「病気や怪我で苦しむ人の生活を豊かにする技術を社会に広めたい」

玉城 絵美氏(工学博士)夢をかなえるために大事なこと3つ

大人向けの難しい本で知識を得た子ども時代

玉城絵美
1984年沖縄県生まれ。2011年東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。在学中に東京大学総長賞を受賞する。2012年にH2L株式会社を設立。人とコンピューターの相互作用を研究し、医療サービス、リハビリ支援、学習支援にかかわる事業を展開する。

出身は沖縄で、姉と弟がいます。絵を描いたり、工作をして遊ぶのが好きな子どもでした。小学生のときには賞をとったこともあります。絵か工作か忘れてしまいましたが(笑)

本を読むのも好きでしたね。子どもが読む児童書だけでは飽き足らず、親の本棚にある栄養学や生物学などの専門書を読んでいました。父が学者で、母が管理栄養士をしていたせいか、たくさんの専門書があったんです。内容が難しくて理解できないような本でも、とりあえず開いて眺めていました。今振り返ってみると、子どもの頃からさまざまな本に親しんでおいてよかったと実感しています。専門書を読んで頭に入れた知識が、今の生活に役立つこともありますから。

 中学校は地元の学校に進学し、テニス部に入りました。ところが、心臓に持病があることが判明し、激しい運動ができなくなってしまったんです。だから、テニス部のマネージャーになりました。

体を動かせない分、本を読むのがますます好きになり、一方で、中3からは高校受験のために塾へ通い始めます。これがきっかけで、勉強の本当の楽しさがわかるようになりました。英語だけ少し苦手でしたが、あとの教科はどれも大好き。わからなかったことがわかるようになるおもしろさを日々実感し、「もっと勉強したい!」と思うようになりました。

入院中に考えた装置を形にするために奮闘!

2011年、東京大学大学院で博士課程を修了。在学中に東京大学総長賞も受賞した。

高校は進学校に入りました。ただ、その頃から体調が悪化し、入退院を繰り返すようになって……。

高校3年間のうち6か月ほどは病院で過ごしたと思います。あるときには、お医者さんと父から「そんなに長くは生きられないだろう」と聞かされました。毎日毎日ベッドの上で過ごすうちに、「ここにいても外の世界に触れられるような装置があればいいな~」と考えるようになりました。

高校卒業後は、通院しながらも通えるように地元の琉球大学を選びました。それでも最初のうちはほとんど講義に出られない状態。大学1年の終わりには、心臓の手術を受けることになりました。病院の皆さんのおかげで手術は成功。術後の経過も良く、1年ほど経つうちに私はすっかり健康を取り戻し、大学での勉強に集中できるようになりました。

ものづくりが好きな私が選んだのは工学部です。 そして、大学へ毎日通えるようになったとき、真っ先に頭に浮かんだのは、病院で想像していた装置のこと。 あれをつくろうと思い立たち、研究に打ち込みました。 大学卒業が近づく頃ころには、さらに専門的な勉強をすることを決意します。 自分がつくりたい装置を実現させるための勉強ができそうな大学をいくつか選び、悩んだ末に筑波大学大学院の修士課程へ進みました。 筑波大ではロボットを遠隔操作する研究に取り組みました。

 その後、さらに本格的な勉強をするために選んだのが東京大学大学院です。 ここでようやく、自分の頭の中で思い描いていた装置を形にしていく研究をスタートさせます。東大では、高度な専門知識だけではなく、私の思いを実現するのに大切なものを得ました。それは、同じ夢を追いかける仲間です。それとほぼ同時に会社をつくることも考え始めました。 それまでは起業なんて想像もしていなかったのですが、夢を実現するには会社が必要だとわかったんです。 大学の研究者は研究や調査を行ない、その成果を論文にまとめて伝えるというのが主な役割です。しかし、「こんなすごいものを考えた」と言いうだけでは、「すごいもの」に形を与えることはできません。 実際にさまざまな部品を組み合わせて試作品をつくり、それをテストし、すごい効果を確実に出せるレベルまで進歩させる。 しかも、それが製品として売れることにより、初めて大勢の人の役に立ちます。 実際に、すごいものをつくって世の中に広めていくのは研究者ではなく、メーカーと呼ばれる企業の役割です。 私が頭の中でイメージしていた装置は、実際の形になって病気や怪我で苦しむ人たちの生活を変えないと意味がありません。 だから、私は迷わず起業を決めました。

夢の実現のために技術を進化させたい

玉城氏が仲間と開発した
「PossessedHand」。腕に巻いた2枚のベルトから前腕の筋肉に電気的刺激を与え、手指の動きを制御する。

私の会社でつくっているのは、人の手をロボットハンドのように変えられる装置です。これを腕につけて電気的刺激を腕の筋肉に与えると、手や指の動きをコントロールすることができます。この装置を使えば、琴やピアノなど指を使う楽器をまったく弾けない人でも、コンピューターからの指示をもとにした電気信号で指を操って動かせるため、上手に演奏することができます。

私は、この技術をもっと進化させたいと思っています。ベッドから起き上がれない人が 、海辺の砂をつかんだときの感覚を手から得て、まるで海にいるかのような気分を味わえる。そんな装置を実現させることが夢です。

 その夢を一日でも早くかなえるために、私たちがつくった製品をいろいろな分野の研究者に使ってもらっています。たとえば脳科学の研究者は、脳疾患により手が動かなくなった人の手を動かすための実験に使っています。さまざまな分野の専門家に使ってもらうことで、うちの会社だけでは実現できない進化の道を、この技術に与えられるのです。今後は、工業製品などの開発を行なう人たちにも活用してもらいたいと考えています。

協調性と独創性 その両方を大切に

小学校低学年の頃の写真。体を動かすことが好きで、絵を描いたり、工作をすることにも熱中した。

将来の夢や目標について、皆さんに伝えたいことが二つあります。 一つ目は、大人に夢や目標を左右されないでほしいということ。たとえば、子どもが「お金持ちになりたい」「有名になりたい」と言うと、「子どもがそんな夢を持つのは良くない」と意見する人がいます。しかし私は、人に迷惑をかけるようなものでない限り、夢や目標は制限されるべきではないと思います。お金持ちになるために一生懸命努力する。有名になるために自分の特技を徹底的に磨く。そんな生き方も立派ではないでしょうか。

もう一つは、人と同じでいる、人と違うことをする、この二つを両立させることです。つまり、協調性と独創性を持ち合わせる。それができてこそ、夢の実現に近づきます。子どものうちは、学校で集団行動をすることが多いでしょう。その中で周りと違うことばかりしていると、「自分勝手で協調性がない」と叱られます。それも一理あります。社会生活を送る上で、協調性を身につけることは大事です。一方、学校を卒業して社会に出ると、今度は「人と違ったことをしてください」と独創性を求められる場面が多くなります。人と違うことをして成果を上げると周りから評価され、喜んでくれる人も増えていきます。

 協調性と独創性。この相反する二つをうまく使い分けられるようになると将来の可能の性が広がります。今はどちらを発揮すべきか、いつも意識しながら毎日を送ってみてください。

 まず、本をたくさん与えてくれたことに感謝しています。自分たちが読む難しい本を私の手の届くところに置き、自由に読ませてくれました。おかげで、さまざまな世界へ興味を持つことができたと思います。美術館や博物館、旅行によく連れて行ってくれたことも、見聞を広めるのに役立ちました。食事のマナーを教える際も、実際にレストランで食事をしながらといった具合で、体験を通じて知識を身につけさせようとしてくれていました。
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