「飢餓に苦しむ10億人の人たちをミドリムシの力で救いたい」

出雲充氏(株式会社ユーグレナ 代表取締役社長)夢をかなえるために大事なこと3つ

弁論大会をきっかけに食料問題を考える

出雲充氏
1980年に広島県で生まれ、東京都で育つ。東京大学農学部卒業後、銀行勤務を経て、2005年に株式会社ユーグレナを設立。2012年にジャパン・ベンチャー・アワード「経済産業大臣賞」を受賞、2015年に第1回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」を受賞する。

  生まれは広島県ですが、その後に東京都の多摩ニュータウンという大きな団地へ移りました。

  東京都の中では自然が豊かな環境でした。弟と二人でザリガニを大量に釣ってきて水槽で飼ったり、野山で遊んで泥団子をつくったりして毎日遊んでいましたね。

  思い返してみると、どれだけ遊び回っていても母から「勉強しなさい」と言われませんでした。そのうち、「友だちの家に比べて、こんなにも勉強しろと言われないなんて、うちはめずらしい家庭なんだ。自分でがんばらないとまずい」と考えるようになり、勉強をがんばるようになったんです。もしかしたら母の戦略だったのかもしれません(笑)。

 小学校卒業後は駒場東邦中学校に進学。体育祭、文化祭などの行事がとても楽しくて、部活ではテニス部に入って練習に打ち込みました。

中3のときにクラス対抗の弁論大会に出場したのも、思い出深い経験です。当時は「人口爆発」という言葉がメディアで盛んに叫ばれていて、「世界の人口がこのまま増続けると、未曾有の食料危機がやってくる」と訴える研究者のレポートが注目を集めて食料資源が使われているか」というテーマを選び、グラフや図を用いて発表しました。残念ながら優勝はできませんでしたが、校長先生が「よく調べていた。とても良かったよ」とほめてくれたんです。 中学に入った頃は「飢餓」という言葉は馴染みがありませんでしたが、弁論大会の下調べをするうちに、世界には十分な食事をとれずに苦しんでいる人が大勢いること、自分は平和で恵まれた環境にいるという現実を痛感しました。

そして高校生になってからは、世界から食料問題や飢餓をなくすために国際連合で働きたいと思うようになったのです。

目標を見失ってからミドリムシに出会う

 しかし国連で働くために、どうすればいいのかわかりませんでした。迷った末、人文科学全般を学べる東京大学文科Ⅲ類に進むことを決心します。学校の友人から「国連職員には東大文Ⅲ出身者が多いらしい」という話を聞いたのも、理由の一つでした。  東大には進学できたものの、勉強を続けるうちに、国連に入って食料問題を解決することは想像以上に難しいと実感します。それは、大学1年生のときに参加した学外活動でバングラデシュに行ったことがきっかけでした。

 バングラデシュではお米がたくさんとれますが、栄養失調の人が多い。それは新鮮な野菜や肉、卵、牛乳、果物などがまったく足りないからです。国連は乾パンなどの食料を送っているものの、新鮮な肉や野菜を十分な量だけ支給するのは難しい状況でした。

 国連に入ったとしても、自分の夢がかなわないかもしれない。

 そのことに気づき始めた私はしばらくの間、進路に悩みました。何とか突破口を見つけようと、大学生を対象としたビジネスコンテストに参加したり、アメリカのスタンフォード大学で勉強するなど、チャレンジを続けました。また、食料問題を解決するためには農業や栄養素に関する専門知識が必要だと考がえ、農学部へ転部。

そこで待っていたのが運命的な出会い。

現在、当社の研究開発部門を率いる鈴木健吾が後輩として入ってきたのです。これほど将来に大きな影響を与える出会はなかったかもしれません。と言いうのも、当社の柱とも言えるミドリムシの可能性について教えてくれたのが、ほかならぬ彼だったのです。

クラブでの活躍の先に日本代表がある!

東京大学在学中にバングラデ シュを訪れる。途上国の食料 事情を目の当たりにしたこと が、起業のきっかけとなる。

 今年の6月から7月にかけてカナダで行われた女子ワールドカップもチーム一丸となって戦うことができました。決勝までのすべての試合が1点差と苦しい勝負が続きましたが、その過程でチームが一回りも二回りも成長したように感じます。残念ながら連覇は達成できませんでしたが、なでしこジャパンが持つ可能性を改めて世界に知らしめることができたのではないでしょうか。

 来年の夏にはブラジルでオリンピックが開かれ、またしびれるような戦いが繰り広げられることでしょう。その大舞台に立ちたいという気持ちは、もちろん持っています。しかし代表チームは選ばれて入るものであり、選考結果を自分でコントロールすることなどできません。それよりもまず大切なのは今所属するクラブチームで勝利に貢献し、結果を残し続けること。その先に日本代表があります。

