右:『wonder』R・J・パラシオ【著】、中井はるの【訳】/ 15年7月刊/ほるぷ出版/ 1,500円+税
左:『スクラップ・アンド・ビルド』羽田圭介【著】/ 15年8月刊/文藝春秋/ 1,200円+税

私の子どもの頃の写真を見ると、もれなく首をかしげています。胸部と頭部をつなぐ筋肉が生まれつき短く、小学5年生のとき手術するまで顔をまっすぐにすることができなかったから。今思えばわずかな差異ですが、ほかの子と同じでないことが嫌でたまりませんでした。R・J・パラシオさんの『wonder』は年齢性別問わずみんなと違う自分に傷ついたことがある人、 みんなと違う誰かとの関係に戸惑ったことがある人に推薦したい小説です。

主人公のオーガストは「スター・ウォーズ」が大好きな男の子。顔に先天性の障がいがあり、幼い頃から人々にじろじろ見られたり、怖がられたりしてきました。〈あの子に現実とどうむきあうか学ばせるのが、わたしたちの役目でしょ〉という母の提案で、オーガストは10歳になって初めて学校に通うことになります。それからの1年間の出来事が、当人だけではなく周囲の人々の視点も交えつつ描かれるのです。同じクラスの子に病原菌のように扱われ、楽しみにしていたハロウィーンでも悲しい思いを味わいます。オーガストを取り巻くのは優しい世界とは言えません。けれど、持ち前のユーモアセンスと自分のことにはこだわらないカラッとした性格によって、彼の味方は少しずつ増えていきます。

すごくいいなと感じたのは、登場人物が同調圧力に従うよりも、自分が好きな人に正直でいられる行動を選ぶところです。最後のページにたどりついたとき、晴れ晴れとした気持ちになりました。児童書として出版されたにもかかわらず、大人の間で評判が広がり、NYタイムズのベストセラー第1位に輝いたというのも納得。

もう一冊は日本のベストセラー小説をご紹介します。羽田圭介さんの『スクラップ・アンド・ビルド』。又吉直樹さんの『火花』と同時に芥川賞を受賞した作品です。会社を辞めて無職になった28歳の健斗が、〈早う迎えにきてほしか〉が口癖の祖と過ごすうちにある計画を思いつく、という話。将来に閉塞感を覚える若者が、恵まれた境遇に見えるのに愚痴ばかりこぼしている老人に対して抱く負の感情が滑稽味のある筆致で描かれています。殺伐とした部分もありますが、祖父という身近な他の人生を想像してみることによって、健斗は最後に自分の人生を再構築できたのでしょう。




『明日死ぬかもしれない
自分、そしてあなたたち』

山田詠美【著】/ 15年8月刊/
幻冬舎/ 540円+税

落雷による長男の死をきっかけに崩壊する家族を描く長編小説。息子を失いアルコール依存症になってしまう母、残された子どもたちの苦しみ、何もできない父。一家が再起のためにあることをする場面がすばらしい。





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