第8回
脳に悪い習慣って?

コツコツやることが実は脳にマイナス⁉

日常生活で、何気なく行っていること……、その中に「脳に悪い習慣」があるとしたらどうでしょう?たとえば、苦手な科目があるとします。そこに「嫌いだ」というレッテルが貼られている場合、脳はその後の過程である、理解、思考、記憶がそれに引っ張られ、機能が上手く働きません。

逆に、好きな科目だと脳はどのように働くのでしょうか。プラスのレッテルが貼られた情報は、第6回でもお話しした、自己報酬神経群の働きなどで、より強くインプットされ、理解、思考、記憶という過程をしっかりと通過します。これにより脳の力が上手く引き出され、効率が上がるのです。つまり、何かを「嫌いだ」と思いこんでしまうことは、脳にとって悪い習慣のひとつなのです。また、気の持ち方によって、脳のパフォーマンスは大きく変わってくることも付け加えておきます。

このような脳に悪い習慣……、それを考え、止めるだけで、脳を上手く使えるようになります。脳に悪い習慣とその止め方を、具体的に考えていきましょう。

まず挙げられる悪い習慣は、「コツコツやること」。意外な気がするかもしれませんが、もちろんこれには理由があります。

一般的に「コツコツやる」ということは、褒められこそすれ否定されることはあまりありません。この考え方は、ある意味では「失敗しないように慎重に進めよう」という思いがあり、そしてそこに自己保存をしたがる脳の癖が隠れています。「コツコツやろう」という考えは「失敗したらどうしよう」という思いと表裏一体というわけです。ゆっくりと物事を進める場合、どうしても集中力は落ちてしまい、完成が近づくと、気が緩んできます。「コツコツやっている」という意識を捨て、全力で一気に駆け上がること。このスタンスを持って勉強などに取り組めば、脳は持てる才能を最大限に発揮できるようになります。

ここぞというときこそ適度な緊張が必要

次に考えたいのが、「ここぞというときには、リラックスすること」。これも悪い習慣と言えます。 中学入試という大舞台に臨む際、一般的には、「リラックスして、持てる力を全部出してきなさい」と我が子を送り出すというのは自然なようにも見えますが、実は誤りです。

もちろん極度の緊張で手や足が震え、頭が真っ白になって力が発揮できない、ということはあります。だからと言って、リラックスしてしまってはだめなのです。

リラックスというのは休息状態のこと。しかしこれから何かを控えているときに脳を休めておくわけにはいきません。

緊張感は、身体の調子を上げる働きを持っています。気持ちが高まると交感神経が刺激され、心臓や呼吸器が活発に働き、脳にも十分な酸素を送り込む仕組みになっています。つまり心地よい緊張感の中で入試に臨むことが、脳の力をもっとも引き出す方法なのです。

ちなみに、もし過度の緊張をしてしまう場合は、息をゆっくり長く吐き出すことで副交感神経の働きが高まり、やや緊張をおさえることができます。

ぶっちぎりを目指すよう言葉で導けば能力アップ

「がんばって」という言葉は、親ならつい口にする言葉です。一見、励ましの言葉に思えますが、親が子どもを尊敬する気持ちがない場合、単なる自我の先取りの言葉になるので「今でもがんばっているのに」という気持ちになり、モチベーションが下がります。

また、第6回でもお話ししましたが、この言葉でいくら親がわが子を奮い立たそうとしても、残念ながら自己報酬神経群は働かず、脳は反応しません。 それは、自主性が伴わないからです。自主性こそが、脳のポテンシャルを引き出します。

普段から挑むべき目標を意識させ、そこへ一気に駆け上がる達成の仕方に焦点を当て、「ぶっちぎりの合格に挑戦しよう」と声をかける。受験当日なら「あなたならいつも通りの力で十分」と背中を押してあげる。みなさんが、そんな接し方をすることで、子どもは高いパフォーマンスを発揮できるゾーンに入る環境の統一・一貫性が確保され、脳の集中力は一気に上がり最高の結果につながるでしょう。

林 成之
1939年富山県生まれ。日本大学医学部卒。マイアミ大学の脳神経外科などに留学し、93年に日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター部長に。2006年に日本大学の教授へ就任。 脳低温療法など世界的な発見で知られる脳科学の第一人者。 著書に『勝負脳の鍛え方』(講談社)などがある。
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