 アスリートの中には「次の大会で必ず優勝する」「今年は全試合に出場し、○点以上とる」といった明確な目標を立てて、練習に取り組む人がいます。でも、私はそういう目標を立てたことがほとんどありません。それよりも、一日一日を大切にすることを強く意識しています。明日も今日と同じようにプレーできる保証はどこにもないし、選手生活にはいつか終わりが来る。そうなったときに後悔しないためにも、日々の練習を、一つひとつのプレーを大切にしようと心に刻んでいます。

そして、もう一つ目指しているのが、サッカーの楽しさをより多くの人に知ってもらうことです。2011年のワールドカップ優勝で以前より女子サッカー人気が高まっているとは言え、男子に比べるとまだまだ。今の人気を一時のブームで終わらせないためにも小学校や幼稚園を訪問し、子どもと一緒にボールを蹴る活動を続けています。その中で一人でもサッカーのおもしろさに気づき、日本代表を目指ざすようになってくれたらうれしいです。

ミドリムシの可能性を世の中に広めたい

創業時のメンバー。右は研究開発を担当する鈴 木健吾氏、左は現在マーケティングを担当する 福本拓元氏。二人は取締役も務める。

わたしは農学部で、植物は植物固有の栄養素をつくり、動物は動物固有の栄養素をつくることを学びました。人間は、二つの栄養をバランスよく食たべないと栄養失調になってしまいますが、途上国の人々はそれが難しい。一つの食物で必要な栄養素を補えないだろうか。

 そんなことを考えていたとき、鈴木が言ったのです。「ミドリムシは植物と動物の間の生き物ですよ」と。

 藻の仲間でありながら動物と植物の両方の性質を持つミドリムシは、59種類もの栄養素をつくることができます。しかもミドリムシは培養槽で育てることができるため、砂漠や荒れた土とでも生産することが可能です。私はミドリムシを使った栄養価の高い食品をつくり、世界の食料う問題を解決しようと考えました。

 しかし、その計画はすぐに壁にぶつかります。ミドリムシの大量培養は、多くの研究者が試みても成功できないほど困難なミッションだったのです。

私は鈴木とともに研究を進めつつ、ビジネスを知るために銀行に入行。1年間働いた後に退職してユーグレナを設立しましたが、意を決して乗り込こんだ世界はどこまでも暗く、一向に光が見みえてきませんでした。2005年にミドリムシの屋外大量培養に成功したものの、ミドリムシが社会に役立つということが世間からなかなか理解されなかったのです。会社は何度も経営が危うくなりました。それでも「ミドリムシのすごさが伝わらないのは自分の努力が足りないからだ」と考がえ、多くの会社に足を運び、何度も説明を行いました。

地道な努力が次第に実を結び、支援者が少しずつ増加。会社の規模も大きくなり、さまざまな賞をもらうまでに成長しました。しかし、私たちのゴールはまだ遠くにあります。ミドリムシは食料問題を解決する食品としてだけでなく、バイオ燃料(植物などを原料とした再生可能な燃料)としての可能性も秘めています。現在は国内外の企業と協力しながら、バイオ燃料の開発にも挑んでいます。

夢中になれるものが見つかれば人生が変わる

2020年の東京オリンピック・パラリンピックが開催される頃には、ミドリムシを燃料にしたバスや航空機が実用化され、どこのお店でも栄養価の高いミドリムシ食品が買える。そんな社会を実現することが、当面の目標です。最終的には、栄養失調に苦しむ人ゼロにする。現在、飢餓に苦しむ人は世界で約10億人とも言われ、高いハードルですが、必ず乗り越えたいと思います。

私は、大学生のときからミドリムシで世界を救う夢を抱いてきましたが、それをあきらめずに努力を続けられたのは、ミドリムシについて考えることが好きだから。時間を忘れて没頭できるんです。

皆さんも、何日でも何年でも夢中になれるものを見つけて、そのことにひたすら打ち込こんでみてください。それがまだ見つかっていない人は、少しでも興味を持ったことに積極的に取り組んでみましょう。視野が広がり、将来の目標を見つけるきっかけが生まれると思います。
 私が中3のとき、世の中にインターネットが登場しまし た。父がエンジニアだったこともあって、コンピューター に興味を抱くようになりました。父がパソコンを買って くれたおかげで、さらに興味がアップし、簡単なプログ ラミングを独学で習得。駒場東邦ではパソコン研究会を 立ち上げ、仲間とともに活動しました。母は一度も「勉 強しなさい」と言わなかっただけでなく、私が起業する ために銀行を辞めてしまったときも、何も反対せず温か く見守ってくれました。そのことに今でも深く感謝して います。
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