国家発展の鍵となる法制度の整備を
専門家の立場で支援

カンボジアってどんな国?

人口:1,339万5,682人
(2008年3月調べ)
面積:181,035km&2;
首都:プノンペン
在留邦人数:889人
(2010年調べ)
日系企業数:48社
(カンボジア日本人商工会正会員数)

世界文化遺産にも登録されているアンコールワットで有名なカンボジア。国の主要産業は観光業であり、政府はアンコールワット以外の観光スポット開発に、力を注いでいる。長く続いた内戦の影響により、2009年の国内総生産は、約108億ドル。経済規模はまだ小さいが、今後急成長を遂げていく国であろう。

相手国の自立のために要請を拒む決断も

アジアの近隣諸国に後れをとるまいと、急速な経済成長を遂げつつあるカンボジア。一方で、相次ぐ内乱で国家機能が停滞し、しばらく法律自体が廃止されていた現実も抱えています。日本は、ODAの一環として1999年よりカンボジアの法制度整備支援を開始しました。その結果、カンボジアでは、日本の起草支援による民事訴訟法が2006年に成立。翌年には民法も成立しました。できたばかりの法律を正しく理解させ機能させるには、法曹相手国の自立のために要請を拒む決断も人材の教育・養成も必要です。人材育成活動は、ODAの実施機関である国際協力機構(JICA)を中心に進められ、法務省からは現役の検察官が専門家として現地へ派遣されます。  

「カンボジア行きの辞令を受けたときには、そういう仕事もあるのかという程度の認識でしたから、正直言って面食らいました。前任者と連絡を取りながら現地での任務を把握する準備期間はありましたが、実際にカンボジアへ赴くと、やはり驚いたり気づいたりといったことはいろいろありましたね」 成長著しいとはいえ、発展途上の段階にある国。成熟した日本のビジネス社会のように、「物事が整然と効率良くかつ迅速に行われるケースは少ない」と感じたそうです。

「初めのうちは焦ってイライラすることもありました。どうしても日本と同じペースを期待してしまいますから。それでもカンボジアでの生活を続けるうちに考えが改まったと言いますか、郷に入っては郷に従うほうがうまくいくだろうという気持ちになりました。それで2年経って日本に帰ってきてみたら、はたしてどちらが正しいのかとさえ思いました。日本では当たり前とされることも、グローバルにとらえると必ずしもそうじゃないんです」

裁判官・検察官の養成支援が始まった当初、日本から派遣された専門家が学生に直接講義を行っていました。ある時期からは、卒業生の中で教官になることが見込まれる「教官候補生」に指導し、彼らが学生に講義するという形式をとってきました。人材育成における自立を促すためです。ところが、カンボジア人教官たちの本業が忙しくなり、指導体制の存続が困難になる事態に陥ってしまったそうです。

「教官候補生だけでなく学生にも講義を行ってほしいという要請が、当然のことながらカンボジア側から私に対してありました。でも、それを承諾すれば、彼らの自立は遠のいてしまう。自立というお互いの本当の目的のために、現地人教官による指導を何とかして続けるよう説得しました」

結果的には、教官候補生たちが想定していた時期よりも早い段階で教官として教育の場に投入され、カンボジア人による指導は続行されました。

「かえって教官候補生のモチベーションを高める結果につながってよかったです。彼らの指導のクオリティという点ではまだまだ改善の必要があると感じました。しかし、教室内から自信に満ちた教官の声が聞こえてきたときに、本人の顔が思い浮かんで、ほっとすると同時に喜びが心の底からじんわりとわき上がってきたのも事実です」

建元さんのカンボジアでの日々に張りを与えたのは、日本にいたときにはあまり味わうことのなかった「人と国が育ってゆく喜び」でした。

教える仕事を通じて教えられた2年

普段はカンボジアの法曹人材として働く教官候補生に建元さんが講義を行ったのは、週に1回。金曜日の午後のみ。講義を行う相手がすでに裁判官などの仕事を持っている人たちなので、都合できる時間が限られるためです。講義以外の時間は、教官候補生の作成した原稿を添削するなどして教材を作る、頻繁に寄せられる質問に回答するといった業務に費やされます。また、カンボジアの公用語はクメール語という言語のため、講義は英語を話せる通訳を介して進められます。現地人通訳に対して講義内容の理解を促す下講義も行なわなくてはなりません。  

「私が英語で講義をした後に通訳がクメール語に翻訳して内容を教官候補生たちに伝えるというのが講義の形式です。ですから、通常の講義にくらべれば2倍の時間がかかりますね」

根気の要る2年間の任務を全うした建元さん。「コミュニケーションにおける障害を乗り越えようとがんばれたのは、教官候補生や学生たちの勉強に対する熱意に心を動かされたから」と言います。教官候補生はカンボジアの各地から講義のたびに集まってきます。遠方から半日かけて毎回駆けつける人や、40代でベテラン書記官のキャリアを有しながらも裁判官を目指して養成校に入った人もいたそうです。

「養成校では法曹を目指す人材の養成だけでなく、現職裁判官に対する継続教育も実施しています。中には自分が対象となる講義以外にも積極的に参加して勉強の好機を最大限に活かそうとする人もいました。自分自身が学生だった頃を振り返って反省したくなってしまうほどの熱心さで、だれもが勉学に打ち込んでいるんです。『せっかくいい法律ができたのだから、国のために活用しなければ意味がない』という思いがあるからなんでしょう」

建元さんは「幸か不幸か、今の日本ではこういう必死な姿を目にする機会が減っている」とも感じたのだとか。

「そう感じたことも含めて得たものは大きいです。人生観に少なからず変化をもたらした2年間でした。教える立場にいましたが、それ以上に教えられた気がしています。5年後、10年後のカンボジアをまたこの目で見てみたいですね」

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