染谷隆夫先生の研究テーマは、有機半導体という半導体を用いたセンサーをつくることです。

「ラップのように薄いプラスチックの膜の上に、有機半導体を電気回路状に貼りつけることで、人間の肌にも巻きつけられるようなセンサーを開発しました。 膜の厚みは1000分の1ミリで、髪の毛と比べると50分の1から100分の1くらいのスケールになります。 硬い板の上に電気回路を展開した場合、板が壊れると電気回路も壊れてしまいますが、この薄さになると、曲げても引っ張っても丸めても電気回路は壊れず、センサーとしての機能が失われません」

 

  最近では、人間の腕にセンサーを貼って、センサーが体温の変化を感知するとブザーが鳴る体温計をつくることに成功しています。

 

「私はもともとロボットの研究をしており、特に人間とロボットをもっと近づける方法に興味を持つようになりました。 くだけた言い方をすれば、温かみのあるロボットをつくりたいということです。 たとえば人間が握手をするとき、握手の力強さなどから、相手がどれだけ熱意を込めて手を握っているか、皮膚感覚でわかるでしょう。 しかしその皮膚感覚を、従来のロボットが理解することは不可能です。 そこで、〝握手の力強さ?を圧力や温度といった数値に置き換えて、人間の皮膚感覚がわかるロボットをつくろうと考えました。 その一歩が、このセンサーです」 

 

人間が緊張したり、動揺したり、喜んだりと、精神状態に変調をきたしたとき、体温や血圧なども変化します。

「たとえば、人間が緊張するということについて、〝心拍数がこれぐらい増えて、血圧や体温はこの程度になり、筋肉や心臓が発する電気信号はこう変わる?などと、さまざまな要素をセンサーで読み取って、緊張という状態をデータ化し、数字で表せるようになれば、人間の心の動きがわかるロボットができるはずです。 人間の精神状態を正確に数値化するのに、どれだけ多くの要素をセンサーで感知しなくてはいけないのか、といったことも研究課題になってくるでしょう」

ラップのように薄いセンサーには、人間が重さやストレスを感じることなく、ずっと装着することができるというメリットがあります。

 「これは一例ですが、肩こりを軽減する自動車のシートをつくるため、実験で肩こりに関するデータを取るとします。 ただ、被験者の肩や頭につけるセンサーの重さ自体が肩こりを助長し、正確なデータを測定できない、といったことが研究の世界ではよくありました。 しかし、この薄くて軽く、装着感のないセンサーなら重さもストレスもないので正確な実験ができます」

そのほか、さまざまな分野に応用できるセンサーである点も特長です。

「医療分野なら、服を着るように日常的に身につけて、脳梗塞や心筋梗塞などの病気を早期発見するセンサーの開発などが考えられます。 また、スポーツ選手が装着して、調子がいいときは体がどんな状態なのかを調べ、パフォーマンスの向上に役立てるといったこともできるでしょう。 形状を生かして、何に役立てられるか考えること自体が研究テーマと言えます」

ただ、半導体のセンサーは電気で動くため、電力をいかに送るかが課題。

「せっかくストレスなく装着できるセンサーなのに、電線をつないでしまっては、そのメリットも台無しです。 ですから無線で電力を供給するのですが、先に述べた体温計は、電灯の明かりで発電できる太陽光発電のようなシステムを用いています」

最後に、学生や読者の皆さんへ向けてメッセージをいただきました。

「他人から〝やめろ〞と言われても、やらずにはいられないほど好きでたまらない、夢中になれるものを見つけてほしいと思います。 特に研究の世界では、そうでなくては通用しないでしょう。 そして、夢中になれるものに周りを巻き込んで、大きく成長していってください。 これはメッセージというより、皆さんに〝そうあってほしい?という私の願望でもあります」



東京大学大学院
工学系研究科電気系工学専攻
染谷隆夫研究室

染谷 隆夫教授

春日井 昇平教授
東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。
東京大学生産技術研究所助手・講師、コロンビア大学客員研究員などを経て現職。

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