右:『私の息子はサルだった』佐野洋子【著】/ 15年5月刊/新潮社/ 1,200円+税Amazonで購入
左:『長いお別れ』中島京子【著】/ 15年5月刊/文藝春秋/ 1,550円+税Amazonで購入

佐野洋子さんの『私の息子はサルだった』は、名作絵本『100万回生きたねこ』の著者が自らの子どもの成長を綴った本です。佐野さんの息子をモデルにしたケンをはじめ、子どもたちの姿がいきいきとしていて魅力的。中でも楽しいのは初恋のエピソードです。小学1年生のとき、ケンはタニバタさんという女の子を好きになったことがきっかけでウワヤ君と仲良くなります。恋のライバルなのに〈同じ人好きなんだから仲間じゃないか〉と言って一緒に遊び、タニバタさんが家に来てくれても〈ウッフォー、ウッフォー〉と二人で叫びながら走りまわるだけ。あまりにも可愛らしくて頬が緩みます。よっちゃんという男の子もタニバタさんが好きだということがわかり、3人は親友同盟を結成するのです。

   

中学生になっても3人の交流は続きますが、ある日、ウワヤ君のお父さんが亡くなります。お葬式のとき、長男として肩に力を入れてがんばっていたウワヤ君が、ケンとよっちゃんに会った途端、いつもの13歳の男の子に戻るシーンを読むと、友だちっていいなあと思わずにはいられません。微妙な年頃の男の子を見守る母親の眼差しに、おおらかで深い愛情を感じます。佐野さんの息子、広瀬弦さんによる「あとがきのかわり」という文章も素敵。

    

 おおらかで深い愛情に満ちた家族の物語と言えば、中島京子さんの『長いお別れ』もおすすめです。認知症の父と家族の10年間を描いた連作短編集。国語教師の東昇平は、妻の曜子と二人暮らし。3人の娘はそれぞれ家庭や仕事を持ち、実家にはほとんど帰りません。毎年参加していた同窓会の場所がわからなくなった昇平は、アルツハイマー型認知症と診断されます。シリアスな問題をリアルに描いていますが、文章はユーモラス。たとえば、昇平の消えた入れ歯の謎を名探偵に憧れる孫が解く「入れ歯をめぐる冒険」は思わず声を出して笑ってしまいました。壊れてしまった父の言葉が傷ついた娘を救う「つながらないものたち」のような目頭が熱くなる話もあります。

    

認知症は人間の記憶と尊厳を奪い、誰がどこまで世話をするのかという過酷な選択も強いてくる病ですが、『長いお別れ』というタイトルの由来が明らかになる最終話にたどりついたとき、喪失の果てにあるのは絶望ばかりじゃないと思えるでしょう。




『女房逃ゲレバ猫マデモ』
喜多條忠【著】/ 15年5月刊/
角川春樹事務所/ 740円+税
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『神田川』『優しい悪魔』などで知 られる作詞家による家族小説。 シングルファーザーになった作 詞家が、家事と育児に奮闘しな がら自らの半生を振り返ってい く。主人公の息子が拾ってきた 猫のポン太も愛らしい。





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