右:『世界の辺境とハードボイルド室町時代』高野秀行、清水克行【著】/ 15年8月刊/集英社インターナショナル/ 1,600円+税
左:『藪医 ふらここ堂』朝井まかて【著】/ 15年8月刊/講談社/ 1,600円+税

歴史好きな小学生と話していて、大人である私よりも詳しく、驚いたことがあります。子どもに負けていられないと、あらためて興味を持ってみたら、おもしろそうな本がたくさん出ているじゃありませんか。たとえば『世界の辺境とハードボイルド室町時代』。ノンフィクション作家の高野秀行さんと歴史学者の清水克行さんの対談集です。

アフリカのソマリ人について取材している高野さんは、清水さんの著書を読み、現代ソマリランドと室町日本の共通点を発見します。身分を問わず誰もが強烈な自尊心を持ち、損害を受けたら復讐するのが当然と考え、自分の属する集団の受けた被害を自らの痛みとして共有するところなどが似ているのだそうです。二人はソマリランドと室町日本を比較しながら、話題をほかの時代や地域にも広げていきます。

〈僕が中世史を研究していて面白いなと思うのは、たくさんの人間が集まって、何もないところから社会を組み立てていく過程を、試験管の中をのぞくように見られることです〉という清水さんの言葉が印象に残りました。既の枠組みが崩れて、一から秩序を組み立てなければならないというのは、今の日本にも言えることではないでしょうか。また、生類憐れみの令を出した徳川綱吉に対する評価が昔とは違うという話など、最新の研究を踏まえたウンチクも楽しい。もっと歴史のことが知りたくなります。

昔の人はどんな風に暮らしていたのか。物語を通して学ぶのもいいでしょう。直木賞受賞作家・朝井まかてさんの最新作『藪医 ふらここ堂』は、江戸の小児科医を主人公にした時代小説です。子ども専門の診療所を開く天野三哲は大の面倒くさがり。重篤な患者には〈医者のやれることなんぞ高が知れている〉という逃げ口上を使います。近所の人は三哲を〈藪のふらここ堂〉と呼びますが、意外な方法で病に苦しむ子どもを助けるのです。やる気がないようで、一人ひとりの患者の様子をよく見ていて、人情に厚い三哲を好きにならずにはいられません。

子どもの死亡率が高く〈七歳までは神のうち〉と言われた時代。長屋暮らしの人はほとんどが共働きで、子育てに父親が関わることも多かったのだとか。当時の子育て事情がわかるだけではなく、現代と変わらない親子の問題も描かれていて、読後感は温かです。




『シフォン・リボン・シフォン』
近藤史恵【著】/ 15年8月刊/
朝日新聞出版/ 680円+税

乳がんの手術後、かなえは故郷 の町にランジェリーショップを 開いた。そこへ母の介護のため 就職をあきらめた30代女性な ど、悩みを抱えた客がやってく る。美しい下着と優しい言葉が、 疲れた心をほぐしてくれる。





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