右:『恋するソマリア』高野秀行【著】/ 15年1月刊/集英社/ 1,600円+税Amazonで購入
左:『神さまたちの遊ぶ庭』宮下奈都【著】/ 15年1月刊/光文社/ 1,500円+税Amazonで購入

もし親子でスーパーマーケットもない僻地に引っ越すことになったら?

『神さまたちの遊ぶ庭』は、北海道の大雪山国立公園の中にあるトムラウシという小さな集落に移住したときの体験を綴った本です。著者は『スコーレNo.4』や『田舎の紳士服店のモデルの妻』など、登場人物の感情の揺らぎを優しく透明感のある文章で描きだす作家の宮下奈都さん。トムラウシで暮らしたいという夫の言葉に、宮下さんは〈ありえない〉と思います。北の大自然は遊びに行くならいいけれど、生活するには不便過ぎるところだからです。ところが、3人の子どもたちは夫の意見に大賛成。長男が中学校を卒業するまでの1年間、宮下家は山村留学をすることになります。

住宅ローンはまだ残っているし、夫の仕事が決まっていないという不安もあるけれど、行くからには楽しもうという宮下さんの前向きな姿勢がまずすばらしい。トムラウシの風景の美しさも目の前にあるかのように思い浮かびます。特に〈天空に覆いかぶさるような紅葉の道〉は見たくなるでしょう。子どもたちも生き生きとしていて魅力的です。マイペースで飄々としている長男、エッセイに書くときの仮名を〈漆黒の翼〉にしてくれと言う次男、ワンさぶ子という犬を空想の中で飼っている娘……。彼らの何気ない言葉に笑ったり、ハッとさせられたり。無口で人づきあいが苦手だった夫に訪れた変化にも感動せずにはいられません。

高野秀行さんの『恋するソマリア』は、現代における数少ない秘境となっているアフリカ、ソマリ世界の素顔に迫るノンフィクション。ソマリ世界とはかつてのソマリアのことで、独裁政権が倒れてから20年以上無政府状態にあった地域です。ソマリ人は誇り高い反面、冷徹なリアリスト。親しくなれたと思っても、取材で来た外国人のことなどすぐ忘れてしまいます。高野さんは彼らに忘れられたくない一心でソマリ語を学び、お土産を持って現地に飛びますが……。あまりにもつれないソマリ人の反応にふきだしてしまいました。日本人の常識は一切通用しません。考え方がまったく違うからこそ、気持ちが通じたときの喜びはひとしおなのです。普通の旅行者は絶対に見ることができない一般家庭の台所に潜入するくだりも楽しい。戦場の話もありますが、読後感は爽快な一冊です。




『桜の首飾り』
千早茜【著】/ 15年1月刊/
実業之日本社/ 593円+税
Amazonで購入

娘をほめられることが生き甲斐の母の束縛に苦しむ緋奈は、花屋のお姉さんと親しくなる。かつて父と見た白い桜のようなお姉さんに緋奈は憧れるが……。少女の成長を描いた「初花」など、桜をテーマにした短編集。





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