさせてあげることが必要です。そのために重要なのが、短期目標。」

  「子どもにとって、志望校に合格したいという思いを持続させて、努力をするのは、とても難しいことです。それよりも、身近な短期目標を提示する方がよいでしょう。どんな小さな目標でも構いません。ある程度、気楽に取り組める目標を、親子の会話の中で設定してみてください」

  小さな短期目標をクリアしていくことで、やればできるということを自ら体感し、子どもの心はどんどん肯定的になってきます。そうすると、勉強へのスタンスも変わります。

  「物事に対して、肯定的であることは“頭のよい子”の条件のひとつです。難しい問題や新しい知識に対して、尻ごみすることなく楽しんでチャレンジする姿勢は、知能を育む上でも有効です。受験だけではなく、将来を考えても、前向きな考えは、障害を乗り越える力の源ともなりますから、ぜひとも前向きに育ってほしいものです。子どもは、親のコミュニケーション次第で、いくらでも肯定的になることができます。親自身も、子どもの前では、明るく前向きでいるように心がけたいですね」       


会話レッスン2
  息子がテストで悪い点数を取って、帰って来ました。
  「いい点を取るなんて、どうせ自分には無理なんだ」と、あきらめモードに入ってしまったようです。

 今日のテスト、何点だったの?

息子 ……50点。やっぱり僕、勉強はダメだね。

 そっかぁ。50点だったから、がっかりしているんだね。

母の理解が子どもを前向きに
悪い点数を取って、子ども自身うれしいわけありません。がっかりしているという気持ちを受け止めることで、子どもも「お母さんは、自分のことを理解してくれている」と思うはず。また、その喜びが足がかりとなり、勉強への前向きな姿勢を作ります。(菅原氏)

息子 別に! そんなんじゃないよ。

 そうなの。でも本当は、何点ぐらい取れたらうれしかったの?

現実的な点数を意識させる
テストで50点を取って、がっかりしている子どもに、いきなり80点を取りなさいと言っても、「どうせ無理だ」となるだけ。もっと現実的な点数を、意識させてあげましょう。「これだったら、自分にもできるかもしれない」と思わせることが大切です。(菅原氏)

息子  んー。70点くらいかな……。

 じゃあさ、70点を目指して、次のテストでは、今回のテストの+5点、55点を取れるように勉強してみたら?

息子  5点だったら、できるかもしれないね。

 今日のテスト、何点だったの?

息子 ……50点。やっぱり僕、勉強はダメだね。

 ほら、すぐそうやってあきらめる!そんなことないよ。絶対できるよ!

漠然とした励ましはNG
中学受験を目指している子どもが、テストの点に無関心であることは、ほぼありえません。傷ついた心を隠すために、無関心なふりをしているだけ。ですので、お母さんがその心の傷を無視して、ただ漠然と励ますのは逆効果でしょう。(菅原氏)

息子 どうせ、できないもん。勉強嫌いだし。

 そんなことばっかり言って。がんばって勉強しないと、中学受験なんてとても無理よ。

不吉な予測で追いつめない
子どもの未来に、不吉な予測をすることは避けましょう。子どもは追いつめられ、自己否定をするようになります。「自分はできる!」という自己肯定感を育むためには、「○○したら、こんないいことがある」という伝え方がよいでしょう。(菅原氏)

息子  別に、いいよ

 とにかく、 次のテストでは、80点くらいとれるように、がんばりなさい!

息子  ……。

5 ときには、失敗から学ばせる
  子どもの行動に手出し・口出しをしてしまうのは、子どもに失敗をさせたくないという、母の愛情。
  しかし、やっぱり「失敗は成功のもと」なのです。

過保護になりすぎず自立へと導く

 常に子どもの先々を案じ、失敗をする前に、手出しや口出しをしてしまう……。このような過保護なお母さんもまた、子どもをダメにしていると、菅原裕子氏は語ります。

 「たとえば、忘れ物についてでしたら、“ほら、体操着を忘れているじゃない!ちゃんとカバンの中に入れておかなくちゃダメじゃない!”と、お母さんが子どもを叱咤することで、忘れ物を減らすことはできるでしょう。しかしそれでは、子どもが成長しません。自分が学校の準備を怠っていたことで、体操着を忘れ、それが原因で先生に叱られる、などの失敗体験から学ばせることも、大切な教育のひとつです」

 自分のことを自分でできるというのは、すなわち、段取りを組めるということ。中学受験はもちろん、その後の人生にも活きる力です。

 「お母さんから与えられたものを、何も考えずに受け入れるだけでは、社会に出てから、大変な苦労をすることになります。社会人になっても、ひとりで起きられない“子ども”に、なりかねません。小学生の頃の失敗は、たかが知れていますよね。受ける傷も小さく、親が十二分にカバーできる範囲のものばかりでしょう。なので、子どもが失敗する前に手を出すより、失敗した後のフォローをしっかりしようと、お母さんも意識を改めてください。まずは子どもに寄り添い、失敗の原因や対策を一緒に考えてあげる。そうすることによって、子どもも、自己を管理する力を養っていきます。ひいては、子どもの自立につながっていくはずです」


会話レッスン5
  娘は、朝起きるのも、学校の準備も、すべて親任せ。
  今日はあえて手を貸さなかったところ、学校に遅刻をしてしまったようです。

 今日、遅刻をして、先生に叱られちゃった……。

  そっか。じゃあ、学校に遅刻しないためには、どうしたらいいか、一緒に作戦会議しない?

自己管理の方法を教えよう
子どもは、「遅刻をした」という後悔だけでは、何も学びません。子どもが、遅刻をしないように、自ら段取りを組めるようになるには、やはりお母さんのサポートが必要。「どうしたらいいか」を一緒に考え、自己管理の方法を子どもに教えましょう。(菅原氏)

 うん。

  今日は何で、遅刻しちゃったんだろうね。

 いつも、お母さんが学校に行く準備をしてくれるのに、今日はしてくれなかった。

 そう。自分でやってみて、どうだった?

 やらなくちゃいけないことがいっぱいあって、 大変だった。時間がかかっちゃった。

 じゃあ、どうしようか?

  う~ん。準備は夜のうちにして……。でも、「今、何時だよ」って、言ってくれる?

 よし! 明日から、その作戦を試してみよう!       

 ・いつもお母さんに任せっ放しでしょ。だから失敗したんじゃない。

 ・どうして、自分のことを自分でできないの?

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