右:『長くなるのでまたにする。』宮沢章夫【著】/ 15年3月刊/幻冬舎/ 1,600円+税Amazonで購入
左:『二度寝とは、遠くにありて想うもの』津村記久子【著】/ 15年4月刊/講談社/ 1,500円+税Amazonで購入

親も子もあわただしい春の疲労がたまってくる時期。ちょっとした空き時間に読めて、頭を柔らかくほぐしてくれる本を読んでみませんか?

   

まず、芥川賞作家・津村記久子さんが日常を綴った『二度寝とは、遠くにありて想うもの』。有名人のエッセイ集は素敵過ぎたり、逆に自虐的過ぎたりで、肩が凝るものもありますが、津村さんの文章は全く押しつけがましくありません。布団への敬愛から、スポーツ観戦のおもしろさ、亡くなった父にまつわる思い出まで、飾り気のない普段着の言葉で語っています。

    

たとえば「無意味な日の贅沢」。大阪に住む津村さんは、展覧会の取材のため京都に行きます。ところが、お目当ての博物館は休館日。がっかりしながら帰りの特急に乗りますが、〈ずっと昔によく見ていた線路際の民家や道路などを眺めているうちに、妙にひらたい、足が地上から浮かび上がるような気持ち〉になるのです。無駄な時間を費やしたという自己嫌悪が〈休んだという実感〉に変わる瞬間が鮮やか。パワハラ体験をもとにいじめをする人について考察した「幸せになれないということ」、家にいるのに家に帰りたいと思ってしまう自分について掘り下げた「リラックスとサイクル」も秀逸です。小さなことにくよくよしながらも、身近にあるものをできるだけ楽しんで、自足しようとする。津村さんの暮らし方を真似したくなります。

    

もう1冊のおすすめは宮沢章夫さんの『長くなるのでまたにする。』。宮沢さんは演劇界の芥川賞とも言われる岸田國士戯曲賞の選考委員を務める劇作家・演出家で、小説家でもあります。本書でなんといっても目を引くのは構成でしょう。3つのバラバラな文章を組み合わせて一つの「ルート」にしてあるのです。「ルート1」は新宿の職 安通りを歩いたときの話と、フェイスブックが恐ろしいという話、小田急線の豪徳寺のラーメン屋で飲んだ水道水の話を一つに束ねています。ルートという言葉のイメージとはかけ離れた無軌道な感じが新鮮。

「鉛筆削り」のすばらしさを讃えたり、新しい「スイカ割り」の技法を提案したり、日本で一番おいしい立ち食いそばを決めたり。どうでもいいような内容なのに言葉の並べ方が絶妙で、何事もこうあるべきという固定観念から解放してくれます。




『風と共に去りぬ 第1巻』
マーガレット・ミッチェル【著】、 鴻巣友季子【訳】/ 15年3月刊/
新潮社/ 710円+税
Amazonで購入

ヴィヴィアン・リー主演の映画でも知られる名作。アメリカ南部の大農園に生まれたスカーレット・オハラの波瀾万丈な人生を描く。鴻巣友季子さんが新たに翻訳を手がけた文章は華麗。読みだしたら止まりません。





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